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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年05月03日

東京ノーヴイ・レパートリーシアター『ワーニャ伯父さん』05/03東京ノーヴイ・レパートリーシアター

20070503_wanya.JPG
エントランス

 下北沢駅から徒歩80歩の小さな劇場で、半年以上にわたってレパートリーを発表し続けている東京ノーヴイ・レパートリーシアターシアターXでの公演のリベンジ(笑)に伺いました。
 上演時間は3時間15分(途中15分の休憩を含む)。

 CoRich舞台芸術!『ワーニャ伯父さん、他

 ≪あらすじ≫ パンフレットより。(役者名)を追加。
 退官した教授(稲田栄二)が若い後妻(麻田枝里)を連れて、娘(小関敦子)の住む先妻の田舎へと帰って来た。人生の大半を、死んだ妹の夫である教授の仕送りに捧げてきたワーニャ(菅沢晃)は、教授の実態を知り、驚愕する。そのうえ教授の妻は、以前からあこがれていた女性だった。
 ≪ここまで≫

 はじめて『ワーニャ伯父さん』のことがわかった気がしました。なんとつらくて優しい戯曲なんだと、またチェーホフ作品が好きになりましたね。観に行って本当に良かったです。客席は30席ぐらいかしら。至近距離で贅沢な体験だと思います。ただ、西洋印象派絵画を見ているようだと感じた先日の感想は変わらずでした。

 装置も衣裳も本物志向で、役者さんはごく自然にその役柄として舞台で会話をされます。今を生きている日本人であることを手放して、ロシア人であることを目指しているような印象でした。だから話し方は現代日本人っぽくないというか、んー、ちょっと乱暴なたとえになるのですが、外国映画を吹き替えする声優さんの話し言葉に少々似ているようにも思いました。
 非常に丁寧に、真心込めてチェーホフの世界を具現化しようとされているように思います。でも、額縁の中にすっぽりはまっていて、客席の方に意識が向けられていないように思いました。敢えてそうされているのでしょう。私は寂しかったし退屈しましたが、それは好みの問題だと思います。

 なげやりで自堕落で退廃的な生活の醜さと、質素で勤勉な生活の神々しさが、おのずと対比されるのが素晴らしかったです。状況を説明したり意味を伝えたりせず、戯曲で起こる人間の関係性をそのままストイックに舞台で実演することに集中していらっしゃるから、そんな効果が出たのではないかと思いました。それって演劇の醍醐味ですよね。

 ここからネタバレします。

 最後の最後まで観て、やっと色んなことがわかった気がしました。教授も妻も、友達の医者(アーストロフ:渡部朋彦)も、誰もが領地から立ち去った後、ワーニャが「(胸が)痛い」と言います。あぁ、私はこの言葉のために3時間待っていたんだなと思いました。ソーニャの「誰かのために働いて、天国でゆっくり休みましょう」という言葉がこんなにすんなり受け入れられるとは、自分のことながら意外でした。前後しますが、ソーニャが父に向かって「思いやりを持ってください」という言葉も、はじめてわかった気がします。※セリフは正確ではありません。

出演=セレブリャーコフ:稲田栄二 エレーナ:麻田枝里 ソーニャ:小関敦子 ヴォイニーツカヤ夫人:西山 友子  ワーニャ伯父さん:菅沢晃 アーストロフ:渡部朋彦 テレーギン:岡崎弘司 マリーナ:山下智寿子  エフィーム:山田高康
演出=レオニード・アニシモフ
前売り3500円 当日3800円 学生2000円 シーズン通し券10,000円
http://www.tokyo-novyi.com/

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Posted by shinobu at 2007年05月03日 22:00 | TrackBack (0)