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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年03月06日

チェルフィッチュ『フリータイム』03/05-18 SuperDeluxe

 岡田利規さんが作・演出されるチェルフィッチュの新作です。SuperDeluxeでチェルフィッチュというと、再演の『三月の5日間』以来ですね。

 色んなメディアに大きく取り上げられている話題沸騰の公演初日は、当日券にも列が出来て熱気ムンムンでした。外国人が多かったですね。開場時間までに到着して、なんとかイス席をゲット(整理番号順入場・自由席です)。上演時間を失念。15分の休憩がありました。

 チケットはほぼ全て完売で、当日券は毎ステージ発行予定。ただし「立ち見もしくは入場できない可能性もある」とのことでした。4/4~5に北九州公演があります。

 ⇒CoRich舞台芸術!『フリータイム

 ファミレスの風景。ウェイトレスの西藤(さいとう)さんとお客さんと・・・。チェルフィッチュならではの若者言葉と脈絡がなさそうな身体の動き。語る対象を変えていく長い独白が続きます。『三月・・・』のようにラブ・アフェアや戦争、デモなどの刺激的な出来事が起こるわけではないので、全体的に淡々としています。

 装置が不思議で面白かったです。見た目がまず「あらら?」って感じで、役者さんが触ることでまた違う意味を持ちます(デザインはトラフ建築設計事務所)。衣裳も含めて全体的な色彩はおしゃれな東欧デザインっぽかったですね。ファミレスのイスとテーブルのはずなんだけど(笑)。

 「演劇」を観るんだという心積もりで観ない方が良い気がしました。もちろん「演劇」という言葉は人それぞれとらえ方が違うんですけどね。
 上手く説明できないのですが・・・ここに、自分が居ること。ここで、誰かと一緒に、ある話を聞いたこと。それが確かに、そこに、あったのだと思いました。そこに「時間」というものがあった、というか。逆に言うと、確かなものなんてそれぐらいしかないよねってことを、受け取りました。

 下西啓正さん(メガネをかけた男性)が左手を左胸の前あたりでぐるぐる回すのが、すごく面白かった。あと、安藤真理さん(ショートカットの女性)が片足を挙げる動作も(←細かっ!・笑)。

 ここからネタバレします(20080609加筆)。

 イスとテーブルが床に埋まっていました。パンフレットによると、床から50cmのところまでをバッサリ切り落とした形です。役者さんはその低いテーブルの上に乗ったり、もはや背もたれしかないイスに触りながら演技をします。それをイスだと思ってないのが面白いです。見たままそのものとして扱います。

 早番のファミレスのウェイトレスが、ほぼ毎朝来る常連客の女性と、自分をナンパしてきた2人の男性客について話します。常連客は出勤前の30分の自由時間を大切にしていて、その間は日記を書いています。その日記はペンでぐるぐると円を描き続けるだけの落書きのようなもの(ページが真っ黒になるまで円を書き続ける)。彼女はガンになってしまった父親が入院している病院に週1回は通っていて、最近よく一緒にゴハンを食べる男の人に、そのことを話そうかどうか迷ったりしています。

 でも中盤を過ぎた頃に「それは嘘です」って、突然誰か(山崎ルキノ)が言っちゃうんです。今まで舞台で語られてきたことが本当なのかどうかなんて、わからないって。もしかしたら全てはウェイトレスの想像かもしれない・・・。

 男になったり女になったり、誰かについて話している内に話題にのぼっている誰かになったりして、舞台上の役者さんはゆるやかに変身しながらも、存在はとてもヴィヴィッドに保たれています。彼らが語ってきたことが「嘘」だったことで、私はスーっと気持ちを後ろに引いて、作品の外郭を眺めるような気持ちになりました。

 最後に「フリータイムとは・・・」とはっきり意味を説明するようなセリフが用意されていたことに、少々驚きましたね。それを聞いて、生き生きと存在している役者さんが目の前に居ることや、誰かの無限の想像の世界の出来事や、個人的な悩み、自慢などなどをすべて含んだ「時間」が、今、ここに、ある、ということなのかなと思いました。・・・あれ?もしかするとこれは、細胞から宇宙、過去から未来、空想と現実、時間、空間・・・のすべてを、つまり“世界”を演劇で表現したってことなのかも・・・?んー、まだよくわかりません。でも、そうだとすると凄い。

 可笑しかったのは男2人がアフロ・ヘアの女性の話するシーンと、マイクを持って会話する3人(動かない女と会話する男2人)のシーン。照明もきれいでした。
 あと、男2人でファミレスに来てたスズキくんとアズマくんは、『三月・・・』の登場人物にもいましたね(笑)。

≪東京、北九州、海外≫ 
出演:山縣太一、山崎ルキノ、下西啓正、足立智充、安藤真理、伊東沙保
作・演出:岡田利規 舞台美術:トラフ建築設計事務所(鈴野浩一、禿真哉) 音楽:小泉篤宏(サンガツ) 照明:大平智己 音響:牛川紀政 舞台監督:鈴木康郎 制作:中西茜 但馬美菜子(プリコグ) 主催:チェルフィッチュ 国際共同制作:KUNSTENFESTIVALDESARTS08 Wiener Festwochen Festival D'Automne 企画・制作:precog
【発売日】2008/01/12 (日時指定 入場整理番号付き自由席)前売 ¥3,500 当日 ¥4,000 学生前売 ¥3,000(入場時に学生証を提示のこと)*セット券(フリータイム+特別イベント3/11)¥5800(プリコグWEBのみ取扱い)
http://chelfitsch.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年03月06日 00:48 | TrackBack (0)