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2007年11月09日

【写真レポート】わらび座『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」』制作発表11/07風林会館(新宿区歌舞伎町)

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風林会館入り口

 9月にたざわこ芸術村に伺ったご縁から、わらび座の新作ミュージカル『火の鳥~鳳凰編』の制作発表記者会見にお邪魔致しました。

 東京公演は新宿文化センターリニューアル記念&新宿未来特使アトム5周年記念ということで、新宿区長も登壇者として出席されていました。

【手塚治虫生誕80周年記念『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」』】
 上演期間は2008年4月から2010年3月まで、北海道、東北、関東、東海、関西、九州の全国をめぐる300ステージが予定されています。来年3月28日~29日にパルテノン多摩でプレビュー公演があり、4月25日から新宿文化センターで初日の幕が開きます(5月4日まで)。

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登壇者全員写真

【登壇者からのご挨拶】※話された順
■わらび座代表・是永幹夫氏
 「わらび座は創立から56年間、“いのちの火をともし続けること”、“人間の再生”をミッションとし、伝統を大事に人間のいのちに関わるシリーズを上演してきました。「火の鳥」は私達がおよそ20年間あたためてきた企画です。わらび座のミッションの象徴となるこのミュージカルで、原作の精神をお届けしたいと思っています。」

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左から齋藤氏、宍戸氏、中山氏

■新宿区長・中山弘子氏
 「皆さまにお越しいただいたこの風林会館は、ご覧のとおり昔はグランドキャバレーだった場所です。みんながわくわくできる歌舞伎町を目指しています。こどもを含む多くの人々に、生きることの輝きを伝えたい。わらび座の皆さんと一緒に、全国ツアーの最初の公演地としてこのミュージカルを新宿から発信できることを嬉しく思っております。文化を発信できる町・新宿としてがんばっていきます。」

■演出・栗山民也氏
 「私がこの仕事を請けた理由は3つあります。1つは日生劇場で『火の鳥』を演出した時に、やりのこしたことがあったから。新国立劇場で『ブッダ』も演出したのですが、手塚さんの巨大な、とてつもないエネルギーに向かっていく大変な作業でした。2つ目は、音楽家の甲斐正人さんとオリジナル・ミュージカルを作ろうと随分前から話し合っていて、それがやっとかなうこと。3つ目については、2年前に秋田のたざわこ芸術村に行ったんですが、すごくいいところなんです。湖のそばの理想郷のような場所でゆったりと作品を作りたいと思いました。」

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左から是永氏、松谷氏、妹尾氏

■脚本・齋藤雅文氏
 「わらび座とは『棟方志功~炎じゃわめぐ』『義経-平泉の夢』に続いて今回が3度目になります。スケールの大きな話を大人数のキャストで大きな劇場でやると、皆さんもご存知の通り、かえって隙間風が吹くような状態になることが多い気がするのですが、わらび座では比較的少人数でぎゅっと凝縮したものができると思います。脚本についてはセリフより歌詞が多くなりそうです。大変な冒険であり挑戦です。新しいタイプの日本のミュージカルになるのではないかと思っています。」

■音楽・甲斐正人氏
 「わらび座とはこれが6本目になります。新しい形を目指して5作品を作ってきました。わらび座の役者さんと6年間がんばってきた集大成として、この作品を手がけたいと思っています。『火の鳥』はいわば宇宙と人に焦点を当てた人間絵巻。立体的な音楽が必要です。芝居と音楽とが密接に結びついたミュージカルにしたいです。日本の風土に根ざしたわらび座ならではの演劇形態を生かして、最後は太鼓で芝居が進む形を考えています。コーラスとセリフと音楽が一体となっていくような展開ができたらと思っています。」

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左から甲斐氏、栗山氏

■美術・妹尾河童氏
 「まず、わらび座が全国津々浦々まで公演をしていることに驚きました。ある地域では観客の方から「妹尾さんは舞台もやられるんですね?」と言われたんです。私が執筆した本を読んでくださっている方が観に来てくれたんですね(舞台は全国各地でいつも上演されるわけではないので)。『火の鳥』には、火の鳥を象徴として命の連鎖が描かれています。次の世代へと伝わっていくことと、その意味が描かれています。栗山さんと一緒に日生劇場で『火の鳥』を作りましたが、今回はまったく違うものが出来ると思います。がんばります。」

