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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年04月13日

俳優座劇場プロデュース・別役実祭り『壊れた風景』04/06-15俳優座劇場

 別役実さんの新作を含む3作を連続で上演する別役実祭りの第2段。考えてみたら別役さんの作品を観るのは青年団若手自主企画の『会議』以来。かなり久しぶりのベツヤク・ワールドでした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『壊れた風景

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 道に迷った親子がある場所に辿り着く。
 通りかかる人達に話を聞いてみるが、それぞれの記憶と風景が一致しない。
 まるで、そこだけ世界が歪んでしまったように……
 ≪ここまで≫

 蓄音機、お弁当、パラソルなどの豪華なピクニックの用意が、とある道端に手付かずで放置されています。そこを通りかかった全く見ず知らずの他人たち、6人の交流。

 「あれ」「こちら」「そういうこと」など指示代名詞が連発されて、正直なところイライラしましたし、会場で笑いがいっぱい起こっているのにクスリともできない自分にもがっかり(苦笑)。でも事態がエスカレートしていくに従って、普通に笑える可笑しさではなく、辛らつなブラック・ユーモアを楽しめるようになりました。恐ろしい話だな~。

 ただ、演技については堅さを感じざるを得ませんでした。戯曲のセリフをとても大切にされているからかもしれません。前述の『会議』みたいに柔らかい現代口語になると、それはそれで別役さんのセリフならではの味わいから遠ざかる気もしますし、バランスが難しいところですよね。

 ここからネタバレします。

 最初は、レコードが何度も繰り返し演奏されてしまう蓄音機を止めることすら、「自分のものじゃないから」と躊躇していた人たちが、マットの上に座り、お弁当を食べ、ワインまでグビグビと開けてしまう、おぞましいほどのあつかましさを発揮します。集団ドロボウです。
 「だって仕方ないよ」「こういうことは皆んなでやらないと」「権利があるんだから!」・・・吐き出すように口々にしゃべる馴れ合いの言葉にゾっとしました。身に覚えがある・・・。恥ずかしいです。

  最後は刑事が通りかかって、「そこでピクニックの準備をしていたのは、とある6人家族です。その先で心中しました。」と言われて、盗み食いをしていた6人は凍りつきます。刑事が「ところで、あなたがたは誰なんですか?」と言うのが、最後のセリフでした。私は誰なのか。自分は何なのか。集団の中の匿名の人間ではなく、名前の付いた一個人としての自分を見つめなければ・・・という意味に受け取りました。
 
 体操服姿に坊主頭、そしてなぜかリュックをお腹の方に抱えている佐々木睦さんの姿は強烈でしたね(笑)。演技も面白かったです。

出演:山本郁子、塩屋洋子、伊東達広、佐々木睦、関貴昭、津田真澄、岸槌隆至(配役順)
作:別役実 演出:山下悟 美術=長田佳代子 照明=森脇清治 音響=小山田昭 衣裳=菊田光次郎 舞台監督=上村利幸 イラスト=曽根久美 宣伝美術=ミネマツムツミ 企画制作=俳優座劇場
チケット前売開始:2007年3月1日(水) 電話予約午前11時より 一般 5,600円/ハーフチケット 2,800円/グリーンチケット(要学生証提示) 2,800円
http://www.haiyuzagekijou.co.jp/

Posted by shinobu at 2007年04月13日 22:26 | TrackBack (0)