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2007年04月15日

【稽古場レポート】新国立劇場演劇『CLEANSKINS/きれいな肌』4/9新国立劇場Cリハーサル室〔5〕

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北村有起哉さんの台本

 新国立劇場の2007年4月の新作『CLEANSKINS/きれいな肌』の公式稽古場レポート〔5〕です。

 ⇒稽古場レポート〔〕〔〕〔〕〔〕〔このページ〕〔
 ⇒公式サイト
 ⇒CoRich舞台芸術!『CLEANSKINS/きれいな肌

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リラックスしたムードの稽古場

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 英国の小さな町、母ドッティー(銀粉蝶)とその息子サニー(北村有起哉)が二人で暮らす公営住宅の一室。そこへ薬物中毒で行方不明となっていた娘ヘザー(中嶋朋子)が突然、イスラム教徒の姿で帰ってきた!
 反イスラムのデモに参加しているサニーは、イスラム教徒となった姉になぜ改宗したのかと激しく詰め寄る。そんな弟を言葉少なに見つめ、静かに語る姉。次第に姉弟の話は自分たちを捨てた父へと及ぶが、母はそんな二人を前にただおろろするばかり。
 やがて、父の去った本当の理由が明らかになっていく……。
 ≪ここまで≫

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声の出演の伊藤総さんが初参加!

 およそ1週間おきに稽古場に伺っています。今回は4月9日(月)。13時からのお稽古には、声の出演をされる伊藤総さんが初参加!ちょうど2日前に拝見したお芝居に出演されていた方で、早い再会にびっくり(笑)。千秋楽の翌日から早速いらしてくださったそうです。伊藤さんがいらしたので、○○○役はプロンプターの山本美也子さんから伊藤さんにバトンタッチ!どんどん本番仕様になってきて、わくわくします。

 15時から照明の勝柴次朗さんがお見えになり、照明スタッフの方々(河野さん、松本さん、塩澤さん)も次々と集まってきました。というのも今日は、通し稽古の後に照明打ち合わせがあるからなんですね。初の本格的通し稽古が始まったのは15時30分ごろ。

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稽古開始直前のピリっとした銀さん

 最初から最後までこの『CLEANSKINS/きれいな肌』を観るのは、私も初めてのことでした・・・。何度も何度も観ているシーン1でまた涙して、クライマックス直前のシーンで号泣~っ!!制作の茂木さんに「また泣いてるの?(笑)」とあきれられちゃいました。

 人間は一人一人に圧倒的な個性があって、それぞれがかけがえのない存在だと思います。同時に、絶対的に孤独なんですよね。私たちは孤独から逃れられないことを知りながら、誰かに触れたい、つながりたいと思って求め合います。でも個性豊かで孤立した存在同士が交わろうとしても、なかなか上手くは行かず、いつもぶつかって傷つけ合ってしまいます。

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柔軟する中嶋さん。柔らかい!

 このお芝居に登場する3人の家族も、私たちと同じく不器用で哀れな人間たちです。彼らは血が繋がった家族として何年も一緒に暮らしてきたはずなのに、生活も、習慣も、夢も、信条もバラバラです。良かれと思ってしたことが相手を苦しめたり、本当の気持ちを伝えたためにお互いを切り刻むことになったり・・・。ひとつの小さな家族の中に、国や世界のそのままの姿が映し出されているんですね。もちろん私たちが生きている今の日本とも重なります。

 通し稽古の途中で(たぶん暗転の時)、栗山さんと少しおしゃべりしました。
 栗山「こんな曲、使ったの初めてだ(笑)。」
 しのぶ「どうして(使われたん)ですか?」
 栗山「台本のもともとの設定なの(曲名が書いてある)。それがなかなかいいんだ、この曲が。」

