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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年04月06日

風琴工房『砂漠の音階』04/05-12ザ・スズナリ

 ネット上に観劇レビューが上がっているので(→休むに似たり。藤田一樹の観劇レポート)急いで予約をしたら、なんと初日でした。あれ?なぜ??・・・と思ったら、そういえば稽古場での通し稽古を公開されていたんですね!すごいなーっ。新しい試みですよね。
 なんだか時差ボケな私でしたが(苦笑)、初日に拝見して良かったです。だってきれいなセリフがいっぱい・・・♪ 清らかな、温かい心で劇場が飽和状態でした。戯曲(1000円)が販売されていたので、すかさず購入いたしました。

 北海道新聞に掲載されています(2006/04/07追加)。

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 レビューをアップいたしました(2006/04/07)

 雪氷学者、中谷宇吉郎さんのお話なのですが全然難しくないです。あぁ、私の解説なんて必要ないんですよ、公式サイトがめちゃくちゃ充実してますから!企画書、取材旅行、作・演出家&出演者へのインタビュー、そして公開稽古場リポート等、痒いところに手が届く情報満載の特集ページをとくとご覧ください。そして、BACK STAGEのレポート・インタビューもいつもながら素晴らしいです。
 ※平日マチネ(6日/11日14時)に昼ギャザあり!
  昼ギャザ=動員数によって最大1,200円(←今公演の場合)まで割引になるギャザリングシステム。

 1936年3月12日の1日間を描く1幕劇。上演時間は約1時間45分ですが、もっと短く感じましたね。
 少し八百屋舞台になったセピア色ムードの研究室。白く細い柱で部屋は形作られ、壁は黒幕になっていますので、全体的には少々暗い目の空間です。机やイス、小道具は非常にリアルにそろえてあり、出演者の衣装も時代をよく表しています。男優さんのスーツに帽子がステキ。
 
 研究室が舞台になった研究者のお話ですから、当然のことながら登場するのは研究者です。研究者役の方は皆さん、ちゃんと研究者に見えました。これってとても大切なことですよね。特に中谷教授役の杉山文雄さんは他の人物にいっぱい噂をされてから登場するのですが、上手の入り口からスタタっと入ってきた瞬間、「あ、中谷教授だ!」ってはっきりとわかりました。しかもそれがまぶしいくらいにかっこ良かったんです。「あぁ、彼こそがあの、皆が慕う中谷教授なんだな、さすがだな」と思いながら、憧れのまなざしで眺めてしまいました。

 BACK STAGEのインタビューで作・演出の詩森ろばさんが「私が本当に、中谷先生に恥ずかしいくらい夢中になってしまって、本当に素敵だと思って書いたので、その気持ちが伝わるものになればいいなって思いますね。」とおっしゃっています。めちゃくちゃ伝わってきましたよーっ。私も中谷教授にぞっこんになりそうです(本買ってないけどね・・・)。
 脚本の中から私が泣いちゃったセリフを一部ご紹介いたします。文章で読むとあまりにストレートで簡単で、ちょっと恥ずかしくなるぐらいな言葉に見えるかもしれません。でもね、これがね、役者さんの演技で魔法のように変わるんです!特に中谷教授(杉山文雄)は素晴らしいです。
 ※ネタバレしてます。これからご覧になる方はご注意ください。

 中谷「うつくしいほうが正解なんじゃないか?」
 山崎「は?」
 中谷「これはうつくしい、と思うところまで、やらないと意味がない。科学も芸術も。」

 中谷「たいせつなのは研究にどれほど心を注ぎ、知恵を巡らせ、愛したかということです。それはわたしのこころのなかにしかないものですから、誰にも見せることはできません。だからこそ、そこに曇りがあってはならない。そしてね・・・静子さん。」
 静子「はい。」
 中谷「雪の結晶がもし今日という日にできたとして、それはその瞬間から、ぼくのものでも誰のものでもない、科学のものです。」

 中谷「寺田先生がいつもおっしゃってました。『ほんとうにたいせつなのは役に立つことだよ』と。線香の火を絶やさず研究しつづけることも困難ですが、そちらの教えを守ることは、さらに難しい。」

 笑いもいっぱいありました。特に中谷教授の妻・静子(松岡洋子)の作ったおはぎをみんなで食べるシーンは、まるでお茶の間テレビドラマのような筋書きなのですが、それがばっちりハマるのです。ツンケンした山崎(増田理)が、あまりの美味しさにほっこりと笑顔をこぼしてしまうところなんて、可愛いくて可笑しくて仕方なかったな~。

 そして最後にはラブシーンまで用意されていました。助手の佐田くん(岩崎裕司)が秘書の津島さん(笹野鈴々音)を好きだったなんてね~、あぁん、胸キュン(笑)。しっかし煮え切らない奴なんだな、コレが!「あなた!なぜそこで抱きしめないのっ!?」ってイライラしましたね、私(笑)。研究者で、しかも昭和の男ですものね、シャイで奥手なんですよね、うむ。またそれをサラリとかわしつつ、余韻を残してあげる津島さんはツワモノ!

 役者さんでは中谷教授役の杉山文雄さん、中谷教授の旧友の山崎役の増田理さん、助手の佐田役の岩崎裕司さんがとても良かったです。他の役者さんも皆さん、役柄の個性をしっかり掴んでらっしゃって充分良かったですけどね。早口すぎて言葉が流れてしまったり、セリフを文節ごとに切ってしまっている(ように聞こえる)役者さんもいらっしゃいましたけど、それはまあ初日クオリティってことでしょう。4/12までのロングラン公演ですから、ぐんぐん良くなられると思います。

 なんだかノリノリ・ベタボメのレビューになっちゃってますが(苦笑)、気にかかったところもありました。舞台で誰かが会話している最中に、他の誰かが部屋に入ってくる(戻ってくる)時、「あぁ、きっとここで誰かが来るんだろうな」と先に予想がついてしまうことが多かったのは残念でした。また、照明が点くタイミングがフィットしていないように感じることもありました。照明については好みの問題なだけかもしれません。

出演=杉山文雄(グリング)/増田理(バズノーツ)/岩崎裕司/宮崎新之助/松岡洋子(風琴工房)/宮嶋美子(風琴工房)/笹野鈴々音(風琴工房)/浅倉洋介(風琴工房)※山ノ井史は急病のため降板。代役は宮崎新之助。
作・演出=詩森ろば 舞台美術=杉山至(突貫屋) 照明=森規幸(balance.inc DESIGN) 音響=青木タクヘイ(STAGE OFFICE) 舞台監督=松下清永 宣伝美術=岡田邦栄 票券管理=大木孝司 制作=森岡鞠子 企画・製作=ウィンディ・ハープ・オフィス
11ステージ 発売日= 前売3200円 当日3500円 平日マチネ(6日/11日14時)昼ギャザあり。大学生2200円(前売のみ 枚数限定 劇団のみ取扱)高校生以下1500円(前売のみ 枚数限定 劇団のみ取扱) 障害者券150円0(前売・当日共 劇団のみ取扱)
劇団=http://www.windyharp.org/
公式=http://www.windyharp.org/desert/

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Posted by shinobu at 2006年04月06日 11:39 | TrackBack (0)