REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2006年07月23日

劇団印象『友霊(ゆうれい)』07/21-23タイニイアリス

 鈴木厚人さんが作・演出される劇団印象の第6回公演です。チラシがとっても可愛いんですよね~。新宿にはじめて進出して来てくださったので伺いました。
 う~ん、シチュエーション・コメディって、難しいんですよね・・・。

 ★お役にたてたらコチラをクリック!お願いします♪

 ≪あらすじ≫ 
 サラリーマンの宏介(加藤慎吾)は6年前のバイクの事故で、親友の金三(園芸家すみれ)を亡くしている。金三の姉・真由美(片方良子)と、その夫・おさむ(江花渉)が経営するレストラン・リバプールには、金三の彼女・葉子(篠原有加)と一緒に今でもちょくちょく顔を出している(っぽい)。
 ある日、葉子が、金三と一緒に使っていた大きな靴箱を、リバプールに宅急便で送りつけた。いきなり大きな荷物、それも弟のものが届いたので、真由美は激怒する。葉子は「いつまでも死んだ人が使っていたものを家に置いておきたくない」と言うのだが、本当の理由は違うようだ・・・。
 リバプールで新メニュー試食会が開かれ、真由美とおさむ、アルバイトの絵理(きたのあやこ)、そして宏介、葉子が勢ぞろいした。真由美と葉子の間にはよからぬムードが漂い、周りは2人をなだめるのに一苦労。そんな折、店のど真ん中に置かれた靴箱から、なんと金三の幽霊(園芸家すみれ)が現れた。でも金三の姿が見えるのは宏介だけらしい・・・。
 ≪ここまで≫

 完全なワン・シチュエーションではなく舞台上で数箇所に場面転換しましたが、作品全体としてはシチュエーション・コメディだったと思います。
 シチュエーション・コメディって・・・嘘だとわかっていながらも展開に文句なく納得できる緻密な脚本があって、それを余裕を持って心地よく実現できる役者さんの演技の技術があってはじめて、思う存分笑えるところまで行くんですよね。成立するまでに圧倒的な技術の高さが求められる手法です。三谷幸喜さんの作品を思い浮かべていただければわかると思います。
 その意味で成立はしていませんでしたし、役者さんの技術もまだまだでしたから、上演時間は90分だったのですが長く感じました。

 セリフについても「そういうことは本人の前では言わないよね~」とか「お膳立てのための言葉だな~」と思うことがありました。シチュエーション・コメディは難しいですよね、ほんとに。
 いつもシチュエーション・コメディばかりを上演されている劇団ではないそうですので、この作品だけを観て判断はできないかなと思います。

 ここからネタバレします。

 葉子には新しい彼氏ができていて、それがお笑い芸人の“アーメンカーメン”だった、しかも金三に瓜二つ!・・・というところから笑いが作られていきます。幽霊の金三とアーメンカーメンの二役を一人の役者さん(園芸家すみれ)が演じるので、二人がそっくりだということ、葉子はまだ金三の面影を追い続けている(?)ということが自動的に感じ取れます。

 アーメンカーメンは常にツタンカーメンの被り物をしている芸人です。妙な身振りをしながら「アーメンカーメン!」と言うだけの一発芸が可愛かった~。左斜め上を向いて静止する時のツタンカーメンの表情(表情なんて本当はないんだけど、すごく変わるんですよ!)がおマヌケさんなんです(笑)。あの仮面はばっちりでしたね~。

 真由美が金三の顔を見たら変貌してしまう(乱暴になってレストランを壊す)ため、周囲の人間は、アーメンカーメンが仮面を脱ぐのを必死で阻止します。そこから、アーメンカーメンが仮面を被ったままスープを飲むなどの奇行が生まれ、笑いが起こるのですが・・・なぜ真由美は金三の顔を見たら変貌するのでしょう?それほどに弟・金三のことを愛しているようには見えなかったし、むしろ葉子が金三にそっくりな人を新しい彼氏に選んだなら、喜ぶんじゃないかしら。
 生前の金三と真由美の関係が想像できなかったから、真由美が何を言っても唐突に感じてしまいました。

 宏介はアーメンカーメンの素顔を一目見た瞬間に「金三にそっくりだ!」とわかりますが、葉子は宏介に言われてから改めて気づいてショックを受けます。そして姉の真由美にいたっては「金三には似ていない」と答えるのです。これが面白い!観客は「え・・・?じゃあ金三って、いったいどんな顔なの?幽霊もアーメンカーメンも一人の役者が演じているけど、実はあれは“複数の別人格”を表しているの??」という、演劇的空想の中へと入っていけるのです。「おお!」とにわかに気持ちが盛り上がったのですが、残念ながらその契機は「俺のことなんて、みんな忘れかけているんだ!」という金三の落胆へと落ち着いてしまいました・・・もったいないな~と思いました。

 他に流れの中で腑に落ちなかったところを少し挙げると↓

 靴箱が靴箱に見えなかったです。人間が一人入れるような広い空間は、普通の靴箱にはないですよね。また、葉子が突然に靴箱を送りつけるにしても、なぜ真由美の家ではなく店に送ったのかしら。幽霊が入る場所を確保するために、無理やりにストーリーを作ったように感じます。

 レストランの試食会に集まった人たちの様子は、金三が死んで6年経っている状態には見えなかったです。年月が感じられないんですよね。難しいとは思いますが、お芝居の最も重要なところではないでしょうか。役者さんの意識の問題もあると思います。

 宏介が葉子のことを好きだったということが終盤になってわかりますが、そんな風には見えなかったですね。たとえば金三が生きていた頃の、金三、葉子、宏介の三角関係などの肉付けがあれば納得できたかもしれません。

出演=加藤慎吾/片方良子/きたのあやこ/篠原有加/江花渉(真空劇団)/園芸家すみれ(ポップンマッシュルームチキン野郎)
作・演出=鈴木厚人 美術チーム=坂口祐 照明=shamballa 音響=勝俣あや 宣伝美術=大野舞"denali" WEBデザイン=西川紘平 制作=まつながかよこ 制作助手=beatmaniacs 主催=劇団印象-indian elephant-
前売1800円・当日2200円(全席自由席)
公式=http://www.inzou.com/

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガ↓↓↓にも、ぜひご登録ください!

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2006年07月23日 23:29 | TrackBack (1)