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REVIEW

2007年05月04日

流山児★事務所『楽塾歌劇☆真夏の夜の夢』05/03-06本多劇場

 楽塾は流山児祥さんが率いる“平均年齢55歳(48歳から65歳)の女性アマチュア集団”です(パンフレットより)。10周年記念公演なんですね。
 『真夏の夜の夢』というと原作はシェイクスピアですが、翻案台本は野田秀樹さん。1992年の作品だそうです。野田さんの言葉をゆっくりと味わうことができました。素敵な脚本だな~。上演時間は約1時間45分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『楽塾歌劇☆真夏の夜の夢

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 創業130年、割烹料理「ハナキン」の娘・ときたまご(小森雅子)は親の決めた許婚の板前デミ(杉山智子)よりライ(高野あっこ)が好き。
 恋人たちは富士の麓の「知られざる森」へ駆け落ちしてしまい、デミと彼を慕うそぼろ(いそちゆき)も夜の森へ。 
 そこには、ご存知パック(川本かず子)をはじめとする妖精たちのほかになぜかメフィストフェレス(桐原三枝)も。  
 結婚式の余興の稽古をする出入り業者も入り乱れて「真夏の夜の森」はてんやわんやの乱痴気騒ぎ。 
 ≪ここまで≫

 パンフレットの流山児祥さんのごあいさつより一部引用⇒「毎週日曜に稽古して半年前から土日稽古、本番の二週間前から夜稽古が始まるという楽塾のスケジュールはこの十年変わってない。楽塾のメンバーは皆、働いている。働きながら年に一度、ゴールデン・ウィークに演劇の公演を行う。」

 中高年のアマチュアの女優さん(ヘンな言い方ですが)が元気に走る舞台でした。いわゆる“発表会”のような印象を拭うことが出来ず、中盤までは少々退屈しました。でも言葉を大切に伝えようとしている方が多く、いつもは大声の早口で駆け抜けてしまう野田さんのセリフをしっかり聞くことができたので、終演の時にはじ~んと感動することができました。野田さんというと最近の『オイル』や『ロープ』の印象が強烈なので、こんなに寓話的な戯曲に出会ったのは久しぶりな気がします。私はかなり好きでした。

 最初は白いカーテンが殺風景で寂しいなと思いましたが、全面にダイナミックな動画が映写され、派手な演出効果を上げていました。最前列とかよりも舞台から少し離れた席の方が楽しめるんじゃないかしら。
 昭和のヒット曲(かな?)の替え歌みたいなのがいっぱい流れて懐かしかったりも。いっぱい踊って歌って走ってらっしゃいました。

 そぼろ役のいそちゆきさんが素敵でした。ときたまご役の小森雅子さんもおもちゃの人形みたいで可愛かった。メフィストフェレス役の桐原三枝さんは宝塚歌劇の男役みたいでかっこ良かったです。

 ここからネタバレします。

 『真夏の夜の夢』、『ファウスト』だけでなく『不思議の国のアリス』の要素も入っていました。結婚式の余興芝居とそぼろ(いそちゆき)が見ていた夢とが重なるのも上手いなと思いました。ひもじくて自分の身体を食べてしまった生き物こそ、メフィストフェレスだったというのも面白いです。

 人間が声を出して言えずに飲み込んだ恨みの言葉が、具体的な憎しみとなって表れて森を破戒していきます。憎しみが木を焼くイメージは戦争そのものですよね。
 妖精と人間が悪魔(メフィストフェレス)との契約を破棄する度に、森に危害が降りかかります。軽い気持ちで起こした悪事を反省して撤回しようとしても、やったことが消えるわけではありません。でも、「どうやったらこの火は消えるの?自分の命を捧げたら消えるかしら」というそぼろの言葉が、森に雨を降らせる(メフィストフェレスの涙の雨が降る)きっかけになります。映画『もののけ姫』を思い出したりもしました。※セリフは正確ではないです。

 ドタバタ喜劇で開幕したかと思いきや、メルヘンな世界から人間と森林(大いなるもの)、戦争の関係を描き、決して楽観的ではないけれど希望も示された作品でした。目に見えるもの、見えないものとの関わりも“木のせい”“気のせい”などの言葉遊びで簡潔に表され、ひとつひとつをじっくり味わえました。野田さんの戯曲ってやっぱりすごいですね。

楽塾創立10周年記念公演
出演=伊藤しずよ、川本かず子、菊池磨菜、桐原三枝、小森雅子、杉山智子、高野あっこ、内藤美津枝、二階堂まり、宮沢智子、めぐろあや、柏倉太郎、木暮拓矢、武田智弘、諏訪創、いそちゆき、柏倉太郎、小暮拓矢、武田智弘、諏訪創
原作:W・シェイクスピア 翻案台本:野田秀樹 演出:流山児祥 音楽:珠水 美術・舞台監督:小林岳朗 照明:ROMI 音響:島猛 振付:竹村絵美 衣裳:鈴木真紀子 映像:浜嶋将裕 舞監補:冨澤力 宣伝美術:山中桃子 制作:米山恭子 主催:流山児★事務所
【発売日】2007/03/03 前売・予約:3000円 当日:3500円 中高生割引:2500円
http://www.ryuzanji.com/  

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Posted by shinobu at 2007年05月04日 00:03 | TrackBack (0)