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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年07月15日

青年団若手自主企画Vol.33『スネークさん』06/20-25アトリエ春風舎

 ツキムラニホさんの戯曲を木崎友紀子さんが演出される芝居ダンス演劇企画の第1弾です。1年以上のワークショップを経て作り上げられた、演劇ともダンスともカテゴライズできない作品でした。

 途中までは少々退屈だったのですが、中盤から突然、身体と声と心が一緒になって動き出し、空間全体が命の息吹で満ちたように感じられて、涙が止まらなくなりました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『スネークさん
 レビューをアップしました(2007/07/21)。

 公演が終了しているのでネタバレします。

 爽やかカラフルな色合いの衣裳の女の子たちが、おしゃべりしたり、踊ったり、歌ったり。
 実は中盤までは退屈で眠気に襲われたりしてたんです。意味不明の言葉のやりとりや、奇妙な動き(動作)がぽつぽつと起こって、女の子だけの閉じた世界(“オリーブ少女”っぽい感じ)のように感じたので。でも終盤の歌が始まったところから、もー涙が止まらなくなっちゃっいました。

 目の前に、生きる体と声。動くこと、歌うこと、弾む息と汗。愛と喜びでつながった、いのちの、やわらかな、のびやかな、その姿。そこで起こっていること全てが、いのちを喜び、いのちを生きていた・・・。

 脚本および出演のツキムラニホさんが母親であることも大きな核になっていると思います。毎月血を流して、新しい命を生み出す「女」だからこそ作ることができた作品なのではないでしょうか。

 服を脱いだり着たりするのが、脱皮するヘビ(スネークさん)を表していたのかな~。服をどんどん脱いで下着姿になっちゃったのはちょっとびっくりしましたね(笑)。

 この作品はダンスなのか演劇なのかというと、どちらとも言えない(どちらとも言える)ものでした。ダンス公演との圧倒的な差は、顔と声の演技の在りかただったと思います。声を出す瞬間の俳優さんの状態が、ダンサーとは全然違うんですよね。何らかの感情が必ずその身体にありました。

 パンフレットに書かれた演出の木崎友紀子さんの言葉です↓
 ≪引用≫
 またツキムラはこう書いています。
 「世界では端的に言葉にできないことが沢山起こっている。」
 心の中でもそれは同様に起こっているはず。
 ただそれはエスカレーターの手すりのようにほんの少しスピードが違うだけなんだろう。
 ≪ここまで≫

 この「言葉にできないこと」を表そうとするのが芸術ですよね。ちょうど宮沢章夫さんが富士日記2に「言語化されないなにものか」について書かれていました。私が演劇などの舞台芸術のおかげで教わったのは、このことなのだと思います。
 ≪引用≫
 「人の会話は、ほんと、でたらめである。けれど人はなぜか、それでもコミュニケーションが取れている。なぜなんだろう。つまりそれが、「身体言語」というものだろう。人は「言葉」がなければコミュニケーションがはかれないと思いこんでいるが、それこそが「近代という病」である。別役さんが『ベケットと「いじめ」』で書いているのもそのことだ。」
 (富士日記2 12:51 Jun. 17 sun.「仕事を終えて、あるいは、<言語化されないなにものか>について」)
 ≪ここまで≫

 「言葉で表せるのは氷山の一角でしかない」と、チェルフィッチュの稽古場公開で岡田利規さんもおっしゃっていました。言葉では伝わらないことがあまりに多すぎて、しゃべればしゃべるほど後悔する・・・なんてことが、私の実生活の中で増え続けています(汗)。そんな時期にこの『スネークさん』に出会って・・・涙が止まらなかったのかな。まずはだまって、にっこりすること。それでいいんじゃないかって今は思います。

出演=井上三奈子 川隅奈保子 工藤倫子 申そげ 鈴木智香子 月村丹生 兵藤公美 松田弘子 田畑真希(フリー)
演出=木崎友紀子 作=ツキムラニホ 照明=岩城保 音楽=やぶくみこ 衣裳プラン=ツキムラニホ カブリモノ=斎藤栄治 舞台監督=桜井秀峰 宣伝美術=京 当日運営=林有布子 撮影=深田晃司 制作=スネークさん制作部 総合プロデューサー=平田オリザ 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 企画製作=青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
アフタートークゲスト:6月20日(水)伊藤キム 6月22日(金)多田淳之介(東京デスロック)
予約・当日共 2,300円(日時指定・整理番号付・自由席)
http://www.seinendan.org/jpn/info/wakate070408.html

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Posted by shinobu at 2007年07月15日 12:05 | TrackBack (0)