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REVIEW

2006年08月02日

燐光群+グッドフェローズ プロデュース『組曲 二十世紀の孤独 第一楽章「蝶のやうな私の郷愁」』08/01-10 SPACE雑遊

 新宿に新しくできた劇場“SPACE雑遊(スペースざつゆう)”のこけら落とし公演で、燐光群がプロデュースする『組曲 二十世紀の孤独』の第一章です。同劇場での三作品連続公演で、「さすらい」(8/16-27)、「壊れた風景」(9/3-10)と続きます。

 脚本は松田正隆さんご自身による(?)改訂版の東京初演でした。私が以前に観た時とはかなり変わっています。設定は同じですが、ストーリーも意味も全然違うんじゃないかしら。

 客席はひな壇のベンチシートで最前列は桟敷席ですので、お早目のご来場をお薦めします。上演時間は約1時間です。

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 ≪あらすじ≫ 少々ネタバレします。でも読んでから観ても問題ない程度だと思います。
 若い夫婦が暮らす小さなアパート。勤めから帰ってきた夫(坂手洋二)と妻(占部房子)が質素な夕食をともにする。外は大雨。どうやら台風が来ているらしい。食事の真っ最中にいきなりの停電。ろうそくを探している時、妻が見つけたものは・・・。
 ≪ここまで≫

 予想していたよりも明るい二人芝居でした。照明や効果音の使い方がとても繊細で良かったです。仕掛けにも・・・び、び、びっくり(笑)。 

 八畳の居間には古い箪笥が二竿。ラジオはあるけれどテレビはありません。小さな食卓に上るのはコロッケと千切りキャベツ、白いご飯とお味噌汁、おから、大豆の煮物、梅干し。夫婦二人っきりの生活感溢れるアパートで、たわいのない日常会話が交わされます。仲がいいのか悪いのかよくわからない言い合いが続きましたね。ほとんどけんか腰だったり、じゃれあったり。ちょっとかみ合っていないように感じましたが、それもまた味わいだと言える坂手&占部カップルでした。

 停電になってから少しずつ落ち着いた会話が生まれてきて、お互いの心に秘めていた不安や小さな望みなどが、情感のこもったセリフとともにこぼれ出てきます。妻(占部房子)が夫に海の話をした時、せつない気持ちがするすると私の中に入ってきて、涙が流れました。

 ここからネタバレします。

 ろうそくを探していて見つけてしまったのは、大きな貝殻でした。それは昔、夫が妻の姉にプレゼントしたもので、姉はふみきり事故で既に死んでいます。夫はそもそも姉と付き合っていて、今の妻、つまり妹とは二股をかけた状態から関係が始まっていたのです。
 貝殻の登場をきっかけに、夫婦の過去が少しずつ明かされていきます。言葉で細かく説明をしてくれるわけではないので、セリフの端々から得られるヒントをつなぎ合わせて想像しました。↓下記、私が受け取った内容です。セリフは正確ではありません。

 妻「海面に光る炎にお祈りをすると願いが叶う。それも、自分では気づいていない本当の願いが。だからあなた(夫)は海に行ってはいけない。だってあなたの心の奥底の願いとは、姉が生き返ることだから。」
 近所の家々の窓から見えるろうそくの火と、海面の炎のイメージが重なる演出でした。

 結婚前に妻が病院にいた間、夫は自分がとんこつラーメンを食べに行っていたのだと告白します。「病院を出てから二人で食事に行ったけど、俺は何も食べなかった。あれは単に腹が一杯だっただけなんだ」と。妻は、自分に堕胎手術をさせたことで心を痛めていたから、夫は食事がのどを通らなかったのだと思っていたはずなんですね。
 さらに夫は、その堕胎のことを姉に話していたことも告白し、妻はショックを受けます。姉が死んだのは事故ではなくて自殺だったのかもしれない、私たちが姉を殺したのかもしれない・・・。

 妻「ものすごく高いところから飛び降りると、落ちるまでに時間が掛かる。だから落ちて行っている最中に、今自分が何処にいるのか、どういう状態なのかを忘れてしまう。」
 今の日本人、いや、地球に住む生き物のことなんじゃないかと思いました。大雨が全く降り止まない。もしかするとこのまま水没してしまうかもしれない。でもそれに気づかないで呑気にろうそくを囲み、夕飯を食べている私たち・・・。もうひとつ同じようなたとえがあったのですが失念。
 最後には、舞台の下に水が満ちていました(これには驚愕)。水面から反射する光が劇場の壁に映ります。水底に沈んだ部屋にたたずむ二人。

 改訂前の脚本との大きな違いは、“姉”が話題に登るのと、川の様子を見るために外に出て行った夫が、ちゃんと家に帰って来ることでしょうか。ものすごい違いですよね。全く別の作品だと言えると思います。

 私が役者・坂手洋二を拝見するのはこれで二度目です(一度目のレビューはこちら)。坂手さんの声って個性的ですよね。どんな反応も私にとってはすごく意外で、どっきりさせられます。突然大きな声を出されるのは演出なのかもしれませんが、少々唐突過ぎる気もしました。まあ私は大ファンなので(笑)、これからも追いかけるつもりです。
 占部房子さん。可愛いのか可愛くないのか、賢いのか賢くないのか、よくわからないゆらゆらした存在感でした(笑)。舞台上で生きているように感じました。

 ≪オープニング・イベント≫
 今日は公演初日、劇場のオープン初日ということで、終演後にオープニング・イベントがありました。劇場主、演出家、出演者のご挨拶などを聞きながらビールをご馳走になり、お友達とお話いろいろ。楽しかったです。

 SPACE雑遊のオーナーさんは、居酒屋・池林坊(ちりんぼう)を経営してらっしゃる方なんですね(他にもたくさん店舗あり)。あんなに大胆に水が使えるのって凄いな~と思います。これからこの劇場で生まれる作品に期待したいですね。ただ、ベンチシート観劇になるなら上演時間は短め希望です(笑)。

 それにしても・・・今日は上演中にがんがん話すカップルがいたことにショック。私ってば怒り心頭で(笑)注意しちゃいました。終演後に演出家の鈴木裕美さんが「酔っぱらいがいてすみません」的なお詫びをされたのですが、もしかして関係者だったのでしょうか?それは・・・・困りますねぇ(苦笑)。これから気をつけていただきたいです。

「組曲 二十世紀の孤独」第一楽章
出演=占部房子/坂手洋二
作=松田正隆 演出=鈴木裕美 美術=奥村泰彦 照明=中川隆一 音響=堀江潤(オフィス新音) 舞台監督=森下紀彦 舞台監督助手=楠原礼美子 衣裳=山下和美 演出助手=坂田恵 総合監督=坂手洋二
日時指定自由席(整理番号付) 前売券¥6,000(3作品通し券) パート券 ¥2,500(1作品分)※当日¥2,800
公式=http://www.alles.or.jp/~rinkogun/

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Posted by shinobu at 2006年08月02日 01:29 | TrackBack (2)