2006年05月04日
黒テント『西埠頭』04/19-05/14 theatre iwato
黒テントによる、フランスの劇作家ベルナール=マリ・コルテスの2作品交互上演です。先行レビューを読んで観に行くことにしました。⇒藤田一樹の観劇レポート、ほぼ観劇日記
コルテスの作品は2000年に世田谷パブリックシアターで『ロベルト・ズッコ』を観ましたが、あの時もよくわからなかったんですよね。そして今回も・・・。空間はとっても良かったです。
≪作品紹介≫ 公式サイトより部分引用
運河のほとり 見捨てられた廃墟の町
コルテスの研ぎ澄まされた<他者>への視線が
容赦なく描き出す静かな<暴力>
『ロベルト・ズッコ』の黒テントが挑む
コルテスの最高傑作
≪ここまで≫
藤田くんのレポートがとっても詳しくてわかりやすいです。
コンクリートの壁がむき出しになった横長の空間で、役者さんが膨大なセリフを早口で吐き捨てるように、でもできるだけ丁寧に、語り続けます。
まず空間と照明がかっこ良かったですね~。特にパっと消えて暗転するタイミングが絶妙。オープニングでハイヒールの足だけを四角く照らしたのが良かった。ステージ奥の床下から天井に向けて、壁を照らす青い蛍光灯が美しかったです(蛍光灯がパチパチっとなってから点灯するのはちょっともったいない気もしましたが、意図的なのかしら)。プロジェクターで壁に動画を映しましたが、やりすぎないしセンスも良かったですね。
でも、寝ちゃったんだな~・・・。似たようなリズムと音域でダーーーーっとセリフを話されても、聞き続けるのが難しいんですよね。でも廃墟に暮らす家族の父親(福地一義)と娘(遠藤良子)については、とても気持ちよく聴くことが出来ました。
ここからネタバレします。
最後に長男(重森次郎)は父親に別れを告げ、家族を捨てて家を出て行きます。そして街の悪い仲間と強盗殺人の片棒を担ぎ、その仲間にさっくり撃ち殺されてしまいます。『ロベルト・ズッコ』のラストは今でも意味がわからないのですが、今作のエンディングにはすっごく納得でした。なぜだか「当然だよね」って冷静に眺めている私が居ました。「家族を捨てた罰だ」とかではなく、「自分の食いぶちを自分で稼げるんだから、俺は誰の世話にもならないし世話をする必要もない」という考えって、理論的には筋が通ってるようですが、だったら人間なんて生きる必要ないよねって私は思います。
《ベルナール=マリ・コルテス/2作品交互上演》
出演:重森次郎/遠藤良子/工藤牧/河内哲二郎/横田桂子/桐谷夏子/福地一義/Soxie Topacio
作:ベルナール=マリ・コルテス 演出・美術:佐藤信 翻訳・監修:佐伯隆幸 照明:斎藤茂男 音響:島猛 映像:吉本直聞 衣装:今村あずさ 舞台監督:北村雅則 演出助手:坂口瑞穂 写真:青木司 宣伝美術:タグチケイコ 票券:本木幸世/太田麻希子/米田慎吾 制作:宗重博之/斎藤俊明 芸術監督:桐谷夏子
全席自由 一般前売¥3,800 学生自由席¥2,500 当日¥4,300 2作品通し券¥6,000
黒テント=http://www.ne.jp/asahi/kurotent/tokyo/
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。
寿団『おとこたちのそこそこのこととここのこと』05/03-07萬スタジオ
鈴木田竜二さんが主宰する寿団の7年5ヶ月ぶりの公演。脚本・演出は鈴江俊郎さん(劇団八時半)です。
けっこう有名な大人の小劇場男優が、走る!叫ぶ!登る!脱ぐ!・・・激しいかった~(笑)。廃部になった社会人野球部を舞台に、社会派なんだけどちょっぴりメルヘンで、男の本音を素っ裸にしたセリフが、熱く飛び交います。もちろん汗も唾も飛ぶ!(笑) 渋い男優たちの演技合戦を堪能しました。面白かった!!
