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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年07月17日

NODA・MAP番外公演『THE BEE(ロンドンバージョン)』07/12-29シアタートラム

 日本バージョンに続いて、ロンドンバージョンも拝見してきました。いや~・・・怖かったっ!!!めっちゃ面白い!と思いながら、超おびえました~・・・。今回もやはり、贅沢な体験でした。上演時間は約1時間10分。なぜか日本版よりもずっと長く感じたな~。

 役者さんは皆さん素敵。野田さんは日本版同様に素晴らしい演技を見せてくださいました。

 ⇒当日券情報:電子チケットぴあ当日券専用ダイヤルです。
 ⇒CoRich舞台芸術!『THE BEE

 ≪~Story of THE BEE~≫公式サイトより。
 1970年代の東京。 平凡なサラリーマン・イドは、息子の誕生プレゼントを手に家路を急いでいた。
 自宅に近づくと、警官たちが非常線を張り、マスコミのリポーターたちが押し寄せている。
 聞けば、脱獄犯・オゴロが民家に押し入り、女と子供を人質にして立てこもっているらしい。
 「どこの家だ?」と思った途端、リポーターたちがマイク片手にイドを取り囲んだ。
 リポーター 「イドさんですか? イドさんですか? 今のお気持ちは?!」
 マスコミからは苦悩する犠牲者の姿を演じることを求められ、頼るべき警察は高圧的で無能な連中・・・。
 ある瞬間から、被害者であるイドは、残虐な加害者へと姿を変え、常軌を逸した行動へとひた走る。
 そして、報復の連鎖の行き着く果てにあるものは・・・・・? 
 ≪ここまで≫

 赤いつるつるした床。壁はマジックミラー。日本版の“紙”とは全く違う世界が、シアタートラムに生まれていました。それだけでちょっと興奮しちゃいましたね、私。登場するのが英語を話すイギリス人だったことにも、わくわくしました。なんか・・・勝手に、すごく、嬉しかった。日本版、イギリス版と続けて観たことで、いろんな意味で視野が広がった気がします。どちらが好きかというと・・・私はロンドン版かな。この刺激が好き。

 井戸を女(キャサリン・ハンター)が、ストリッパーを男(野田秀樹)が演じていることで、性的な暴力がさらに激しく感じられたのが意外で、刺激的でした。野田さん、きれいだったわ~・・・そしてセクシーでした。ハンターさんとの呼吸がすごく合っていたように感じました。いや、それは全キャストについてかも。自立した大人が舞台という嘘の世界で、全身全霊かけて本気の嘘をついていた、というのか・・・。成熟の空間でした。

 身体がガクガクして、思わず声が出てしまいそうになるぐらいショック(っていうのかな)を受けたり、何かに気づいて愕然としたりする瞬間が何度かあり、その度に意味不明な涙が流れたりして、かなり疲れました(苦笑)。だから突然ねむけに襲われたりも・・・。ヘンな客だな、私。

 作品中は終始ひきつり気味の表情だったハンターさんが、3度目のカーテンコール以降に見せた笑顔にも感動。「あぁ、ようこそ、日本まで来てくださいました。長い期間滞在して、濃密かつ上質なステージを見せてくださって、本当にありがとうございます」・・・っていう感謝の気持ちで胸がいっぱいになった帰り道でした。

 ここからネタバレします。

 一番ぞくっと来たのは、小古呂の妻(野田秀樹)が最初に蜂の羽音を声で表現した時。日本版では映像で巨大な蜂が出てきたんですけど、ロンドン版では野田さんの声だけでしたね。井戸(キャサリン・ハンター)がその音に反応し、実際には見えない(存在しない)蜂に過剰におびえる姿が、なんともいえない異常なムードを持っていました。声と演技だけで舞台空間に異物が現れ、そのせいでこれまでに作り上げたストーリーと空気に瞬間的な断絶が起こったように感じ、しびれました。

 そして(順番は前後するかも)、礼儀正しかった井戸(ハンター)が小古呂の妻(野田)に邪険にされて、被害者から加害者に変身する、そのきっかけとなる感情が生まれた瞬間!あの時の、ハンターさんの、顔!身体!ものすごい説得力でした。

 セリフのない繰り返しのシーン(井戸が女を犯し、子供の指を切る)で流れていたのは、オペラ『蝶々夫人』第2幕で蝶々さんがピンカートンを待っている時の音楽だったんですね。「あぁ、これは蝶々さんだ!」と気づいた瞬間、ぶるぶると震えが来てしまいました。だって・・・怖い。恐ろしいよ。行われていることは『蝶々夫人』とはかけ離れていて、だけど“待つ”という意味では共通している気がして、肩ががくがく震えました。

 日本版・ロンドン版に共通して使われた、あの「刺す~♪刺す~♪」という強烈な曲は、ハチャトゥリアン作曲「剣の舞」におバカな歌詞をつけた「剣の舞」(尾藤イサオ&ドーン)by おバ歌謡 だそうです(「かんげきゆうの観劇三昧」より)。てゆーかこのCD、持ってるな、私。衝動買いしたのを思い出した。1回聴いたっきりだ・・・(苦笑)。

~筒井康隆 原作「毟りあい」(新潮社)より~(英語上演・日本語字幕あり)
出演:キャサリン・ハンター(Kathryn Hunter)/トニー・ベル(Tony Bell)/グリン・プリチャード(Glyn Pritchard)/野田秀樹
原作:筒井康隆 脚本:野田秀樹&Colin Teevan 演出:野田秀樹 美術・衣裳=Miriam Buether 照明=Rick Fisher 音響=Paul Arditti プロデューサー:北村明子 プロダクション・マネージャー=Nick Ferguson 演出部=Sarah Buik Lizzie Wiggs 奥野さおり 劇場プロダクションマネージャー=山本園子 照明助手=Christoph Wagner 劇場照明=三谷恵子 照明操作=武井由美子 音響助手=Ross Chatfield 音響操作=遠藤憲 衣裳スーパーバイザー=Jackie Orton 字幕製作・機材=(株)イヤホンガイド 国際貨物輸送=ケイラインロジスティックス(株) 技術通訳=大島万友美 法務アドバイザー=福井建策(骨董通り法律事務所) 制作協力:SOHO TEHATRE 劇場協力=高萩宏 穂坂知恵子 矢作勝義 三上さおり 提携:世田谷パブリックシアター 企画・製作:NODA・MAP
5/13発売 6500円
http://www.nodamap.com/

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Posted by shinobu at 2007年07月17日 23:42 | TrackBack (0)