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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年06月02日

Oi-SCALE『キキチガイ』06/01-04シアタートラム

 林灰二さんが作・演出するOi-SCALEの初シアタートラム公演。私が講師として参加するPmP2006観劇スケジュールにも入っています。
 林さんがはじめて描くラブストーリーは、ある病院の屋上を舞台に4つのエピソードが絡まる群像劇でした。幻想やポエムの中に今の東京を生きる若者のリアルが浮かび、終演後にはOi-SCALE公演でいつも感じる、悲しいけれど優しい静けさが残りました。

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 レビューを最後までアップしました(2006/06/11)。

 劇場内に入ると星空が美しい屋上の風景が目に入りました。シアタートラムの高い天井だから実現できたんですね。

 いつもに増して今回は音楽が素晴らしかった!!音が鳴る度にドキっとさせられ、そして聞き惚れます。林さんは現役のDJでもあるので、その力が存分に発揮されたのでしょう。照明による場面転換もとても効果的でした。

 いつもはスライドで文字を映写しているのですが、今回はテレビやディスプレイを使った文字動画でした。ちょっと読みづらかったですが、やっぱり言葉が素敵です。

 初日だったからかもしれませんが、テクニカルな部分のおぼつかなさが気になりました(映像が始まるタイミングや、暗転中のドタバタ感など)。役者さんの一体感もまだまだでしたね。これから良くなってくれたらいいなと思います。

 ここからネタバレします。

 長男がガンで入院している3人兄弟、飛び降り自殺をした男女とその家族、看護士&入院患者の日常、屋上に閉じ込められた解体作業員グループという、4つの別々のエピソードが徐々につながっていきます。

 前作で登場したトカゲ頭のサラリーマンが今回も登場。頭が魚になったレイプ男も現れます。すれ違う人々やパっと一瞬だけ目が合った人が、人間に見えないことってありますよね。玄関の扉ののぞき穴の向こうは水の底なのだと想像する繊細な感受性が、この作品の全ての源になっている気がします。演劇だから、林灰ニさんだから生み出すことに出来る世界です。

 ガンで余命いくばくもない長男(多田明弘)と語り合い、次男(多門勝)は泣きます。私は末期ガンと診断された人の介護をしていたことがあり、病院を舞台にした死と向き合う人々のドラマがちょっぴり苦手なんです(思い入れが強すぎるので)。でもこの作品では、人間の生死や愛する人を失う悲しみといった、よく扱われる事柄はひとつの契機でしかなく、知り尽くしていたはずの肉親との本当の出会いを通じて、余計な常識や言い訳がましい社会性などから解き放たれた、全身全霊のコミュニケーションが描かれていました。不器用だけれど決して嘘がなく、そしてとても静かに。
 耳が聞こえない三男(星耕介)が一度だけはっきりと発する、たった一言の独白が胸に刺さりました。セリフは憶えていないのですが、たしか次男に対する真摯な気持ちが語られたはず。客席に向かって言うので、私への言葉のように思いました。

 瀧川英次さん。金髪の解体作業員役&蟻のサラリーマン役。舞台上で水を得た魚。やっぱり目立ちますよね~。何かと注目しちゃいました。
 仁志園泰博さん。長男の元教え子で小説家志望の男役。ポツドール公演去年のOi-SCALE公演での印象と全く違ったので、最初は仁志園さんだと全く気づきませんでした。キザなインテリめがね役もお似合いです。
 宮光真理子さん。屋上から街へと“飛び込んだ”少女役。『雪の女王』以来、ほぼ追っかけさせてもらっています。今回はちょっと物足りなかったかな。『雪の女王』再演はなんと世田谷パブリックシアター!必ず伺います。

出演=佐藤康恵/星耕介/清水慎太郎/トモヒカン/多門勝(THE SHAMPOO HAT)/多田明弘(FICTION) /瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ) /中野博文/仁志園泰博/宮光真理子/川崎賢一/高橋唯子/斎藤岳夫/並木大輔(ポかリン記憶舎)/トリイノブニャス/村川幸謙/中田寛美/桧山佐知子/河合咲/高原コマキ/大林小夏
作・演出=林灰二 舞台監督=上林英昭 美術=仁平祐也 照明=(株)ライトスタッフ 音響=田島誠治(サウンドギミック) 楽曲提供=MITSUU(村田充) 舞台監督=上林英昭 演出助手=中村太陽 小道具=中島香奈子 宣伝美術・WEB=清水慎太郎 映像=檜山佐知子(S Factory) 票券=ぷれいす 制作=高橋唯子・僕AREA←Spectators〔B.A.S.〕 企画・製作=Oi-SCALE
発売日=年4月20日(木) 前売3300円 当日3500円 全席指定
公式=http://www.oi-scale.com/oiweb/kikitiguy/kikitiguy_if.html

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Posted by shinobu at 2006年06月02日 15:47 | TrackBack (0)