※BACK STAGEでチケットプレゼント実施中!(最終締切日:5/5)
※5/5(金)マチネのトークショーは、ゲストが鈴江俊郎さんとマキノノゾミさん(劇団M.O.P.主宰)です。
※鈴江俊郎BLOGが面白い! ※出演者ブログもあります。
≪あらすじ≫
廃部が決まった造船会社の社会人野球部の部室。備品をすべて処理したら明日には工事が始まり、球場ともどもスーパー銭湯になってしまう。ノンプロの野球選手も明日から普通の会社員だ。「この年になるまで野球しかやってこなかったのに!」「すんなりあきらめていいんですか?」「社長に直談判だ!」・・・などと、それぞれに熱い思いや悩みを持った、いい大人の男達がジタバタするお話。
≪ここまで≫
社会人野球部の廃部って、野球選手として入社した人にとっては存在意義がなくなるってことですから、のっぴきならない人生の土壇場なんですよね。違うチームから声が掛かる才能の有る若手もいれば、そもそも活躍の場がないのにただひたすら続けていたベテラン選手もいて・・・。
ここからちょっとだけネタバレします。でも読んでから観に行かれても大丈夫じゃないかな。熱くて渋い男達と出会って一緒にいることが面白いので、ストーリーがわかっていても問題ないと思います♪
どうやったら廃部をやめてもらえるか、野球部の人気を復活させられるかなどと必死で話し合いをするシーンは、「野球部」を「劇団」に置き換えてもばっちりはまる内容でした。40歳のベテラン選手(荒谷清水)が鍛え上げられた肉体を震わせながら言う「魂が魂らしくふるえることが人生なんじゃないのか」というセリフ(正確ではありません)が良かった・・・。大真面目で純粋なセリフをそのままストレートに言ってしまわず、人物の複雑なキャラクターを大胆に形作って、おおげさに語らせます。これが面白い!役者さんは全身全霊かけて個性の激しい役柄を演じてくださいました。それにしても凄い演出だったな~・・・大声でしゃべりながらロッカーの上に登るって、やっぱり強烈です(笑)。
荒谷清水さん(南河内万歳一座)と保村大和さんの2人芝居のシーンは必見!特に保村さんの緻密な演技に感動しました。保村さん演じる二塁手の田辺は超エリートなのにマイナス思考というひん曲がった性格で、しかもゲイという難しい役どころ。必死さがこっけいになるほど走って叫んで、でもセリフが全くブレないので、言葉の意味が熱い思いと一緒にガツンと伝わってきます。もちろん相方のたけ(荒谷清水)との会話では存分に笑わせてくださいました。舞台俳優・保村大和に魅せられましたね。
≪終演後のトークショー≫ 出演者=鈴江俊郎/土田英生(MONO主宰)
鈴江さんと土田さんは京都在住の劇作家・演出家で、お2人とも劇団の主宰でいらっしゃいます。10年以上前からの親しいお友達だそうです。まるでお笑いコンビの絶妙な漫才のようなトークで、客席は爆笑の渦でした。これなら「トークショー」と言われても納得ですね(笑)。
質問タイムがありませんでした。うん、なくて良かったかも。もうおなか一杯だったし(笑)、万が一、出た質問で良いムードが壊れても残念ですしね。下記、憶えていることを私なりの言葉で書いておきます。
土田「(鈴江さんと)出会ったのは93年。『カラーのチラシなんか作るな!』って朝まで説教されました(笑)。」
鈴江「京都はどう?」
土田「ひどい時は週に3回も東京に出てきたりするので(仕事は東京にしかないから)、ぶっちゃけ移って来たい(笑)。でも、もう引っ込みがつかないっていうのがあります。京都に住み続けると言い過ぎた。」
土田「東京に来ると商品化されるっていう感覚がやはりありますね。食べたことない麻婆豆腐とか食べさせてもらって(笑)、持ち上げられてシンデレラ気分になったり。序列に乗っかりだすといういか、今までやってきたことを捨てて東京になじもうとする。でも京都に住んでいる限りそんな勘違いをしなくて済むと思う。京都には普通の生活があって、そこに戻ってこられますから。」
