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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年03月05日

五反田団『ふたりいる景色』03/03-13こまばアゴラ劇場

 前田司郎さんが作・演出される五反田団。前田さんは2年連続で岸田國士戯曲賞の最終選考に残っています。小説も書かれていますね。有名になってもチケット代は1500円。小劇場演劇界における、ひとつの基準になり得るのではないでしょうか。
 今作は率直に笑える箇所かなり多く、そして私は『キャベツの類』に続いて涙ボロボロ~っ・・・。1500円でこんなに面白いお芝居が観られるなんて感動的です。一般のお客様はもちろん、演劇をやっている人にもぜひご覧いただきたいですね。

 レビュー⇒休むに似たり。

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 ≪あらすじ≫
 万年床のこきたない部屋。撮り終わったフィルムが散在している。何もしない男(金替康博)と、一緒に住んでいる女(後藤飛鳥)。男はゴマしか食べない。いずれは自分のおしっこのみに切り替えて、即身仏(そくしんぶつ)になると言う。
 ≪ここまで≫

 幕開けすぐの「ゴマ食べてると、体がきれいになっていく気がするよね」というセリフで、めちゃくちゃ笑ってしまいました。だって金替康博さんのあの笑顔!見たことないよ!MONOや青年団公演等での金替さんと違うんです。そういえば五反田団常連の黒田大輔さん(THE SHAMPOO HAT)に似てるかな。

 布団の上から全く動こうとしない男と彼の面倒をみている女が、だらだらドロドロとしてる部屋に、女の友人(望月志津子)が訪ねてきます。始めの方のシーンでは設定および登場人物の紹介をしつつ、すっとぼけた笑いがいっぱいでした。単純にすごく楽しめました。そして4人目の登場人物が・・・(笑)。ネタバレするので後ほど。

 優しいけれど臆病で、そして欲深な人間は、
 「そばに居たいけど、そばに居たからといって常に満たされるわけじゃない。つながりたいけど、つながったままではいられない。だったら、いっそのこと一人でいる方がいいんじゃない?だって二人で居ることが、もしかすると相手にとっては迷惑かもしれないし、相手は他の人と一緒にいた方が幸せかもしれないんだから・・・。」
 ・・・という風に考えがちです。私もそんな状態に陥るタイプかも・・・(恥ずかしい)。でもこのお芝居の後半で、
 「ふたりが一緒に居る、その状態だけで、すでに幸せじゃないか」
 と、にっこり笑いかけられたように感じて、私はそんな簡単なことに再び気づかされ、涙を流しました。一緒に居られれば、楽しい時ににっこり笑い合えれば、それだけで幸せです。

 ネタバレします。

 女2人が退場して男が1人で部屋にいる時に出てきたのは、傘を持ってしゃなりしゃなりと歩く、着物姿のゴマの精(立蔵葉子)でした。「ゴマを大切にしているから」と言ってやってきたゴマの精の自己紹介に爆笑しました。「ゴマの方から来た、ゴマの精です」・・・「ゴマの方から」て(笑)。

 「即身仏になる」と言って部屋から一歩も出ず、ゴマだけを食べて、しまいには自分のおしっこを飲むだけに移行しようとしている男に、恋人の女は「自殺まがいのことはやめて」「あなたが死んだら私はどうなるの?」と言って、止めようとします。でも男は全く聞く耳を持っていません。堪忍袋の緒が切れた女は、とうとう荷造りをして部屋から出て行こうとするのですが、男は引き止めようともしません。女は「なんで引き止めないのよっ!!」と激怒して、いわゆる男女の痴話げんかが始まるのですが、それがとても可愛らしく、ちゃんとコメディーとして笑える構造になっています。私は金替さんと後藤さんとのキュートなケンカを微笑ましく眺めながら、男と女の間にある越えられない壁、底が見えないほど深い溝を見せ付けられているような心持ちになり、胸が痛みました。

 とうとうひとりぼっちになってしまった男のところには、ゴマの精がやってきます。しかしゴマを食べなくなっておしっこを飲むだけの生活になってからは、ゴマの精もめったに来なくなります。そして男は感じるのです。「寂しい」と。

 過去なのか未来なのか、それとも男が死ぬ間際に見た夢なのか、男と女が一緒に温泉旅行に行くシーンになります。相合傘をして二人一緒に空を飛ぶことを空想するシーンは、まさに『ふたりいる景色』でした。たあいもない話をして、二人が笑いあっています。なんて幸せなんだ、これが幸せなんだな。

 旅館の夜。二人は布団に入って話をします。下記、かろうじて覚えているセリフです(正確ではありません)。もぞもぞと、何度も同じ言葉を繰り返しながら、とても素直な気持ちで二人が語り合っていました。こんな対話がしたい、と心から思いました。

 女「私はあなたで私を埋めようとしているのに、あなたはあなたで自分を埋めようとしている」

 男「ちょっと、どうしていいのか、わかんないんだよ」
  「(そばにいても)役に立っているのかわかんないし、必要なのかもわからない」
  「火星みたいなところで一人になりたい」
  「でも寂しいんだよ」
  「寂しいっていう理由だけで、空洞を埋めるために、そばにいていいってこと?」

 女「ただ、そばにいればいいんだよ」

出演=金替康博(MONO)/後藤飛鳥(五反田団)/立蔵葉子(青年団)/望月志津子(五反田団)
作・演出=前田司郎 照明=前田司郎 照明アドバイザー=岩城保 宣伝美術=藤原未央子 制作=榎戸源胤/吉田悠軌/塩田友克
16ステージ 予約・当日ともに1500円 2006年2月3日(金)予約開始
公式=http://www.uranus.dti.ne.jp/~gotannda/

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Posted by shinobu at 2006年03月05日 23:25 | TrackBack (0)