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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年02月11日

飛ぶ劇場『正しい街』02/10-11にしすがも創造舎 特設会場

 泊篤志さんが作・演出される飛ぶ劇場は福岡県北九州市を拠点に活動する劇団です(過去レビュー⇒)。東京に来てくださる時はできるだけ拝見したいと思っています。福岡県の劇団といえば、私にとってはギンギラ太陽'sと飛ぶ劇場です。

 『正しい街』はCoRich舞台芸術!で福岡・北九州公演の感想をチェックしていましたので、かなり期待して西巣鴨に向かいました。東京国際芸術祭2007参加作品です。なんと東京公演は2ステージだけなんですね。

 ⇒CoRich舞台芸術!『正しい街
 レビューをアップしました(2007/02/13)。

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより。改行を変更。
 正しくあろうとした人々が居た。それは難しい事だった。モラルが崩壊し、宗教や法律も無力だった。「地図を作りに来た」という女が現れる。警鐘を鳴らしに来たのか、破壊しに来たのか、救済に来たのか…。
 2年ぶりの新作は、正しくあろうとする余り歪んでいく、ある集団の物語。歪んだ先に果たして何がみえるのか?「崩壊」か「救済」か。
 ≪ここまで≫

 舞台中央に白い棺おけのような四角い箱がポツンと置いてあるだけの、シンプルで細長いステージ。長い方の両側面を客席が挟みます。にしすがも創造舎特設会場は天井が高く、広々としていて快適でした。初日は当日券がキャンセル待ちになるほどの満員でした。後から知ったんですが、映画監督の青山真治さんがゲスト出演されるポスト・パフォーマンス・トークがあったんですね。

 ある特殊な宗教を信じている人々が暮らす、小さな集落が舞台でした。閉鎖的なコミュニティの中での人間関係を描いた物語です。最近観た青年団リンク・サンプル『シフト』と描いている対象は同じだなと思いました。でも『シフト』が踏み込んでいる領域まで、『正しい街』は行っていないように感じました。

 『IRON』で一番感動したのはオリジナルの民族舞踊でした。振付にしてもアンサンブルにしても、身体そのものにしても、これは飛ぶ劇場でしか観られないものだと感じたからです。今回もそれは、全員がハミングするように歌う歌で感じられました。皆さんの声がすごく・・・澄んでいてきれいなんです。声と心がぴったり合わさっていて、歌そのものの物語の中での意味もしっかり伝わってきます。これがあるから、飛ぶ劇場は必ず観たいと思うんですよね。

 ここからネタバレします。

 舞台になった土地の名はメシネド。救世主キリスト(メシア)のご神体が眠る場所(ねどこ)という意味でした。ある山奥を勝手に不法占拠して5年かけて街を作り、無断で数百人(だったかな)が住み着いていています。犯罪者や前科者など、一般社会で生きづらくなった人が多いという設定でした。

 何もかもが12使徒の多数決で決まってしまうという幼稚な行政システムのもと、敬虔な信者をよそおいながら、プライベートでは不倫、売春、殺人などの“大罪”を日常的にしでかしています。そして皆がそれをわかっていながら見ない振りして生活しています。
 「いつか救世主が復活するその日まで、信仰を守る」とか、「ぱらいそ(パラダイス=天国)はどこにあるの?」とか、人々は“今ではない、いつか来る未来のための準備”をし、“ここではないどこか”を探しています。そして“自分たちだけ”が救われるという幻想を信じる仲間同士で脅し脅され、おびえながら、今という現実から逃れようとしているんですね。

 これって今の私たちの生きている現代社会にもよくあることで、演劇や映画、小説などでもよく取り上げられる普遍的テーマだと思います。だから特に題材がキリスト教である必要性が感じられませんでした。キリスト教にするならもっと奥深く入り込んだネタが欲しいし、時事的な事件に絡んだりしてもらいたかったですね。泊さんならではの聖書の解釈というなら、もっと刺激的で突飛であっていいと思いますし。

 当然のことながら村の生活は立ち行かなくなってきて崩壊します。最後の最後に神父が「新たな街を作ろう。今度こそうまくいくはずだ」と言いますが、観客はうまくいくはずがないことをわかっています。そこから先、もしくはその奥の抽象的な世界を感じたかったです。

 劇団きららから客演されている宗真樹子さんが「外界からやってくる女」役だったのは面白いですね。飛ぶ劇場の劇団員ではない人が「部外者役」ということで。


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:泊篤志/青山真治(映画監督)

 私は『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を拝見していたので青山監督にお会いできたのは嬉しかったな~。
 地元が同じ北九州で、なんと卒業した高校まで同じだというお二人でした。小倉と隠れキリシタンとの意外な因縁のつながりなど、ご当地トークが興味深かったです。実はお二人ともキリスト教について調査し、作品に取り上げているという共通点もありました。

 青山監督が「犠牲とか生け贄とか、責任の擦り付け合いとか・・・日本を描くのにキリスト教を題材にするのはしっくり来る」という意味のことをおっしゃったのですが、私も凄く共感しました。あと、クライマックスの出産(救世主の生誕)シーンで使われた白い布のことをすごく褒めてらっしゃったんですが、私もあれはとてもきれいだと思いました。

≪北九州、福岡、東京≫
出演=有門正太郎 内山ナオミ 寺田剛史 門司智美 藤尾加代子 鵜飼秋子 内田ゆみ 木村健二 権藤昌弘 宗像秀幸 葉山太司 加賀田浩二 大畑佳子 宗真樹子(劇団きらら)
作・演出=泊篤志 舞台監督=有門正太郎 照明=乳原一美 音響=杉山聡 衣裳=内山ナオミ(工房MOMO) 音楽=泊達夫 web=中安翌・藤原達郎 宣伝美術=トミタユキコ(ec ADHOC) 制作=北村功治・鶴元ふみ
発売日 12/20 日時指定・全席自由 3000円 学生2000円
公式=http://www.tobugeki.com/stage.php
東京国際芸術祭(TIF)=http://tif.anj.or.jp

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Posted by shinobu at 2007年02月11日 02:10 | TrackBack (0)