■手塚プロダクション社長・松谷孝征氏
 「新宿未来特使であるアトムですが、エネルギー切れで休んでいまして(笑)、今日は残念ながら来られません。
 今、手塚が生きていたら、ものすごく喜んでいると思います。自分の『火の鳥』がミュージカルになるなんて、しかもこんなに豪華なスタッフの方々によって。もちろん手塚プロダクションにとっても大変ありがたいことです。全国の皆様に、親子で観に来ていただいて、命の大切さをみんなで考えていただけたら、手塚にとっても幸せなことだと思います。」

■角川書店取締役・宍戸健司氏
 「秋田のわらび座にはもう10回以上行ってまして、所属している役者さんと酒を酌み交わすほどの仲になりました(笑)。(この後、手塚作品について発言されました)」

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左から中山氏、岡村氏、戎本氏

【出演者による歌】
 出演者3人(戎本みろさん、岡村雄三さん、中山城治さん)が『火の鳥』の船出を祝して、漁師の歌“どや節”を披露してくださいました。声が太くて掛け声も力強く、アカペラなのに迫力がありました。

 戎本みろ(えびすもと・みろ)さんは『火の鳥』の彫り師・茜丸役を演じられます(写真右)。
 戎本「私1人はちっぽけですが、皆さんと力をあわせて、今を生きる人たちにとって存在感のあるミュージカルにしたいと思っています。」
 端正な顔立ちで清潔な印象。悪心に染まった茜丸の表情が今から楽しみになりました。

【質疑応答】※一部抜粋
■記者「栗山さんに。このミュージカルの面白さは?原作の人気の秘訣は?」
 栗山「『火の鳥』の面白さは想像力だと思います。マンガの1コマから1コマへ移る間に隙間がありますよね。今の時代はその隙間が失われているように感じます。どうやって、その隙間を膨らませていくのか。手塚さんの漫画は、世界の真理や人間の実態をすべて描いているわけではなく、回答は個人が見つけるべきだと伝えています。観る人の心の中に火の鳥が現れるような、物語性にこだわらず、人の想像力を開く、音楽との出会いの舞台になる気がしています。」

■記者「栗山さんに。以前に手塚作品に関わった時に“やりのこしたこと”とは?」
 栗山「日生劇場の『火の鳥』ではレーザー光線を使って“火の鳥らしきもの”を出したんですが、もうひとつ、見えてこなかった。客席と舞台の摩擦の中に火の鳥が現れてくるのではないかと思っています。
栗山「人が問い続けるということを、もう一度見直さなければいけないと思っています。今はあらゆる人間をひとつのルールに閉じ込めていき、ジャンプしようとする人を阻害して、平均点を作る時代。そうじゃなくて、それぞれが人間とは、世界とはと問い続けること(が大切です)。手塚さんの作品は想像力のジャンプが1コマ1コマにあって、(読む者の想像力を)飛翔させてくれます。」

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わらび座編集「手塚治虫Оマガジン」

【オンデマンドマガジン「手塚治虫Оマガジン」】
 資料としてわらび座編集「手塚治虫Оマガジン」をいただきました。“このページは栗山民也、甲斐正人のお気に入りページです。”と紹介する形式で、手塚作品の約9エピソードが収録されていました。なんと誰でも好きなエピソードを選んで(用意された1200話より)本にできるんです!価格は1冊1365円(税込み)。いや~・・・驚きました。漫画はどんどんと新しい世界へと広がっているんですね。


わらび座『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」』制作発表
司会進行:劇団わらび座広報宣伝室長 押久保陽子

※注意を払って記事を掲載していますが、正確な情報は公式サイトでご確認ください。
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Posted by shinobu at 2007年11月09日 10:04 | TrackBack (0)