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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年05月14日

ウラジオストク青年劇場『かもめ』05/12-14シアターX

 登場するのは2人の作家(トリゴーリン&トレープレフ)と2人の女優(アルカージナ&ニーナ)という、4人芝居の『かもめ』。私は『かもめ』、大好きなんですよね~。
 ロシア語上演で字幕もイヤホンガイドもない状態で、大泣きしました~・・・! 俳優がとにかく凄いし、演出も面白いです。『かもめ』のストーリーをよくご存知の方に超お薦め!!
 原題は『ほら、これがおまえの劇場だ(VOT TEBEI TEATR)』です。

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 レビューをアップしました(2005/05/15)。

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 舞台は湖のある避暑地。ソーリン家の中での出来事。女優アルカージナ(ガリーナ・コプィロワ)とその愛人、売れっ子作家のトリゴーリン(アレクサンドル・ヴォロシャンコ)がやってくる。 息子トレープレフ(アンドレイ・トロフィーモフ)は母を喜ばせるために芝居を見せようとするが、失敗。愛するニーナ(ポステルナック・ラリーサ)さえも作家にうばわれ、母の愛も自分が望むかたちでは得られない。 そして去っていく母と作家と少女・・・。二年後、トレープレフは作家となり、母、トリゴーリン、そして女優になったニーナと再会する。
 ≪ここまで≫

 公式サイトに「※本公演はロシア語による公演です。俳優の演技を直に感じて頂くために、あえて字幕、イヤホンガイドは使用いたしません。」と書かれているのを読んで、少しは躊躇しました。でもNHK芸術劇場で観たマールイ劇場『かもめ』のこともあるので、思い切って足を運んでみたら大正解!途中10分間の休憩を含む刺激的な1時間50分でした。

 セリフは一切わからないのですが、声を音として味わい、流れるような動き全体をひとつの人間として受け取ることに集中しました。人間の声も動きも瞬く間に次々と変化し続けて、それがシャワーのように私に降りかかってきます。意味を考えないで舞台を観ていると、そのシャワーの粒を味わえるんですね。
 また、私は自分が憶えている『かもめ』のストーリーと、舞台で生まれる感情とを頭の中で結びつける作業をしながら、舞台上の人物をつぶさに眺めていました。すると、その人物の感情が手に取るように、まるで言葉を話しているかのごとく鮮やかに伝わっくるのです。今までにない演劇体験をした気がします。

 舞台中央に直径2m弱ぐらいの丸い台があります(高さは20cmぐらい)。その台の真上の天井から丸い輪が吊られており、輪にはステージまで届く長さの白い布が何枚も掛けられています。布は滑車で輪とつながっていますので、カーテンのように左右を自在に動きます。形状としては天蓋付きベッドの丸い天蓋のようです。台とカーテンで劇中劇の舞台になったり、ベッドになったり、カラフルな照明でさまざまな印象を与えるオブジェにもなります。この装置の他に使われるのは2脚の白いイスと白い自転車ぐらい。ごくシンプルなステージです。

 トレープレフ(アンドレイ・トロフィーモフ)の存在感がすごくどっしりとしていて自然体でした。トレープレフであり、俳優のアンドレイ・トロフィーモフさんであり、そして茶色いパーマヘアのがっしりしたロシア人男性でもある人物が、目の前に居ました。何も話さないシーンでも一人ではっきりと存在していて、「ただそこに居る」という演技の偉大さを再確認しました。

 アルカージナ(ガリーナ・コプィロワ)とトリゴーリン(アレクサンドル・ヴォロシャンコ)は全体的にふわふわ浮いたような足取りで、動きも話し方も少し大げさ目にデフォルメされているように見えました。ただそのデフォルメが非常に効果的で、人物の性格・体質を細かく表現できているので、驚かされたり笑わせられたりしつつ、面白く拝見しました。全部計算で作っているんだろうと思うと、その技術レベルの高さにゾっとしますね。

 ニーナ(ポステルナック・ラリーサ)は若くて可愛いくて、無邪気で純粋なことだけが取り柄の大根役者として描かれていました。ヘアメイクもドレスお世辞にも美しいとはいえないダサさで、田舎者が都会のセレブに夢中になってもてあそばれるという流れがあからさまでした。それが黒装束の男装でトレープレフのもとに帰ってきた時は、すっかりスレて疲弊していて・・・最後のニーナの独白はそれまでとの違いが鮮明で、凄みがありました。

 私がぼろぼろ泣いてしまったシーンは2箇所。
 トレープレフがかもめを撃ち殺した後、トリゴーリンに夢中になってしまったニーナに向かって、あきらめと憤りの混じった感情でぶつかっていくシーンと、トレープレフがアルカージナに包帯を巻いてもらいながら、母親への無邪気な愛と子供ならではの甘え、そしてトリゴーリンへの嫉妬と怒りがごちゃまぜになってしまう親子喧嘩のシーンです。

 演出意図がはっきりとしていて、意外な解釈もありました。ニーナに心奪われたトリゴーリンを年増のアルカージナが取り戻す方法が、まさか色仕掛けの寝技とは(笑)。また、ニーナが大根役者だったという設定も大胆だなと思いました。
 アルカージナが『ロミオとジュリエット』の第四幕三場のジュリエットのセリフを演じるところも素晴らしかったですね。白いカーテンを体に巻きつけての大熱演でした。ジュリエットのセリフの最後の最後でちゃかした演技をして、熱演を昼下がりのお遊び(アルカージナはニーナに演技を披露していた)に戻すのも、プロの中のプロだな~と思いました。

 映画「ゴッドファーザー」の音楽(「愛のテーマ」だったかな)が何度か流れたと思うのですが、「ゴッドファーザー」というとあるイタリア人家族の悲劇物語で、家族同士の裏切りや親類殺しなどが頭に浮かびます。『かもめ』と意味を重ねているのかしら。そうだとしても選曲はちょっとメジャーすぎるんじゃないかと思いました。他にもとっても有名な曲があったんですが私にはわからず。

出演=トリゴーリン:アレクサンドル・ヴォロシャンコ(ロシア功労俳優)/アルカージナ:ガリーナ・コプィロワ(ロシア功労俳優)/ニーナ:ポステルナック・ラリーサ/トレープレフ:アンドレイ・トロフィーモフ ※ニーナ役の予定だったアンジェリカ・トロフィーモワは病気のため降板。
ロシア側スタッフ⇒作=A.P.チェーホフ 企画=ウラジオストク青年劇場 芸術監督=ビクトル・ガルキン 美術=ビクトル・シマトーク 照明=ドルィギン・ワレンチン 音響=メリニコフ・エブゲーニー ウラジオストク青年劇場来日公演実行委員会=中本信幸/平樹典子/高橋竜也/新田満/田代紀子 日本側スタッフ⇒舞台監督=山内榮治 舞台監督助手=山田武 照明=石田道彦 解説=清水柳一 チラシイラスト=Kaolly 通訳=パーベル・フョードロフ/松川直子/久保遥
前売:4,000円 当日:4,200円(全席自由)
公式=http://www.theaterx.jp/06/060512.shtml

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Posted by shinobu at 2006年05月14日 01:40 | TrackBack (0)