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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年10月24日

新国立劇場演劇『山の巨人たち』10/23-11/09新国立劇場 中劇場

 フランスから演出家ジョルジュ・ラヴォーダンさんを招き、イタリアのノーベル賞作家ルイジ・ピランデルロの未完の遺作を中劇場で上演するという、新国立劇場ならではの豪華な公演です。平幹二朗さんと麻実れいさんの競演も嬉しい。

 照明、装置、衣裳の色使いや、音の鳴るタイミング、大きさなどが刺激的。日本(東京)では出会えないものじゃないかと思いました。中盤でちょっと眠くなったりもしたんですが(すみません)、最後はすごく面白かったです。できたらもう一度観て勉強したい気分。上演時間は約2時間5分、休憩なし。

 ⇒平幹二朗インタビュー(会報誌The Atre 9月号掲載)
 ⇒CoRich舞台芸術!『山の巨人たち

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 世界から隔絶した山間に建つ一軒の別荘「ラ・スカローニャ」。この別荘の主は世界に絶望し隠遁生活をおくる魔術師コトローネ(平幹二朗)だ。ある日この別荘におちぶれた旅の一座がやってきた。伯爵夫人と名乗る主演女優イルセ(麻実れい)は正気と狂気を行き来している。劇団員は別荘に一夜の宿を借りた。その晩、彼らは夢の中に引きずり込まれ、幻想的な体験をする。翌朝コトローネは、劇団員たちにある提案をもちかけた。「山の巨人と呼ばれる二家族の結婚式の余興に芝居をしてみてはいかが」と・・・・。
 作家ピランデルロは34年ノーベル文学賞を受賞、その2年後に他界したが、この『山の巨人』は絶筆の未完作として世に遺されたのだ。今回、演出家ラヴォーダンはどのような“終わり”をこの舞台に用意するのか。
 ≪ここまで≫

 まずは装置にびっくり。そしてオープニングの躍動感が面白い。空間全体は厳かな印象なのに、笑いと恐怖が垣根なく混ざっている軽い雰囲気も新鮮です。劇団が山中の魔法の世界へと迷い込む奇想天外なストーリーで、ついていくのに一苦労(笑)。でも、語られた言葉をその時に、そのまま受け取るだけでいいんじゃないか、とも思いました。会話がとてもうまく成り立っていて、役者さんは凄いなと思いました(演出家の手腕かもしれませんが)。

 平幹二朗さん演じるコトローネの長ゼリフ(本当に長い!)でとても大事なことが語られていて、ゆっくり話してくださる平さんの言葉を、ひとつひとつ意味を確認するように聞きました。あー戯曲本が欲しい。でもネットで検索する限りでは見つからないな・・・(ピランデッロ戯曲集⇒)。

 舞台のイメージ画(小劇場での公演時に、ロビーにあった宣伝パネルに貼ってありました)から和風の装置かと想像していたのですが、全然和風じゃなかったですね、すみません。舞台のあの曲線はかなりの勾配なんじゃないかしら。かっこ良かったです。

 ここからネタバレします。

 装置はいわば巨大な太鼓橋。空に炎のがのぼるような舞台奥の絵(?)が渋い。“夢”のシーンで出てくるガイコツの人形はホラーだけどコミカル。赤いドレスの女がポイントになって現代の抽象絵画みたい。
 麻実れいさんが生演奏に合わせて音楽劇のように歌いだすのも、大鷹明良さんがゆるりとステップを踏んで踊りだすのも、意外なタイミングでとても楽しかった。

 未完の脚本ですが、最後は遺言に書かれていたストーリーを字幕で説明してくれます。中央には伯爵夫人の人形。その周囲で歩いたり立ち止まったりする人々。伯爵夫人以外はすべてシルエットになっているのが美しくて、字幕が終わった後は吸い込まれるように見とれました。

 “山の巨人たち”はタイトルにもなってるのに結局登場しません。粗野で頭が筋肉質になってしまったという“山の巨人たち”って、一体何なのか・・・“国家権力”“集団暴力”とか??と考えたり。時々鳴っていた何かが崩れるような轟音は、彼らの音だったのかしら。夢(魔術師らの世界、そして劇場)を破壊しようとするような。

 “住民たち”のような観客にならず、夢の真実を信じられる子供のような観客でいたいと思いました。そして自分を好きだと言える人間にならなきゃ。じゃないと魅力ないですよね!(笑)

出演:平幹二朗 麻実れい 手塚とおる 田中美里 綾田俊樹 田根楽子 大鷹明良 植本潤 及川健 久保酎吉 渕野俊太 細見大輔 大原康裕 真織由季 佐伯静香 小春 澤田若菜
脚本:ルイジ・ピランデルロ 翻訳:田之倉稔 演出:ジョルジュ・ラヴォーダン 美術:ジャン・ピエール ヴェルジェ 照明:ジョルジュ・ラヴォーダン 音楽:久米大作 音響:黒野尚 衣裳:ブリジット・トリブイヨワ ヘアメイク:鎌田直樹 振付:夏貴陽子 演出助手:保科耕一 舞台監督:藤崎遊 芸術監督:鵜山仁 主催:新国立劇場
【発売日】2008/09/06 S席:¥7,350 A席:¥5,250 B席:¥3,150 Z席:¥1,500
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000062_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年10月24日 10:22 | TrackBack (0)