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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年07月23日

三条会の『レミング~世界の涯てへ連れてって~』07/22-25千葉公園内 特設三条会劇場(野外公演)


 千葉県を中心に活動する三条会寺山修司作品を野外劇場で上演するということで、遠征が苦手な私も「これは見逃せない!」ってことで、初日にはせ参じました。

 お、お、おもしろかった・・・!涼しい風が緑の香りを運んでくれる広い公園で、地面が回転し、劇場ごと空に飛び上がったような気持ちになりました!

 残すは7/23、7/24、7/25の3ステージのみ、いずれも19:00開演です。上演時間は約60分。
 ※うちわとカッパが配布されます(カッパは終演後回収)。上演中は蚊取り線香がたかれていました。寺山修司版『レミング』DVDなどの物販もあり。

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公園入り口。中央に看板あり。

 うっそうと木が生え揃った道を通り抜けると、真っ赤な布にぐるりと丸くかこまれた劇場が現れました。その向こうには塔が建っていて「忠霊塔」と彫られています(千葉県の戦没者の霊を追悼する塔だそうです)。
 整理番号順に入場すると正面に舞台。白い布が丸く舞台を囲んでおり、劇場全体が円形なのだということがわかります。客席はひな壇になったベンチ席でした。雰囲気はサーカスのテントに似てるような。はやばやと客席がいい感じに埋まってきて、ムード抜群。初日はこうでなきゃね。
 
 舞台は中央に通路が通っており、ちょうど左右半分ずつに区切られています。下手に役者さんが板つき。上手には学校の机が並んでいます。

 いつもの三条会の役者さんらしい演技ではありましたが、やはり野外なので声が外に抜けるんですよね(セリフが聞こえないということはありませんでした)。全体的にソフトになって良かったような気もします。いや、強烈なのも好きなんですけどね(笑)。

 音楽はすべてオリジナルで、サントラCDが販売されていました。音楽の長さと演技のタイミングがすごく合ってるんですよね~。不思議な心地よさがあります。

 私は寺山修司さんの言葉が大好きなので詩集や短編集は持っていますが、『レミング』は観たことがないし、戯曲も読んでいません。それでも問題なく楽しめますよ。

 ここからネタバレします。

 ≪あらすじ、のようなもの≫
 下宿暮らしの見習いコック・橋口(橋口久男)が、隣りの四号室との間の壁がなくなっている事に気づく。四号室では兄(中村岳人)と妹(舟川晶子)が暮らしている。兄妹らの後方には黒装束の男(榊原毅)がいて、どうやら彼らをあやつっている様子。橋口の部屋の畳の下には母(鈴木史朗)が住んでおり、四畳半の田んぼを耕している。
 映画の撮影シーン。影子(大川潤子)は自分が大女優だと信じ込んでいる女を演じて生きており、それを売りにしてテレビのニュースに出たりする・・・という女を演じている。女は橋口にもある役を演じるように命令し・・・。
 下宿の中なのか外なのか、現実なのか夢なのか、すべての境目が曖昧になってくる。
 ≪ここまで≫

 橋口の部屋は上手で、下手が四号室です。でも下手から上手へと数人の役者さんが移動するので、橋口の部屋と四号室との境界がくずれます。
 そして橋口の部屋の畳の下に住んでいるはずの母が登場することで、地上と地下(畳の下)との境である地面がなくなります。
 屋根裏の散歩者(榊原毅・ぬいぐるみ&男の二役)が屋根裏(下手)から下宿の部屋(上手)を覗きます。つまり下手が天井で上手がその下の部屋になるのです(上手に置かれていた机はすべて横倒しにされており、ちゃんと天井から覗かれている状態になっています)。左と右だったものが上と下という関係に変わるわけで、ちょっとした脳内イリュージョンです。

 そこから映画撮影や遊戯療法(看護婦や白衣&水着男が登場)などのメタ構造が並列に現れて、劇中の夢と現実が交錯します。具体的には橋口が他の登場人物にどんどんと煙に巻かれていくのです。
 開演前の前説をした演出家の関さんが作品中に魔術師役として登場し、終盤では前説をした時の服装で舞台にひょこひょこと出てきます。普段着の関さんに向かって橋口が「お前は誰だ?」とか言うものだから、劇なのか劇じゃないのかの境界も越えます。

 劇場が丸い円状になっているので、お芝居の内容と観ている景色(劇場全体)とが一体になって、ぐるぐると上下、縦横に動いているように感じるんですよね。あれは凄かった~・・・「これは宇宙なの!?」と戦慄。
 私が最も興奮したのは、少女が赤い風船を「風だーっ!」と言って手放した瞬間。千葉の空へとゆっくり登っていく風船を見つめながら、ベンチに座ってお芝居を観ている私も一緒に空に浮かびました。

 誰かの夢に自分が出ていたり、自分の夢に誰かが出てきたり。自分の夢の中では自分の自由かと思いきや、そうもいかず。
 橋口「誰かにまるごと夢見られてしまったんだ!」
 ちゃんと言葉では説明できないのですが、入れ子構造とか同心円状に広がる世界とか、とにかく普段の生活では絶対に想像しないこと(図・絵など)を想像しました。

 先日観たお芝居でも出てきた“ダンヒル”がまた登場。ダンヒルってそんなに有名な高級ブランドだったのね?今だったらルイ・ヴィトンになるのかな。

出演=大川潤子/榊原毅/舟川晶子/立崎真紀子/橋口久男/中村岳人/伊藤紀子/鈴木史朗(友情出演)
作=寺山修司 構成・演出=関美能留 照明=佐野一敏 美術=入江哲 音楽=粟津裕介(発条ト) 宣伝美術=川向智紘 制作=久我晴子
6月3日(土)前売開始 前売券:一般3,000円 学生2,000円 当日券:一般3,500円 学生2,500円 入場整理番号付自由席(開場時、券面記載の番号順に入場)※学生券は入場時に学生証を提示。雨天決行。
三条会=http://homepage2.nifty.com/sanjokai/

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Posted by shinobu at 2006年07月23日 00:42 | TrackBack (1)