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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年07月20日

tsumazuki no ishi『犬目線/握り締めて』07/19-23ザ・スズナリ

 スエヒロケイスケさんの脚本を寺十吾さんが演出されるtsumazuki no ishi(つまづきのいし)の公演は、年1回ペースだそうです(過去レビュー⇒)。

 妥協のない現代群像劇でした。上演時間は約2時間30分(休憩なし)。つ、疲れた・・・。でも、登場人物一人一人の背景をしっかり描くには、それぐらいの時間が必要だったのかもしれません。

 ⇒CoRich舞台芸術!『犬目線/握り締めて

 舞台は古びた団地のエレベーターホール。コンクリートの壁に囲まれた、じめじめした空間です。遠近法で斜めになった柱や天井のハリなどのおかげで、奥行きが広く見えました。照明がかっこ良かったな~。
 コンクリートに囲まれた空間で声が反響する効果があったり、セミの声、救急車のサイレンなど、音には深いこだわりを感じました。

 登場人物のことを少しずつ知れば知るほど、「えええぇぇ~・・・(ちょっと引きつつ、びっくり)」みたいな、肌がひりひりするような切迫感のある、暗い作品でした。でも、先が見えない、どん詰まりの生活が目の前に広がっても、「そこまで堕ちたらもう笑うしかないよね」って思って、プっと吹き出しちゃうことが多々ありました。
 演劇ならではの演出も面白く、ストーリーを追いかけるというよりは、シーンごとの空気を味わう観劇でしたね。小さな対話の一つ一つを大切にされているのだと思います。でも、できれば2時間ぐらいにおさめて欲しい・・・というのが、終演後の第一の感想でしたね。内容が濃いので余計にそう感じるのかもしれません。

 私は比較的前の方の席だったので、それほど問題にはならなかったですが、後ろの方には役者さんの声が聞こえづらかったんじゃないかな~。意図的かもしれないですけど。例えば管理人室の中で話すのは、もうちょっと声を大きくしてもいいんじゃないかと思いました。

 ここからネタバレします。

 幼児への性的虐待の罪で刑務所に入っていた男(中村靖日)とその彼氏の警官(松原正隆)、夫に浮気されたせいで小学生の娘に家庭内暴力を振るうようになった精神科医(原千晶)、働かない父親、母親の介護をしない長男、コスプレ好きの管理人・・・箇条書きするだけで胸にウっとくるぐらい、濃いバックグラウンドを持った人物ばかりが登場します。ものすごい個性でしたね、一人一人が。

 アニメ「機動戦士ガンダム」のセリフを言って(猫田直)、それがどのキャラクターのセリフかを当てるという、ナンセンスなシーンがありました。セリフが全部ファースト・ガンダム(っていうのかな)のものだったような・・・?世代がかぶってるな~と思いながら楽しく聞きました。「ランバ・ラル!」とか(笑)。

出演=原千晶(ワタナベエンターテインメント) 寺十吾 釈八子 宇鉄菊三 猫田直 日暮玩具 杏屋心檬 松原正隆 太田晶子 鈴木雄一郎 岡野正一 松嶋亮太 中野麻衣 蒲公仁(個人企画集団*ガマ発動期) 中村靖日
脚本=スエヒロケイスケ 演出=寺十吾 照明=Jimmy((株)フリーウェイ) 音響=岩野直人(ステージオフィス) 舞台監督=田中翼 舞台美術=小林奈月 宣伝美術=立花文穂 宣伝写真=久家靖秀 舞台写真=nana 演出助手=岡野正一 制作=原田瞳 J-Stage Navi 企画・製作=tsumazuki no ishi 
【発売日】2007/06/01 前売り3500円、当日3800円(全席指定席)
http://tsumazuki.com/

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Posted by shinobu at 2007年07月20日 00:48 | TrackBack (0)