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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年07月02日

NODA・MAP番外公演『THE BEE(日本バージョン)』06/22-07/09シアタートラム

 小さな劇場で約1時間の異世界体験・・・あぁーもー最高!こういう演劇体験を心から楽しいと思います。贅沢だ・・・贅沢ってこのこと!
 ※描かれている題材は刺激が強いため、お好みは分かれると思います。

 カーテンコールで野田さんより「演出、キャスト、装置もすべて違うロンドンバージョンが7月から始まります。この作品を気に入られた方は、チケットがロビーで販売されていますので、どうぞお買い求め下さい」とのご挨拶あり。すっごく楽しみです。
 
 ⇒CoRich舞台芸術!『THE BEE
 レビューをアップしました(2007/07/03)。

 巨大な紙を使った演出がダイナミックでライブ感もあり、小学校の図工の時間のような遊び感覚も得られて、新鮮なワクワク感がありました。でもお話はとっても狂気じみた恐ろしいものなので、そのギャップにもゾクゾクします。

 舞台奥の紙に映写される動画で、家の中や人の影などが表現されます。映像を使う演出はここ数年でほぼ常識のように多くなっていますが、だからこそセンスが問われるんですよね。緩急があって役者さんとのコンビネーションも粋な感じに決まっててかっこ良かったです。

 冒頭から導入は踊りの振付のような身体表現でとってもリズミカル。ただ、いかにも振付な感じで私はちょっぴり冷め気味だったかも。めまぐるしく場面転換する前半から一ヶ所にとどまりじっくり見せる後半になると、作品のムードは一気に変化します。でも、ごく普通のサラリーマンだったはずの井戸(野田秀樹)が凶行に走る過程は、非常にスムーズでした。意外ななめらかさで、何のギャップもなく、“自然に”暴力に訴えるようになります。

 パンフレットに野田さんが書かれて文章を少し引用します。
 「暴力って理屈がないんですよ。人は世間の事件に対してどうにかして解釈を施そうとするけれど、実は暴力というものは頭で解することができない。なんとなくの体感でしか受け止め得ないものなんです。だからここで描かれる井戸の暴力も、どこからそれが始まっているのか明確にはわからない。蟻地獄みたいにずるずるっと段々と抜けられない穴にはまっていって、ふと気づくと圧倒的な“恐怖”が沈黙を支配している。」

 暴力については劇団「木花」の『ロミオとジュリエット』で描かれていた、ティボルトとマキューシオの決闘シーンに重なりました。そして「いつのまにか、慣れていること」の怖さを、身近な自分の問題として受け取りました。

 野田さんは静かに何もしないで立っている時、知的な輝きとそれに相応しくない(はずだった)暴力性が重なり合い、矛盾をはらんだ身体から何とも表現しがたい空気を発してらっしゃいました。秋山菜津子さんにひどいことをするシーンも、エロティックなムードがあって良かったです。『2001人芝居』(2001年の私のベストアクター)を思い出しました。

 ここからネタバレします。

 ある脱走犯に妻と息子(6歳)を人質に取られ、自宅に立て篭もられた男・井戸(野田秀樹)が、犯人の妻と息子(同じく6歳)を人質に、犯人の家に立て篭もります。報復の連鎖が起こり、一見単調な繰り返しから世界の表と裏が同時に見えてきます。
 前半はマスコミの暴力や警察権力の腐敗などをコミカルかつ簡潔に描き、ピリっとした刺激が心地よかったです。

 女(秋山菜津子)を犯して、寝て、ゴハンを食べて、子供(近藤良平)の指を切って、女に封筒に入れさせて、それを運び屋(浅野和之)に渡す。また女を犯して、寝て・・・の繰り返しはセリフなしで動きだけで表現します。何度も繰り返しますが、少しずつ変化が現れて(子供が死んだり、女から進んで動くようになったり)、何の変化も無いようでいて実はじわじわと確実に変化している、日常のしたたかさ・恐ろしさを感じました。
 指の入った封筒を届ける男・百百山(浅野和之)は警部ですが、だんだんと武器商人のように見えてきて、小古呂(脱走犯)と井戸が彼の被害者であるように思えてきました。

 映像で巨大な蜂(BEE)が飛び回り、最後の方は無数の蜂の群れが舞台全体を覆います。これが、なんとも・・・・わくわくしました。得体の知れない恐ろしさが、奇妙な快感になったのかもしれません。

出演:野田秀樹/秋山菜津子/近藤良平/浅野和之
原作:筒井康隆 原作「毟りあい」(新潮社)より~ 脚本:野田秀樹&コリン・ティーバン 演出:野田秀樹 美術:堀尾幸男 照明:小川幾雄 音響・効果:高都幸男 映像:奥秀太郎 舞台監督:瀧原寿子 美術助手:秋山光洋 照明操作:熊崎こずえ 音響操作:近藤達史 映像操作:(株)NEGA 舞台部:高原聰 磯崎珠奈 企画・製作:NODA・MAP 
5/13発売 6500円
http://www.nodamap.com/

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Posted by shinobu at 2007年07月02日 13:09 | TrackBack (0)