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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2007年08月11日

La Compagnie An『御母堂伝説(ごぼどうでんせつ)』08/03-08シアターイワト

 女優の明樹由佳さんと西山水木さんが1999年に結成したパフォーマンスユニット・La Compagnie An(ラ・カンパニー・アン)。明樹さんと西山さんのことは何度か舞台で拝見していましたが、La Compagnie An作品は初めて。

 上演時間は約1時間55分。久々に最前列の桟敷席で死ぬかと思いましたが(苦笑)、涙が溢れて止まらなくなるシーンも沢山あり、この作品を体験できたことの喜びで胸が一杯になる家路でした。

 韓国人のJung TaeHyoさんの音楽(DJスタイル)が素晴らしく、同じく韓国人の俳優兼ダンサー・Kwon YoungHoさんにもすっかり見とれてしまいました~。ほんと、すごかった。

 ⇒CoRich舞台芸術!『御母堂伝説
 レビューをアップしました(2007/08/30)。

 最初にサミュエル・ベケット作『ゴドーを待ちながら』を知らないお客様をステージに呼び出して、個別に戯曲の意味を教え始めました。・・・どうしたらいいのかよくわからない雰囲気でした。最前列で耳をそばだてて内容を聞く限りでは、かなりいい加減な気がしたので(笑)。で、説明が終わったか終わらないかもよくわからない状態で勝手に開幕。元気いっぱいに「うん、不条理!」ってことかな、と♪

 エスニックなムードのちょいと露出の激しい衣裳を着たピチピチの女優さんたちが、元気に歌って踊って演技して、なんだかわかんないんままに白熱して盛り上がっちゃいます。だって音楽(DJ)が超~素敵だし!でも伝わってくるのは、すっかり狭くなった地球を漂流する私たちと、戦争を経験した私達のご先祖様とのつながり。

 記憶が定かでない部分もあり、下記はシーンの順番が前後してると思います。セリフも完全に正確ではありません。お許しを。

 戦争を経験した女・オソボ様(西山水木)は言います。
 「血は受け継がれるのに、私の気持ちは? aporogize(謝罪)でもなくregret(悔恨)でもない、私のこの気持ちは(受け継がれているの)?」
 ・・・この言葉だけで涙がこぼれました。

 今を生きる若い女たちが、腕を伸ばして手に持った携帯電話を宙にかざすシーンがありました。「気持ちは伝わるよ」と言っているような気がしました。私もそう信じています。
 でも後でこんなセリフ↓を群読するところもありました。これまた泣けちゃった。
 「自分に降りかかってくるまで、私達は気づかない。」「いつ、私の子供(息子)は(兵隊に)取られたの?」

 ホトエ(立花あかね)が喫茶店で彼氏(向後信成)にこっぴどくフラれるシーンのマンガチックな演出には爆笑でした。恋敵(多田直子)に「泥棒ネコ!」「メスブタ!」など、ステレオタイプな罵詈雑言の連発(笑)。そういえば何のシーンだったかは忘れましたが、「プロセニアム!」「アヴァンギャルド!」と、明らかにヘンな状況で叫ぶのもサイコーに可笑しかった。

 男にフラれてパリに演劇留学したホトエが、同じ留学生の韓国人男子(役名失念・クウォン・ヨンホ)と出会います。はじめましての挨拶をして"I'm Korean, too!"と言われたホトエは「tooって?」と驚きます。すると返事は「だって同じアジア人でしょ」。悲しい歴史がある日本と韓国だけど、ヨーロッパに来たら同じアジア人だ。同じ人間だ。

 演劇学校に来たけどフランス語もおぼつかないし、「一体私は何やってんだろうな」と悩むホトエに対して、韓国人留学生が応えたのは、
 "Here is my body. Body is theatre!" 
 あぁ、ヨンホさんが言うとなんて説得力があるんだっ!「ここにある身体そのものが演劇だよ」って。人間は身体で何もかも生み出します。ものも作るし、恋もするし、命も生む。そしてその身体に、ご先祖様の記憶も入っているんですよね。

 明樹由佳さんとクウォン・ヨンホさんのペアのダンスシーン。明樹さんからヨンホさんが生まれて、ヨンホさんに明樹さんがもたれて、2人がぐるぐると絡み合い続けます。男女の交わりから命が生まれて、互いに支えあって生きて、また男女が出会って命が生まれる、その繰り返しのようでした。生まれる命、支える命。涙が溢れて止まらなかった。まさに身体が演劇だった。

 そのBody(身体)を持って、ホトエは元気に母(明樹由佳)の待つ家に帰ります。「ただいま!」
 オソボ様「いつもあなたの帰りを待っている母親が“お国”だとしたら、“お国”があなたの死など望むはずはない。」
 ホトエと韓国人留学生が熱いキスを交わしました。私の中では完全に祝祭ムード。過去と現在という縦軸と、日本と韓国(世界)という横軸が、同時に繋がったように思いました。

 涙が出るほど感動したところを書いてみましたが、退屈したところもいくつかありました。たとえば留学から帰ったホトエが、日本で待っていた劇団員に不条理演劇について解説するシーンとか。理由は・・・たぶん演技、かな。桟敷席でつらかったのもあり、「絶対に必要だ」と思えるシーン以外は急に不機嫌になっちゃいました。すみません。

 クウォン・ヨンホさん。冒頭でも書きましたが、めっちゃくちゃ素敵な男優さん・ダンサーさんでした。写真あり⇒(清木場直子さんのブログより) あのー・・・こんなこと書いちゃうと「しのぶアホちゃう?気が触れたか?」って言われてもしょーがないと思うんですが・・・久しぶりにね、「抱かれたい」って思ったねっ!!!(爆笑) だってすげーよ、あのジャンプ!マッチョなのにはちみつみたいな甘い笑顔するし!もー・・・奇跡ですねっ(←ひとり興奮)。いや、ミーハーな気持ち抜きでも、必見のアーティストだと思いました。“劇団旅行者”観に行きたいよ。

 ホトエの彼氏を横取りする役(ヒメ?)などを演じられていた、多田直子さんの演技が面白くて、きれいでした。※お名前を間違ってたらすみません。

御母堂伝説-Waiting for GOBODOT-
出演=明樹由佳・立花あかね・清木場直子・西山水木/Jung TaeHyo(チョン・チヒョ/DJ.TEYO)/Kwon YoungHo(クウォン・ヨンホ/劇団旅行者 Yuhangza)/清田直子/竹田まどか/入交恵(ラズカルズ)/成本千枝/蜂須みゆ(elephant heat)/多田直子/向後信成(ヒンドゥー五千回)
作・演出=西山水木 音楽=-electric music & DJ-:Jung TaeHyo (DJ.TEYO)/-倭唄-:吉良知彦(ZABADAK) 振付:明樹由佳
【発売日】2007/08/01 3,500円 全席自由
http://a-n.fem.jp/

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Posted by shinobu at 2007年08月11日 22:07 | TrackBack (0)