REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2007年04月29日

ハイバイ『「おねがい放課後(プレビュー公演)」と「ヒッキー・カンクーントルネード(再演)」』03/14-18アトリエ・ヘリコプター

 岩井秀人さんが作・演出されるハイバイ(過去レビュー⇒)の、「ヒッキー・カンクーントルネード」再演と「おねがい放課後」プレビューの2本立て公演です。しっかり2本立てで3時間(途中10分の休憩を含む)ありました。ちょっと疲れましたが充実のアトリエ公演でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!「再演とプレビュー公演

■「ヒッキー・カンクーントルネード(再演)」
出演:平原テツ(reset-N)・村田牧子(青年団) ・渡猛(Tokyo Comedy Store j)・中川幸子(五反田団) ・松本裕亮 ・岩井秀人(15日19時半~・16日15時~・18日14時~の回のみ出演)

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより (役者名)を追加。
 プロレスラーになりたいけど引きこもりの男、登美男の夢と現実の葛藤。
 ハイバイ旗揚げの作品であり名作の呼び声高い主宰岩井の半自伝的悲劇。

 プロレスラーになりたいけど引きこもりの森田登美雄(岩井秀人)。
 唯一の理解者である妹(中川幸子)と、今日も楽しくプロレス談義。
 心配した母親(平原テツ)は引きこもりを引きずり出す
 職人さん『出張お兄さん』(松本裕亮)に相談をしに行くのだが。
 ≪ここまで≫

 感受性豊かな(自意識過剰な)若者の純粋な気持ちがふるふると揺れ動く様子を、繊細な演技でつぶさに表現します。岩井さんがひきこもりの長男役を演じられる回を拝見しました。やっぱり岩井さん、怖い・・・怖くて目が離せない。
 どちらかというと、こまばアゴラ劇場で観たものの方が個人的には好きでしたが(役者さんの存在感とか)、ラストは今回の方が余韻が深く残って良かったように思いました。

 ネタバレします。

 用松亮さんが長男役だった前公演では、最後に長男が泣きながらとはいえ自分から進んで家を出て、“脱ひきこもり”を達成したような、ちょっとイイ感じのエンディングでした。でも今作では、長男(岩井)は静かに、まるで死出の旅路に出るように舞台を立ち去ったため、単純なハッピーエンドにはならなかったように感じたんですよね。後味がすっきりせず、じわじわと何らかのしこりが残るのが良かったです。


■「おねがい放課後(プレビュー公演)」
出演:古館寛治(青年団) ・市子嶋しのぶ(カムカムミニキーナ)・石橋亜希子(青年団)・内田慈・岡田昌也・師岡広明・三浦俊輔・永井若葉

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 1年に4歳、年をとってしまう奇病を患った高校生とそれを取り囲む親、仲間達。
 冴え渡る10代の自意識と性欲の宴。

 一年に4歳年をとってしまう奇病にかかっている志賀君。
 彼を取り囲む、陽気な同級生達。
 19歳なのに肉体的には68歳の志賀君は、
 見た目はおじさんだけど恋だってするし、
 ちょっとした背伸びもしたい。
 ある日、演劇部の新しい顧問がやってきて、
 それまで部の中心だった志賀君の立場が一気に揺らぐ。
 果たして。
 ≪ここまで≫

 メルマガ2007年4月号に書いた感想(先月のベスト2)
  ☆1年に4歳としを取る病気に悩む高校生・志賀くんを主軸に、
   人間の自意識が生み出す可笑しい、恥ずかしい、悲しい世界を
   現実と非現実を大胆に行き来しながら描く「おねがい放課後」。
   笑いが止まらないのに、グサっと傷つけられたりもして、
   無我夢中で拝見しました。劇中劇の構造もしたたか。

 顔に思いっきりしわを落書きした志賀君(三浦俊輔)が登場し、『無外流、津川吾郎』でその演出方法に慣れたとは言え、やっぱり爆笑してしまいました。
 志賀君が所属する演劇部に新しい顧問の先生(品川:古館寛治)がやってきて、恋する相手(内田慈)との甘い日々が、すっかり暗転してしまいます。この品川先生のキャラが強烈!(笑) モデルは岩井さんが学生時代に教わった演劇の先生だそうです。

 次回公演では新キャストになり、設定を高校から大学に変更するそうです。青年団の志賀廣太郎さんがとうとう登場!

 ネタバレします。

 長い暗転の中のキスシーン(頭にチュー)はめちゃくちゃエロティックです。思いっきりうっとりしたりトキメいちゃえればいいんだけど、やっぱり志賀くんの病気とかコンプレックスが頭から離れないから、安易にイイ気持ちにはなれません。決して逃れることができない悲しみや苦しみと、「生きてて良かった」と思える最高の幸せが同時に起こる真っ暗闇で、涙が搾り出されました。

 「ハムレット」の劇中劇でうっかり(笑)殺人が起きてしまい、なんと品川先生も志賀君も死んでしまいます。「死」はあまり歓迎したくない結末でした。志賀君は早死にする運命だったかもしれないけど、命が終わることでお話を終わらせてしまうと、世界がすんなりきれいに閉じてしまったように感じ、もったいないと思いました。あと、死後の世界で好きだった女の子と一緒になれたけど、シーンとしては長すぎると思いました。そこまでで十分お腹一杯になっていたからだと思います。いっぱい笑ったし、いっぱい泣きました。

出演=古館寛治(青年団) /市子嶋しのぶ(カムカムミニキーナ)/石橋亜希子(青年団)/平原テツ(reset-N)/中川幸子(五反田団)/渡猛(Tokyo Comedy Store j)/村田牧子(青年団) /内田慈/岡田昌也/師岡広明 /松本裕亮 /三浦俊輔/永井若葉/岩井秀人
作・演出=岩井秀人 照明=松本大介(enjin-light) 音響=荒木まや 制作=原田瞳(tsumazuki-no-ishi)
2000円(16日金の昼の回のみ1500円)
公式=http://hi-bye.hp.infoseek.co.jp/

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2007年04月29日 22:56 | TrackBack (0)