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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年04月26日

ONEOR8『莫逆の犬(ばくぎゃくのいぬ)』04/17-27 THEATER/TOPS

 ONEOR8(ワンオアエイト)は田村孝裕さんが作・演出される劇団です。ココリコの田中直樹さんを主役に迎えていますが、ウケ狙い的なことはなく、真っすぐに作品を提示されたように思いました。
 “莫逆”とは“非常に親しい間柄”という意味(Yahoo!辞書)。なんとも皮肉な、でもなるほどと唸らせられるタイトルです。

 上演時間は約1時間50分。公式サイトからの予約は終了していますが、完全に売り切れというわけではないそうです。電話をすれば大丈夫じゃないかしら。当日券も出ています。明日で千秋楽。
 ※お問い合わせ ONEOR8:080-6577-1399

 ⇒CoRich舞台芸術!『莫逆の犬

 ≪あらすじ≫
 恋人(和田ひろこ)のアパートに引きこもっている男(田中直樹)の10年間。引きこもりといっても対人恐怖症などではないらしい。閉じこもっているのには、もっと重大な理由があるのだ。
 ≪ここまで≫

 舞台はアパートの居間。コンクリートの打ちっぱなしの壁に、必要最小限の簡素な家具。おそらく東京では典型的であろう若者の2人暮らしの風景です。人が訪れ、去って、淡々と時が過ぎていきます。

 物語の中心になるのは引きこもりの男と恋人、そして男の父親(小林隆)です。劇団員の皆さんの登場シーンが少ないのは少々意外でした。純粋に作品を重視した結果そうなったと考えると、ONEOR8という劇団が新たな一歩を踏み出したと言えるのかもしれません。

 最後の最後に「あぁ、そういうことだったのか」と腑に落ちました。残酷だけどこれが現実。人じゃない。犬なんだと。

  ここからネタバレします。

 男は恋人との結婚を反対されて逆上し、母親を殺してしまいました。自首せずに恋人にかくまってもらい、父親が2人分の生活費を毎月届けに来ます。母親が浮気をしていたことも、男の怒りが爆発した大きな原因です。
 仲むつまじかった2人ですが、時が経つに連れて恋人の心は変化し、数年目に家を出て行ってしまいます。残された男は部屋に閉じこもったまま、事件の時効を迎える前に餓死(おそらく)。ん~、こう書くとただただ救いがないですね(笑)。

 最後は父親がアパートに訪れて、玄関の前で「みづきちゃん、みづきちゃん」とすがるように吐き出す声で終幕(“美月”は恋人の名前)。飢えて動かなくなった息子にその声は届きません。何か(誰か)に頼りきって、逃げること以外に自分からは何もしなかった人生。上ずった情けない声が、父と息子の世界を象徴しているようでした。

 変化を拒む牢獄のような小さな部屋に、時々やってくる訪問者たち(スーパーの店員、サラリーマンなど)が、カラっとした笑いを運んでくれました。特に恋人の新しい彼氏(恩田隆一)が面白かったです。

出演:田中直樹(ココリコ)、野本光一郎、恩田隆一、和田ひろこ、冨田直美、冨塚智、平野圭、伊藤俊輔、関川太郎、小林隆
脚本・演出:田村孝裕 美術:中根聡子 照明:伊藤孝(ART CORE design) 音響:今西工 演出助手:河口高志 照明操作:三浦詩織 大道具:夢工房 小道具:高津映画装飾 舞台監督:村岡晋/藤林美樹 宣伝美術:美香(pri-graphics) 宣伝写真:山本圭ニ 票券:サンライズ東京 当日運営:安元千恵 制作=高田雅士 岡本愛子 椎名浩子 企画製作=ONEOR8
【発売日】2008/03/16 全席指定 一般前売3500円 当日3800円
http://homepage2.nifty.com/oneor8/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年04月26日 21:52 | TrackBack (0)