REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2007年10月21日

燐光群『ワールド・トレード・センター』10/20-11/06ザ・スズナリ

 坂手洋二さんの新作です。副題は「WORLD TRADE CENTER as in Katakana(カタカナのワールド・トレード・センター)」。2001年9月11日に姿を消したマンハッタンの高層ビル群。

 私はあの日、口をあんぐり開けて立ったまま、テレビで何度も繰り返される映像を見続けていました。何が起こったのか全然わからなくて。そして今もわかっていなかったのだと、このお芝居を観て気づきました。次から次に涙があふれてきて止まらなかった。

 上演時間を失念。たぶん2時間15分(休憩なし)ぐらいだった気がします。
  ↑これで合ってるみたいです(2007/10/22)。
 終演後にトークがある日は既に混んでいるそうです。ご予約はお早めに!
 ツアースケジュール:東京、伊丹、岡山、北九州、名古屋、金沢、川崎

 ⇒CoRich舞台芸術!『ワールド・トレード・センター

 マンハッタンに暮らす日本人が体験したワールド・トレード・センターの倒壊を、起こった事実に即して描きます。長い、長い1日を。
 パンフレットには「2001.9.11その日の出来事」「マンハッタンの地図」「用語集」「参考文献」などの情報がぎっしり。開演前にこれを読んだだけでも目頭が熱くなってしまいました。でも「この作品はフィクションです」との注意書きもあります。この作品は911の真相究明を目的にしているわけではないんですね。
 
 あの時あの場所にいた当事者たちが何を見て何を感じたのかを、目の前で生きている人が語ってくれました。身体がガクガク震えて、胸がしめつけられて、恥ずかしいぐらい涙をぼろぼろこぼして、遠い遠い街で3000人もの方が亡くなったあの出来事が、肌で感じられる、体温をともなった記憶になりました。
 あの時の私は何も出来なかったし、今も何が出来るというわけではないけれど、911を自分のこととして驚いて、ショックを受けて、悲しむことができたことで初めて、地に足のついた視点から911以降の世界を見ることができるような気がします。

 今はインターネットの普及でさまざまな情報が瞬時に無料で手に入ります。でも、何が本当で何が嘘なのかを教えてくれるわけではありません。例えば「アメリカ同時多発テロ事件」についてのWikipediaを参照しても、「アメリカ同時多発テロ事件陰謀説」というページもあるのです。際限なく降り注がれる文字・写真・動画の中に真実があるとは限らないんですよね。
 自分の心に響く情報を慎重に集めて、勇気をもって真実を見つけていきたいです。いや、真実なんて見つかるものじゃなくて、信じるしかないものなのかもしれませんが。だから私はいつも演劇に触れて物事を知っていくようにしているんだと思います。

 最近の私は役者さんの演技に特に注目していて、演技に納得できないせいで作品全体が楽しめなかったりするのですが、この作品についてはそういうことは全く気になりませんでした。演技の種類は私の好みではないんですけど。

 ここからネタバレします。

 登場人物らが演劇のワークショップ(エクササイズ)をするシーンがありました。少々唐突にも感じましたが、私はそういうことが日常になって欲しいと思っているので、嬉しくもありました。

 ダンボール箱の中に入って瞑想することで、現場にいる編集者と事務所に残っている見習いが通じ合ったり、ワークショップで未来に起きることを予言し合ったり、現実から離れた世界が生まれるのが面白かったです。照明や音響などの演出をもっと加えてもいいんじゃないかと思いました。

WORLD TRADE CENTER as in Katakana 燐光群創立25周年記念公演
≪東京、伊丹、岡山、北九州、名古屋、金沢、川崎≫
出演=大西孝洋、中山マリ、猪熊恒和、向井孝成、秋葉ヨリエ、小金井篤、小宮孝成、嚴樫佑介、江口敦子、武山尚久(Wキャスト)、鈴木陽介(Wキャスト)、伊勢谷能宣、樋尾麻衣子、久保島隆、ED・VASSALLO、川中健次郎、杉山英之、安仁屋美峰、吉成淳一、阿諏訪麻子、西川大輔
作・演出=坂手洋二 美術・衣装=伊藤雅子 照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響=島猛(ステージオフィス) 舞台監督=森下紀彦 演出助手=清水弥生 翻訳=須藤鈴・秋葉ヨリエ・ED・VASSALLO イラスト=沢野ひとし 宣伝意匠=高崎勝也 制作=古元道広・近藤順子 主催・企画製作:燐光群/(有)グッドフェローズ
前売3.300円 ペア6,000円(前売・予約のみ) 当日3,600円 大学・専門学校生3,000円 高校生以下2,000円 (学生券は前売・当日共通料金 劇団の電話・e-mail予約のみ 受付で要学生証提示)
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。ご了承下さい。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2007年10月21日 15:18 | TrackBack (0)