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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年08月11日

SPIRAL MOON『みちかける』08/09-13「劇」小劇場

 2006年度愛知県芸術劇場演劇フェスティバル グランプリ賞受賞作品です。チケット売れ行きも良いようですね。⇒残席状況
 SPIRAL MOONは秋葉正子さんが演出を手がけるプロデュース・ユニットで、今回の脚本は門肇さん。門さんはテレビドラマの脚本なども書かれているそうです。

 開演前からちょっと演出がついています。これからご覧になる方は開演10分前までには劇場に入られることをお薦めします。上演時間は約1時間25分。

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 ≪あらすじ≫ チラシより。(役者名)を追加。
 離れたくとも、放れられない。昔も今も。
 嵐の夜に、父のお葬式。喪主をつとめる姉(秋葉正子)と、二人の弟(兄=保倉大朔・弟=田中伸一)の前に現れた一人の女(最上桂子)。
 ざわざわ、ざわざわ。胸騒ぎ。姉の秘密は、弟の秘密。ざわざわ、ざわざわ…。
 ≪ここまで≫

 お葬式を舞台にしたお芝居・・・多いんですよね~。しかもワン・シチュエーション(場面転換なし)ですから演技力がものすごく問われます。でも9人の登場人物にきちんと個性と存在意義があり、安直すぎるお涙頂戴な展開もなかったので、最後まで味わって観られました。否応なしに揺れ動かされる心を描く、丁寧なお芝居だったと思います。でも、「そりゃ、ありえないよな~」と思っちゃうこともありました。いわゆるウェルメイドの作品って、比べる対象が多いしレベルも必然的に高いので、どうしても満足しづらくなっちゃうんですよね。

 ここからネタバレします。

 亡くなった父親は63歳。未成年の少年が無免許運転していたバイクに跳ねられて、突然死亡しました。従業員数百人を抱える老舗旅館を経営する社長だったので、長女のヨウコ(秋葉正子)、長男のツキオ(保倉大朔)、次男のダイチ(田中伸一)の三人兄弟は、「明日から会社をどうすれば?誰が跡継ぎに??」というのっぴきならない問題に直面します。
 信じられないほど強気なヨウコは、自分が後を継ぐのが当然だと思っていますが、次男のダイチはヨウコの経営方針に全く同意できません。長男のツキオは気が弱くていつもヨウコの言いなりなため、ダイチは「ダイビングの仕事を辞めて家に戻る。俺が継ぐ」と言い始めます。

 お葬式は誰もが経験するものすごく身近で重大な出来事です。セリフやストーリーはもちろん、ささいな仕草や間(ま)にも、リアルを積み重ねていかなければなりません。だからちょっとしたボロが出ただけで、いきなり胡散臭く感じてしまうんです。リスクが高いと思います。

 事故を起こした少年の父親(久堂秀明)が「お焼香だけでもさせて欲しい」と土下座をするのですが、ヨウコは全く許す気がありません。少年が今朝方死んでしまったというのに「ざまあみろだわ!」とまで言い切ります。これは・・・ないよねって思いました。どんな罪を犯したといっても18歳で死亡するのは悲しすぎます。息子を亡くした父親に向かってあんな罵声を放つなんて、いくら気が動転しているとはいえ、私には納得できませんでした。たとえヨウコがわざと強気を見せるために演技をしていたとしても、です。
 ヨウコがあまりに気丈なので、ツキオもダイチも「姉は父親の死を悲しんでいないのかも」といぶかしがり、色んな人に「姉は泣いていたか?」と聞きます。私は、人間は「悲しかったら必ず泣く」わけじゃないと思うので、彼らの行動に同意できなかったですね。

 帰ろうとしない女(最上桂子)の正体は、ヨウコと同じ日に同じ産院で生まれ、助産婦の手違いで入れ替わってしまった、父親の実の娘でした。つまりヨウコは血が繋がっていないということになり、弟たちとの関係も、跡継ぎ問題にも複雑さが増してきます。
 ツキオはずっと姉のヨウコを愛していたから、血が繋がっていないと知った瞬間、近親相姦の感情が生まれて・・・という流れだと思うんですが、姉と弟の間に色気が感じられなかったですね~。残念。

 ただ、最後のシーンでヨウコがツキオのことを「ツキちゃん」って呼んだ時は、二人の間に愛情は見えたような気がしました。また、ヨウコとツキオが二人で「秘密を話さない。死ぬまで持っていく」と言い合うのも良かった。照明も美しかったです。
 秘密って甘美ですよね。自分だけの秘密を持ち続けて、相手の秘密を大切にして、色っぽい生き方をしたいものです。

2006年度愛知県芸術劇場演劇フェスティバル グランプリ賞受賞作品
出演=最上桂子/久堂秀明/保倉大朔(アンクルジャム)/福岡佑美子/河嶋政規(こちらKGB)/環ゆら(ケイ・エス・プロモーション)/田中伸一(開店花火)/桑島貴洋/秋葉正子
作=門肇 演出=秋葉正子 舞台監督=田中新一 照明=南出良治  音楽=羽山尚  音響=斎藤瑠美子  チラシイラスト=秋葉陽子 チラシデザイン=岡村一也 制作=薄田菜々子(beyond) 製作総指揮=落合由人 企画製作=SPIRAL MOON
日時指定・全席自由・整理番号付き 前売:一般3,000円 グリーン2,000円 シルバー2,500円 当日:一般3,300円 グリーン2,500円 シルバー3,000円 グリーン:高校生以下。要:生徒証提示。劇団でのみ販売/シルバー:60歳以上。要:年齢を証明できるもの。劇団でのみ販売 未就学児童の入場不可。
公式=http://www.spiralmoon.jp/

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Posted by shinobu at 2006年08月11日 00:00 | TrackBack (0)