鈴江「シンデレラでいうと、かぼちゃなのに馬車とかん違いする、みたいな?馬車気分?(笑)」
土田「まあ、そうかな(笑)。まさにこの芝居と同じじゃないですか、舞い上がってしまって後で落ち込んだりせずに、堅実に暮らせる。」(トークの最後に「今は東京に移る気持ちはない」と明言。)
鈴江「脚本を書きたい!って思うことはありますか?またそれはどんな時?(聞けと言われたので)」
土田「まあ、依頼されて褒められた時ですね。本当に褒められた時はスキップして帰ります。」
鈴江(or 土田?)「阪急電車で踊ってたとかね(笑)」
土田「人から求められるしかないですからね、モチベーションをあげるのは。興奮するって言うか。」
土田「あとは、ものすごく落ち込んだ時。以前、ネット上に書かれた自分の悪口をプリントアウトして、それを壁に貼って打ち勝とうとしたんだけど・・・立ち上がれなくなってしまって(笑)。落ち込み切ると『この苦しい気持ちを書いてみよう』とか『誰かにわかってほしい、この悩みは自分だけの悩みじゃない』とか考えるんですよね。自分の救済のために書き始めます。」
土田「今日の芝居みたいな、(鈴江さんの)自意識が溢れかえってる芝居はほんっとに息苦しい(笑)。」
鈴江「まあ、舞台に乗ってるのは全員、僕の分身みたいなもんだからね(笑)」。
その他、京都の24時間営業の喫茶店でいつも話していたことや、「もう距離をおきたい」と言って一度“別れた(笑)”ことなど。
出演=荒谷清水(南河内万歳一座)/保村大和/平野勲人(TEAM発砲・B・ZIN)/工藤順矢(TEAM発砲・B・ZIN)/上瀧昇一郎/康ヨシノリ(唐組)/鈴木田竜二/小林高之(TOON BULLETS!)
脚本・演出=鈴江俊郎 演出助手=主浜はるみ 演出部=徳本憲治/中村貴彦/米谷有理子 美術=池田ともゆき(TANC!池田意匠事務所) 照明=柿嵜清和 音響=田上篤志(atSound) 音響=橋本剛 衣裳協力=石川俊一 小道具協力=高津映画装飾 宣伝美術=東學(188) 制作=森内倫子/安部忍/一ツ橋美和 企画・製作=寿団
前売¥3,300 当日¥3,500(全席指定) ※特定日の14時の回終演後にトークショーあり。5/4(木)ゲスト=土田英生(MONO主宰)5/5(金)ゲスト=マキノノゾミ(劇団M.O.P.主宰)
公式=http://www.kotobuki-dan.net/
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。
P.E.C.T.『まどろむ魚』05/03-07劇場MOMO
チェルフィッチュ『三月の5日間』に出演されていた役者さんが3人(瀧川英次、山崎ルキノ、東宮南北)も出てらっしゃるので観に行きました。P.E.C.T.(ペクト)は16周年を迎える劇団なんですね。今回の脚本はProject ONE&ONLYの白土硯哉さんです。
★人気ブログランキングはこちら♪
レビューを全部アップしました(2006/05/05)。
≪あらすじ≫
東京郊外の町の公立野球場のバックネット裏。さびれた売店とベンチがある。その小さなベンチに腰掛けて、橘隆(佐々木覚)と葵晋之助(瀧川英次)は頭を悩ませていた。2人で書いた小説が賞を取ったのだが、“橘葵(たちばな・あおい)”というペンネームで、しかも女性として応募していたからだ。その秘密を知っているのは出版社社員だけ。とりあえず“橘葵”は隆の姉だということにするが、後援会を作りたいというファンが押しかけてきたり、地元の有名文筆家から圧力がかかったりして・・・。
≪ここまで≫
野球場のあるのどかな公園のベンチに、色んな人がやってきて去っていくというスタイルです。主軸は小説家を目指す若者2人。劇場MOMOに高い壁ができていて、劇場の天井がとても高く見えました。先週の芝居(会社の倉庫の中のお話)と全然違ったので、勝手に比較したりして楽しかったです。
初日だったからでしょうが、中盤まではドタバタしていて落ち着きが見えず。でも、イヌをつれたおばあさんたちの井戸端会議シーンが終わってから一気に良くなりました。
