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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年07月27日

小指値『mrs,mr.japanease』07/25-30王子小劇場

 小指値(こゆびち)は多摩美術大学造形表現学部映像演劇学科出身の若者達のユニットです。最近の2作品(⇒)を観てすっかりハマってしまい、初日に伺いました。

 若くて元気で、自由!そしてかなりヤンチャ!(笑)

 上演時間は約80分の予定だったようですが、それより初日はちょっと長かったような(開演が遅かったのかもしれません)。劇場入り口の天井にご注意を。頭をぶつけそうになる人が多かったです。

 「ご新規同伴サービス」はじめ「TSUTAYAはわかってくれない上映会」や「こーじのスコーン」など、新しい観客サービスも面白いですね(詳細はこちら)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『mrs,mr.japanease

 ≪あらすじ≫
 高校時代に同級生だった男女4人が渋谷で待ち合わせる。もう遠い昔になった青春と、こんなはずじゃなかったかも?な現実を行ったり来たり。渋谷で遭遇した得体の知れない女から、あるものをもらってトリップ(?)もする。
 ≪ここまで≫

 ベニヤ板で囲まれたシンプルな四角い空間。王子小劇場の高さもうまく使っています。なんといっても装置の見どころはあの照明器具!GG公開2次審査でも話題になっていましたが、かなり高度な技術のようです。

 ダンスあり、ハプニング的な演出(サーカスみたいな・笑)あり、思いっきり長いセリフをしゃべるシーンもあり、な、パフォーマンス色の濃い演劇作品でした。
 演じるのも語るのも踊るのも走るのも叩くのも脱ぐのも、同じ価値として舞台にあったように思います。それが楽しくて刺激的でした。予想外のことが起こるのが嬉しくってたまらないですね。「舞台って自由自在なんだな」って、笑いながら再確認する気持ちでした。

 白人女性キャストが1人いらしたんですが、ちょっと驚いたのは最初だけで、すっかり馴染んでいました。エンピツ君のインパクトも凄かったしな~(笑)。一人一人の個性が何とも混ざらないほどヴィヴィッドだったんでしょうね。

 クラブ(旧称ディスコ)のシーンで全員が飛んで跳ねて自由に踊っているのを見て、こっちが楽しくなっちゃった。こういうことって珍しいと思うんです。“クラブのノリで踊るだけ”みたいなシーンは、舞台上の人ばかりが楽しそうで観客が取り巻きファンみたいになっちゃうことがあるんですよね。それが小指値には全然なかった。媚びない、だけど、えらそうじゃない。この存在の仕方がものすごく気持ちいいです。“自由”って、野放図だとか、勝手気ままだとか、他の色んな言葉に翻訳できますけど、そこに一人で立っている自分を肯定するという責任感が、小指値の核になっているのかもしれないと思いました。

 初日はまだまだ模索中のようでしたし、毎日どんどこ変化・進化していきそうですが、どの段階で見ても楽しめると思います。舞台芸術初心者にも体験してもらいたい、新しい気軽な演劇かもしれません。

 ここからネタバレします。

 山崎皓司さんが火をいっぱい使ってびっくり(笑)。しかもかなり危険(苦笑)。火吹くしジャンプするし便所になるし、しなやかな肉体とはこのことだ。

 未来から2匹のハチ公像の間を通ってタイムスリップしてきた女(篠田千明)の存在が、説明的になっていたことはちょっと残念でした。彼女から「モテる錠剤」、「過去に戻れる錠剤」などをもらった若者たちが、そのクスリの効能どおりにトリップします。でも別に錠剤がなくてもそのままイっちゃってOKだったんじゃないかな~。また、終盤は登場人物それぞれの現在について説明するシーンが、暗転を挟んで順番に上演されました。まるで「フツーのお芝居」のようになって、もったいない気がしました。ブっ飛んだまま、浮遊して、スライドして、突然消えて、生まれて・・・何でもOKだと思います。

 最後は「『魅力もなくって、価値もないダメ人間の私なんだけど、それでもやっぱり私のことを見て欲しい、愛して欲しい』・・・なんて思ってるんだろ、そんなヤツ死んぢゃえ!」みたいな言葉を、面と向かって相手に突き刺して終幕。ん~・・・そういう終わり方にするなら、その前に浮遊感および祝祭ムード満点のシーンとかがあって欲しいなと思いました。今回はそういうぐぐぐ~~っ!っと盛り上がってトんでイっちゃうシーンが、絶好調になる前にしぼんでしまうことが多かった気がします。もっともっと上まで!

『mrs,mr.japanease』なのか『mrs mr japanease』なのか正式なタイトルは不明。
出演=天野史朗、大道寺梨乃、中林舞、野上絹代、山崎皓司、NAGY OLGA、篠田千明
作:小指値 演出:北川陽子 ドラマドクター:篠田千明 美術:佐々木文美 衣装:藤谷香子 照明:上田剛 音響:篠田千明 振付:野上絹代 調理:山崎皓司 宣伝美術:天野史朗 写真:加藤和也 制作:辻村優子 山本ゆい 舞台監督:山本ゆい(mon)  協力:石田亮介 木元太郎
□「TSUTAYAはわかってくれない上映会」28日(土)16:00~/東京デスロック「再生」(30分)/16:40~ ハイバイ「ヒッキー・カンクーントルネード」(80分)/29日(日)16:00~ ハイレグジーザス「VOONOO you , jesus me」(75分)
□「こーじのスコーン」30日の楽日には小指値のシェフ修行中、山崎皓司が作るスコーンを各回限定30個で配布します。
【発売日】2007/06/17 前売:2000円 当日:2500円 (全席自由)
http://www.koyubichi.com/

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Posted by shinobu at 2007年07月27日 15:11 | TrackBack (0)