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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年04月12日

パルコ・プロデュース『コンフィダント・絆』04/07-05/06パルコ劇場

 三谷幸喜さんの新作です。豪華キャストの5人芝居。渋い男4人と紅一点に、ピアノの生演奏付きのリッチな時間でした。
 休憩15分を挟んで前半85分、後半60分という長丁場でしたが、長さは全く感じませんでした。パルコ劇場のロビーに登場する画家たちの絵が飾られていますので、観劇前にチェックしておくとさらにお芝居が楽しめるかも!

 なんと、大阪公演はまだ残席あるそうです。びっくりだな~・・・東京が加熱しすぎなのかしらん??

 ⇒CoRich舞台芸術!『コンフィダント・絆

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 1888年、パリ。ムーラン・ルージュに程近い、とあるアトリエ。そこに集まる4人のまだ世間的には無名な画家達。ゴッホ(生瀬勝久)、ゴーギャン(寺脇康文)、スーラ(中井貴一)、シュフネッケル(相島一之)。
 4人は親友でもあるが、同時にライバルでもある。4人とも、自分以外の人間に密かな対抗心を抱いている。信頼、友情、うぬぼれ、嫉妬。様々な思いが渦巻きながらも、4人は表面上は常に「親友」であった。毎日のように朝まで飲み明かし、そして語り合った。それは微妙なバランスの上に成り立つ「友情」。
 しかしその均衡が崩れる時が来た。ある夜、一人の女(堀内敬子)を巡って、4人の画家たちの小さな攻防が始まった。果たして芸術家たちの間に真の友情は成り立つのか?
 ≪ここまで≫

 舞台は4人の画家がシェアしている古いアトリエ。ムーラン・ルージュで働いているダンサー志望の女・ルイーズ(堀内敬子)が、モデルとして雇われてやってきます。いずれ有名になる画家たちと美しいモデルとの恋と友情、そして人間の才能について・・・のシビアなお話でした。もちろん笑いはいっぱいですし、ほろりと涙してしまうエピソードもがっちりと用意されていて、観終った時には「あぁ、いいもの観せてもらったな~」と暖かい気持ちで家路につくことができるお芝居でした。

 実在の有名な人物が描かれると「これは本当にあったことなの?」「史実に基づいているの?」など、細かいところが気になることが多々あるのですが、そんなことどーでもイイやっ!て思えました。芸術家というものについて、真正面から描いてくださっていたように思います。
 私はシュフネッケル以外の画家について、ある程度の知識はあったんですが、わからなくても楽しめるんじゃないかしら(わかった方が楽しめるのは確実ですが)。三谷さんのお芝居は「誰にでも楽しめること」を念頭に作られているんだなと、いつも感じます。

 前半はちょっと物足りない感じがしましたが、後半では胸に届くセリフがいっぱいありました。まだ幕が開いたばかりですから、これからもっと面白くなっていくんじゃないかなと思います。

 ここからネタバレします。

 酒場で歌う年老いた歌手(堀内敬子)が画家達と過ごしたほんの1ヶ月ほどの思い出を語る構成でした。でも堀内さんが老女の姿で出てくるのは最初と最後だけ。あとは美しいルイーズの姿で幕と幕の間に歌を歌われます。ピアノ伴奏が暖かくていい感じ~。

 5人での幸せなアトリエ生活も永遠に続くわけではありません。予想していたよりも早く、そして突然にその崩壊はやってきます。スーラが点描という新しい画法で有名になり、個展を開くことになります。そこにアトリエのメンバーの中からスーラの他に1人だけ、作品を出展できることになるのですが、その1枚を選ぶ日に取り返しのつかない亀裂が生まれます。わかっていながら隠していたことが、あぶり出されてしまうんですね。

 物事・人の本質を見抜く目とそれを描く才能をもっているのに、自分を信じられないゴッホ。ゴッホのような目と才能が自分にはないことを知ってしまった、成功した画家・スーラ。ゴッホの才能を誰よりも早くから知っていて、嫉妬をしながらも彼を世話するゴーギャン。そして、そんな状況を全くわからなかった、絵の才能がない美術教師・シュフネッケル。歯に衣着せぬ議論・ケンカの末、シュフネッケル以外の全員がシュフネッケルに絵の才能がないことを知っており、それを彼に隠していたことがバレてしまいます。でも、シュフネッケルがいなければこのアトリエは存在しなかったし、5人の幸せな日々もなかったのです。
 「コンフィダント」とは、芸術家を親身になって助ける人のことを指すフランス語でした(そのようにセリフで言われてたと思います)。つまり、シュフネッケルのことなんですね。

 お別れの日、ゴッホはアルルに行く(ゴーギャンと一緒に)決心をし、みんなのために手紙をしたためてきました。でも同じことをしつこく書いているので、ゴーギャンに「これだけでいいよ」と1枚だけ読むように言われます。しぶしぶ残った1枚だけをゴッホが読み上げたのですが、「いろいろ迷惑をかけてすみませんでした。ゴッホ。」という一文だけだったんです。これは笑ったな~っ。
 好きだったひとこと→ ゴッホ「罪深きは芸術家、だね。」

 4人の画家が全員ルイーズに惹かれるのはお約束かもしれないですけど、ルイーズのことがちょっとでもヤな女に見えちゃったのは残念。ルイーズにもっと深い影(負)の部分を感じられていたら、彼女を終始いとおしく思えたんじゃないかしら。あと、結局彼女はゴーギャンと付き合っていたんですが、2人の間に特別な関係が見えなかったんですよね・・・。

 たまたま知り合いと同じ回を観ていて、終わった後にお食事をしながら感想を話し合うという幸せな時間を持つことができました。いや~・・・人によって感じることも、目の付け所も全然違うんですよね~。「この作品をヨーロッパでやったらどうなるだろう?」とか「違うキャストだったら誰がいい?」とか(笑)、先のことを勝手に想像したりできました。
 三谷さんの作品は上演許可が下りないことで有名です。でもいつか、他の方の演出で、違うキャストでも観てみたいです。一観客のわがままな独り言ですけれど。

≪東京、大阪≫
出演=中井貴一、寺脇康文、相島一之、堀内敬子、生瀬勝久 音楽・演奏=荻野清子
作・演出=三谷幸喜 美術=堀尾幸男 照明=服部基 衣裳=黒須はな子 音響=井上正弘 ヘアメイク=河村陽子 舞台監督=松坂哲生 宣伝美術=高橋雅之 宣伝写真=中筋純 宣伝写真ヘアメイク=江川悦子 宣伝写真衣裳=前岡陽子 CGオペレーション=Studio Gumbo プロデューサー=佐藤玄 制作=毛利美咲 製作=山崎浩一 企画協力=株式会社コードリー 企画・製作=株式会社パルコ
一般9,000円(全席指定・税込)〈4/7(土)プレビューオープニング・プレヴュー料金/8,500円(全席指定・税込)〉
http://www.parco-play.com/web/page/information/les/

Posted by shinobu at 2007年04月12日 21:57 | TrackBack (0)