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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年01月19日

MU『愛の続き/その他短編(Bバージョン)』01/17-21 OFF OFFシアター

 ハセガワアユムさんが作・演出されるMU(ムー)の4本立て公演(2本ずつ交互上演)です。私はBバージョンを拝見。上演時間は約1時間50分。

 あらすじと登場人物紹介を詳しく公表してるのがスバラシ~ですよね~♪
 前回も1バージョンしか観られなかったので「今回こそ!」と思ったのですが、叶わず・・・(涙)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『愛の続き/その他短編
 レビューをアップしました(2007/01/21)。

 まず、チラシやWebサイトから伝わってくるMU(というかハセガワアユムさん)の姿勢に惹かれます。どろくさい印象を持たれがちな演劇界を軽快なリズムで闊歩し、ヘヘっと笑いを浮かべながらグサっと主張を突き刺して来るような、ちょっとしたヒール(悪役)っぽいスタイル。でも傲慢になって心を閉ざさしているわけではなく、観客からの「反射」(アンケート)をわくわくしながら求めている、そんな姿がかっこいいと思います。

 ただ、今回は前回ほどのポップさが感じられなかったのが残念。脚本は面白いな~と思うところがありましたが、役者さんの演技に信じられるところが少なかったです。前回はセリフの裏側で舞台の空気がぎゅるぎゅると動き出すのを感じられたのですが。

 俳優は、ひとことも話さず、動かず、ただ立っているだけで、今そこにある世界を表現できるものだと思います。だから個性が強いめの登場人物を揃えて、それぞれが少々大げさめに演技をするお芝居って、私はあまり得意じゃないんですよね。もちろん気にならずに観られる人には問題ないと思います。

 ここからネタバレします。

■『愛の続き(の続き)』
 出演:斉木まな/杉木隆幸/浅倉洋介/平間美貴/西山聡/福原冠

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 元カレ(佐倉)に呼び出された元カノ(松田)は、今カノ(花子)の相談を延々とされている。時折脱線し、昔話に花を咲かせてはいいムードになる二人を見ていた憲司(松田の友人)は、隣の席から「絶対ヤラれるぞ」と冷やかして来る。相談の内容は、漫画家の今カノが自分に熱烈なファンのストーカーがいると思い込んでいる妄想癖があり、その謎を解いて行くと病んでしまった原因が佐倉にあるのでないかと松田は突き止める。身に覚えの無い佐倉は過去の恋愛からヒントを得ようと「もう一度、ヴァーチャルでいいから彼女になって」と懇願するも、それは"またも"ヴァーチャル(漫画)と現実の鼬ごっこの入り口に過ぎなかった。
 ≪ここまで≫

 ある漫画家(杉木隆幸)の熱狂的なストーカー体質のファン(西山聡&福原冠)が、その漫画家の自宅に押しかけて、ドタバタの包丁騒ぎが起こります。その「ドタバタ」を無理やり起こしているように感じてしまって、あまり入り込めず。
 玄関のドアの処理の仕方が曖昧なのも気になりました。

■『5分だけあげる』
 出演:根津茂尚/浅倉洋介/松下幸史/辻沢綾香/西山聡/平間美貴/杉木隆幸/奥田史香

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 どこにでもある小学校のブッ壊れた6年2組の授業参観日。早朝の教室には小さなロミオとジュリエットの2人が「この街を出よう」と誓いあっていた。早朝の職員室では、副担任の小笠原が吐きながら電話の応対をしていた。担任の梶浦は珍しくさわやかな笑顔で登校し、全員が揃い次第、導火線に火をつけようとしていた。しかし学級崩壊の為、いつまで経っても出席者は2人より増えず、親子含めたった6人の授業参観が始まり、梶浦はいつもの口癖通り「みんなに5分だけあげよう」とゆっくり微笑んだ。
 ≪ここまで≫

 学校とPTAものの演劇は最近増えているように思います(例:『遭難、』『親の顔が見たい』)。とても身近で重要な、いまや抜き差しならない社会問題だからだと思います。またこの作品は、ジャセコという大型スーパーに吸収されそうな、さびれつつある商店街のお話でもあります。
 そこでおエライ常識を振りかざしながら裏では不倫三昧の両親、すでに精神が擦り切れてしまった教師、世界に絶望した小学生らを描き、今の日本のありのままの日常に肉薄しようとしているように感じました。さらに自分の意見も盛り込んでいるのも良いと思います。

 私はあらすじや設定などの前知識ゼロで観劇するタイプの観客です(それが好き)。目の前の役者さんおよび舞台装置などの演出で、その場にある世界を感じ取りたいと思っています。そういう意味で、どんな街のどんな学校の出来事なのかがわかりづらかったですね。セリフではしっかり説明されているのですが、役者さんの存在の仕方がリアリティに欠ける印象でした。
 例えば、小6のクラスになぜか生徒が2人しか出てこないのは、「学級崩壊しているから」でした。セリフでは語られますが、2人の生徒の演技からは“他の生徒の不在”を感じにくかったです。

 ここからネタバレします。

 教師(根津茂尚)は教壇に時限爆弾をセットして自爆テロをたくらんでいました。ふとどきな親たちが教室から出て行って自分1人で爆発を待っていたら、生徒(松下幸史)が入ってきてしまいます。その生徒も自殺願望があったので敢えて教室に戻ってきたのですが、教師が生徒を無理やり押し倒して引きずって、教室の外に連れ出します(爆発から生徒を守るため)。そして爆発音は鳴らず、暗転して音楽が鳴って終幕。かっこえーっ!これぞパンクだぜっっ!て思いました。

MU、大好評の濃過ぎる短編集公演、第二弾。 イアン・マキューアン原作の表題作をMUが完全超訳(ほぼ別物)
出演(A&B):斉木まな、寺部智英(拙者ムニエル)、足利彩(経済とH)、長谷川恵一郎(くろいぬパレード)、松下幸史(動物電気/乱雑天国)、福原冠(活劇工房)、杉木隆幸(playunit-fullfull)、辻沢綾香(双数姉妹)、奥田史香、浅倉洋介(風琴工房)、根津茂尚(あひるなんちゃら)、橋本恵一郎、平間美貴、西山聡(ブラジル)
作・演出:ハセガワアユム(MU) 舞台監督:松澤紀昭 照明:元吉庸泰(エムキチビート) 音響:岡田悠(SoundCube) 舞台美術:袴田長武+鴉屋 宣伝美術:イシイマコト(united.)イラストレーション:山田羽菜江 制作協力:佐藤希(Karte) 林みく(Karte)制作補助:新井真理子(Karte) 清水建志 内山容里子 藤岡美咲 本渡綾佳 マット前転 吉澤和泉 企画/制作・MU
【発売日】2007/11/23 前売・当日 2500円(全席自由・日時指定) セットチケット(全席自由・日時指定) [A][B]2枚セット販売 ※通常価格(2500円×2枚)5000円が→なんと3500円と非常にお得!リピーター割引:半券持参の方に限り、もう1バージョンを1500円で御覧になれます。17日のみ初日割引で2200円とナイスプライス!
http://www.mu-web.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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Posted by shinobu at 2008年01月19日 22:30 | TrackBack (0)