素直な会話から日常を描く大人しいめのドラマかと思いきや、突然ぬいぐるみを使ったり、漫画のようにデフォルメされた動作や演技をしたり。役者さんがまだまだ手探り状態だったのでうまく成立はしていなかったけれど、アイデアは個性的だし面白いと思いました。たぶんこれから良くなっていくのでしょう。
橘隆(佐々木覚)と葵晋之助(瀧川英次)以外の役者さんはどんどん着替えて複数の役を演じられます。後から本流につながっていく役もありましたが、全然関係ない役(親の離婚で離れ離れになる子供たち)は、いったい何だったのかな~。
戸惑いながらの観劇だったのですが、最後にふわんと良いムードの後味になって、正直なところ驚きました。エンディングがとても良いので、途中はもっと自信を持ってはじけちゃっていいのではないかと思います。
ここからネタバレします。
地元の有名文筆家の直筆によるこいのぼりにはムリが有るな~と思いました。直筆でわざわざ描くほどの絵じゃないな、とか。マンホールに入れて引っ張るには長さが足りないな、とか。どうせムリなんだからもっと漫画っぽくやったりしていいんじゃないかしら。あと、散歩している犬のぬいぐるみをかぶって、いきなり犬の本音語りになるシーンとか、なぜか「おしまいだー!」と皆で叫んで走るところとかは(書いてみたら本当によくわかんないシーンだな・笑)、堂々とやってもらいたかったですね。演劇ならではの面白い演出ですし、成立させられないわけじゃないと思います。
すったもんだの後、隆と晋之助はそれぞれ別の道に進んだらしく、ラストは数年後の同じ場所で、カジュアル・ルックの隆とパリっとスーツ姿の晋之助が同じベンチに座っているシーンに戻ります。ものすごく優しくて、味わいのあるムードになっていました。その前に売店のおばちゃん(松本美香)がスーツケースを持って、店をたたんで旅立っていくシーンがあったからこそ、生まれたんじゃないかなと思います。それぞれが自分の選んだ道を進んで別れ別れになっていく、潔さとさわやかさがありました。
葵晋之助役(メガネ)の瀧川英次さんが、落ち着いた演技で流れをひっぱっていました。最近、瀧川さんを舞台でよくお見かけしますが、キャラクターの変化がすっごく多彩で的確、そして魅力的です。笑いも確実に生んでくれます。次は6月のOi-SCALE『キキチガイ』ですね。楽しみです(その前に漫談出演もあり)。
出演=東宮南北/佐々木覚/井上つぐみ/波田野淳紘(820製作所)/佐藤拓道/山崎ルキノ/山崎いさお(Project ONE&ONLY)/瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ)/松本美香
作:白土硯哉(Project ONE&ONLY) 構成演出=P.E.C.T. 舞台美術=齋田創+突貫屋 照明=伊藤孝(ART CORE design) 音響=荒木まや 打楽器指導=オーギー・リン 衣裳協力=佐宗乃梨子 小道具協力=廣瀬亜矢子 写真=相川博昭 イラスト=太田ひろこ 広告デザイン=北見大輔(beam-up) 制作協力=川井麻貴(SEABOSE) 制作=薄田菜々子
一般前売2800円 当日3000円 高校生以下割引2500円★リピート割引:半券お持ちの方は1000円にて再度御来場いただけます。
公式=http://www.pect-inter.com/
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
★メルマガを発行しております。過去ログはこちら。
毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
ぜひご登録ください♪
『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)
↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。

『まぐまぐ!』から発行しています。