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2006年04月06日

文学座アトリエの会『エスペラント~教師たちの修学旅行の夜~』03/25-04/09文学座アトリエ

 グリングの青木豪さんが文学座に書き下ろされた今作は、高校の修学旅行のお話で、登場人物の年齢層が10代から80代(?)に渡る群像劇です。文学座のレパートリーとしてぜひ末長く上演していっていただきたい、秀作でした。
 エスペラントとは1887年にポーランドの眼科医・ザメンホフ氏が創案された国際語です(日本エスペラント学会より)。

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 舞台は東北にある旅館。東京の私立高校の生徒たちが修学旅行でやって来ている。
 消灯時間が過ぎ、教師たちは生徒の見張りやら、明日のミーティングに出掛けるやらで廊下をウロウロしている。この高校の卒業生である数学教師・星(高橋克明)は、恩師・笹木(田村勝彦)の紹介で中途採用されて来たが、笹木の評判は教師たちの間であまり芳しくないようだ。
 その理由を探るうちに星は、笹木や他の教師との会話から、やがて自分自身の抱える問題と向き合う羽目になり・・・・・
 ≪ここまで≫

 さらりと流れる会話の一言一言が実は胸にグサっとくるほど露骨で、そして助平です(笑)。そのさじ加減が心地よくって笑えます。大人だな~。
 平日マチネだったせいもあると思いますが、客席の年齢層がすごく高かったです。私が泣けてきそうなセリフでドカっと笑いが起きたりして、ものすごく新鮮でした。

 日本人・・・老いも若きも絶望してますね(笑)。他人事じゃないので私も笑ってる場合じゃないんですけど、それが笑えてしまうんです。こんな脚本を書かれる青木さんは深い洞察力と優しさのある、そして世代を超えたユーモアのわかる劇作家だと思います。おおらかに笑ってらっしゃったご年配のお客様も、人生の先輩として頼り甲斐があるなぁと、不遜ながら思っちゃいました。

 演出が青木さんではないし、客層がグリングのそれとは明らかに違いますので、グリングっぽい雰囲気ではありません。全体的に少々平板すぎる感じで物足りないことは否めません。でも、老若男女問わず観られる群像劇としては大成功なのではないかと思います。

 高校生、若手教師、中堅教師、定年間近の教師、サラリーマン(添乗員)、旅館のベテラン女将、若女将、おそらく年金生活であろう老人という、幅広い年齢層の役者さんが必要な作品です。例えば「前回は高校生役だった○○さんが、次は中堅教師役で出演する」など、役者さんが年を重ねながら出演していく作品として、新劇の劇団のレパートリーにぴったりなのではないでしょうか。ぜひ何年か後にキャストを変更して再演していただきたいです。

 ここからネタバレします。

 タイトルの“エスペラント”は一体どういう落としどころになるんだろう・・・?と待っていたら、最後の最後に9.11とつながって、じーんと来ました。イラクでもないアメリカでもない、どこの国の言葉でもないエスペラント語を学んでみたいという、女子高生の幼いながらも真摯な気持ちに触れて、涙が出そうになりました。明るい未来など微塵も期待できない人々が集まる小さな旅館から、世界の平和を祈る心がほのかに見えた気がしました。

 いつもはちょっと怖い目の役が多い(という印象の)高橋克明さんが、37歳の煮え切らない教師役を情けなく演じてらっしゃって、とても良かったです。
 旅館の常連客のおじいさん役の飯沼慧さんはすっごくしっくりきてましたけど、他の少々お年を召した役者さんの演技は紋切り型なことが多く、違和感がありました。

≪文学座アトリエ、桜美林大学≫
出演=飯沼慧/田村勝彦/吉野正弘/高橋克明/横山祥二/椎原克知/松尾勝久/寺田路恵/太田志津香/佐古真弓/上田桃子/頼経明子
脚本=青木豪(グリング) 演出=坂口芳貞 美術=神田真 照明=古川幸夫 音響効果=望月勲 衣裳=中村洋一 舞台監督=寺田修 制作=伊藤正道 票券=最首志麻子
18ステージ 2月25日(土)発売 前売・電話予約4000円 当日4300円(全席指定・税込) ユースチケット(25歳以下)2500円(取り扱い文学座のみ)
公式=http://www.bungakuza.com/about_us/p2k6/2k06-esperanto.html

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Posted by shinobu at 2006年04月06日 17:51 | TrackBack (0)