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フィードバックの時間の真剣な北村さん

 確かに、軽快なのにどこか物悲しくて、でも若さも自由も感じる不思議なリズムのポップスだったような・・・。作品で描かれているテーマは非常に重たく、深刻なものですが、ただただ悲嘆にくれたり、ことさらに強い主張を押し付けたりは全くしていません。劇作家シャン・カーンさんの柔軟で繊細な心が、その曲に表われているように感じました。

 18時前から照明打ち合わせになりました。稽古場の空いたスペースにササっと机を移動させて、スムーズに会議に移行します。参加者は栗山さん(演出)、勝柴次朗さん(照明)、米倉幸雄さん(舞台監督)、田中弘子さん(照明オペレーター)、川原清徳さん(演出部)、宮越洋子さん(演出助手)、茂木令子さん(制作担当)の7人。栗山さんがシーン1から順番に、照明についてのイメージを伝えていきます。

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照明メンバーが集結

 栗山「ちょっと生(なま)系の明るい中の残酷さの方が、このシーンはいいかもね。陰影が深くなって。」
 栗山「『東京物語』の江ノ島の海辺に座ってる二人、みたいな(笑)。」
 栗山「芝居っぽさからどんどん、どーーーんと離れていった方がいい。」
 栗山「(ユージン・)オニールとかの湿った明かりではなく、イメージとしては明るい感じの陰影かな・・・陰湿じゃなくてね。もひとつ明るい感じの、UKロックの軽薄さみたいな。もうちょっとこう、キッチュな感じね。今のベルリンの芝居はそんなのばっかりなんだ。蛍光灯をまんま使ったりね、素材の持ってる個性をそのまま使うようなのがね。」

 照明の勝柴さんは数々の賞を受賞されているとても有名な照明家さんです。新国立劇場でも栗山さんと何度もお仕事をされています。勝柴さんはゆっくり、ぽつりと静かに言葉を発する、ダンディーな方でした。
 栗山「アンバーはきれいでしょう?」
 勝柴「・・・アンバーはきれいすぎるかも・・・。」
 栗山「ブルーは汚いでしょ?ブルーはやめよう。」
 勝柴「でも(○○が)黄色って言うのは初体験だな・・・(笑)。」

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ステージはどんな色に染まるのでしょう?

 1時間強で打ち合わせが終わった後、稽古場から小劇場に連れて行っていただきました。なんと朝から搬入の始まった舞台が、もう建っているのです!模型の写真は拝見していましたが、実際に建った美術を見ると全く印象が違いました。その第一印象は・・・おっきい!巨大な壁の中に吸い込まれそう!!・・・でも、家具や大道具が入ったらもっと変わるのでしょうね。愛らしい家具たちはまだ稽古場で働いてくれているのです。彼らの登場を待ちましょう♪
 美術の島次郎さんと栗山さん、勝柴さんが、客席から舞台を見つめながら細かい部分の打ち合わせをされていました。これからまだ追加で加工されるとのこと!すでに壁に色を塗っている方もいらっしゃいました。さすが、手厚いお仕事ですね。

 ⇒稽古場レポート〔6〕に続く

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休憩所のお菓子。可愛らしいですね♪

出演=中嶋朋子/北村有起哉/銀粉蝶
脚本=シャン・カーン 翻訳=小田島恒志 演出=栗山民也 美術=島次郎 照明=勝柴次朗 音響=秦大介 衣裳=宇野善子 ヘアメイク=佐藤裕子 演出助手=宮越洋子 舞台監督=米倉幸雄 照明オペレーション=田中弘子 音響オペレーション=黒野尚 演出部=川原清徳/大野雅代/藤波三幸 プロンプター=山本美也子 美術助手=松村あや 制作助手=庭山由佳 制作担当=茂木令子 広報=高梨木綿子 芸術監督=栗山民也 主催=新国立劇場
【発売日】2007/02/12 A席5,250円 B席3,150円 Z席1,500円
公式サイト=http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000121.html
ぴあ=http://info.pia.co.jp/et/play-p/cleanskins/cleanskins.html

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Posted by shinobu at 2007年04月15日 17:39 | TrackBack (0)