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2008年08月31日

【インタビュー】ロバート・アラン・アッカーマンさん(the company『1945』演出)08/22都内某所

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アッカーマンさん

 the companyの演出家ロバート・アラン・アッカーマンさん(通称:ボブさん)に、新作・世界初演『1945(イチ・キュー・ヨン・ゴー)』について、お話を伺いました。

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 ⇒CoRich舞台芸術!『1945

 ボブさんはアメリカ、イギリスでも活躍されている演出家で、テレビドラマや映画の監督もされています。日本語と英語の両方で読めるブログも人気ですよ!

■the company world premiere『1945
 原作:芥川龍之介「藪の中」
 脚本:青木豪  ロバート・アラン・アッカーマン
 演出:ロバート・アラン・アッカーマン
 【東京公演】10/25-11/03世田谷パブリックシアター
 【新潟公演】11/05りゅーとぴあ劇場

■戦争は嘘にはじまり、嘘に終わる

 しのぶ「芥川龍之介の小説『藪の中』をもとに、舞台を1945年・終戦直後の日本に置き換えて書かれた新作戯曲ですね。青木豪さん(グリング)とボブさんの共作であることも非常に興味深いです。」

 ボブ「第二次世界大戦の戦勝国の人間と、敗戦国の人間とが、一緒にあの戦争について1つの作品を作るということに、大きな意義があると思う。」

 ボブ「戦争は嘘によって始まり、嘘によって継続され、終わった後はもっともっと嘘にまみれる。嘘、嘘、嘘!! まったく嘘ばかりなんだ、『1945』の登場人物が語ることも実は嘘ばかり。誰にも真実はわからない。まさに『藪の中』だね。」

 ボブ「イラクで大量破壊兵器は見つかりましたか?答えは『NO(いいえ)』だよね。真珠湾攻撃の数日後、日本軍の上層部はこの戦争に絶対勝てないことがわかっていたのに進軍し続けた。そして膨大な、本当に膨大な数の人間が死んだ。戦争が終わったら、天皇は神じゃなくて人間だったなんて言うじゃないか。ひどい裏切りだ。日本人はあの戦争で、筆舌しがたい心の傷を受けたんじゃないかと思う。」

■ヒロインは中村ゆりさん

 ボブ「彼女の舞台は観たことがないんだけど(今回が初舞台なので)、映画『パッチギ!LOVE&PEACE』での演技が素晴らしかった。彼女は美しくて、強い。そしてオーディションの時に見せてくれた演技では、彼女は“今、何をしているのか”がわかっていた。とても賢い女優だと思う。」

 しのぶ「私も『パッチギ!LOVE&PEACE』は拝見しました。きれいで、すごく芯が強そうな女優さんですよね。舞台で(実物に)お会いできるなんて嬉しいです。」

■1940年代の映画をイメージ

 しのぶ「チラシは昔の映画を思い起こさせるデザインですね。今の東京の劇場ではあまり見ないタイプのチラシで、パっと目を引きます。」

 ボブ「おっしゃるとおり1940年代の映画、主にイギリスのものをイメージしてるんだよ。あの頃の日本映画もこういうビジュアルが多かったんだ。舞台美術のデザインも映画のスタッフにお願いした。今村力さんは私の映画『THE RAMEN GIRL(ラーメンガール)』で一緒に仕事をしたとても有能な人。期待していてください。」

 ボブ「『1945』はシリアスなだけじゃなくて、あの時代のgangsterたち(日本語だと“ギャング”、いわゆるところの“ヤクザ”だね)が登場する、エンターテインメントにもなっているんだ。セクシーなロマンスもあるサスペンス・スリラー。最後には政治的なメッセージも届けられると思っている。このチャレンジングな意欲作をぜひ観に来てほしい。」

■日本の演劇について

 しのぶ「日本の演劇について、ご覧になった感想やお考えをお聞かせください。」

 ボブ「日本で(日本人のオリジナルの)演劇を観ると、悲しい気持ちになることがある。戯曲を簡単に捨ててしまっている気がするんだ。戯曲とは、劇作家がそこに命を吹き込むように書くもの。一度上演されたらそれで死んでしまうのではない。再演されてまた息を吹き返し、生まれた国から外に出て色んな国で上演されることで、劇作家の手を離れて世界中で生き続けるものなんだ。日本の劇作家は多作すぎるんじゃないかな。」

 ボブ「若い日本の俳優は向上心があって、演技に対してとても真面目。これからもワークショップを続けて彼らと出会っていきたい。」

ボブさん's BLOG:http://ameblo.jp/ackerman/
the company:http://www.thecompany-t.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 20:22 | TrackBack

【写真レポート】the company「Robert Allan Ackerman Workshop 3rd」08/12都内某所

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アッカーマンさん

 the companyが主催するロバート・アラン・アッカーマンさん(通称ボブさん)のワークショップを見学させていただきました。⇒第1回の写真レポート ⇒第2回情報 ⇒『バーム・・・』稽古場レポート

 参加者の年齢層は17歳~50歳と幅広く、昼間と夜間の2クラスに約50名ずつ(合計101名)という編成でした。これまでで最も多人数ですね。関係者によると「応募が集まるのも今までで一番早いペースでした」とのこと。

 ワークショップのテキストは『橋からの眺め(A VIEW FROM THE BRIDGE)』。アメリカの劇作家アーサー・ミラーの戯曲です。今回は「本を読む」ことに重点を置いて、最初の数日間は戯曲を読み解くことにじっくり取り組まれました。その後、2人1組または3人1組のチームごとの実技指導に入ります。

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 8/12(火)の前半を1時間、後半を3時間見学させていただきました。第1回、第2回に比べると今回は、会場が違うのもあるかもしれませんが、ずいぶんと雰囲気が違いました。一見、静かで穏やかな稽古場に、参加者の熱意がひたひたと満ちています。わいわい、がやがやとしていないんですよね。その場に腰をすえて、じっくりと耳を澄ませる方が多いのではないかと思いました。参加者が工夫を凝らして作ってきた数分間の対話シーンをいくつも拝見し、その密度の高さを実感。

 ボブさんはいつもより早口で、通訳の珠麗さんの日本語とほぼ一体になったような進め方でした。2人で1人の人物のように見えてきて(すごい!)、それもまた稽古場の密度を高くしていたように思います。

 ボブさんが語った言葉で、私にとって特に大切だったものを下記にご紹介します。※写真は稽古場風景です。文章とは特に関係ありません。

■役を甘やかしてはダメ

 ボブ「日本人の俳優は、感傷の方に気持ちが行きやすいようだ。登場人物を醜くみせたり、嫌われたりすることから救いたい、役を愛されるものにしてあげたいと考える傾向がある。人物を甘やかしてはダメ。」

 ボブ「例えば『奇跡の人』のサリバン先生を思い浮かべてみてください。彼女は非常にタフ(強い)な人物ですよね。ヘレンに教育するシーンなんて、とても激しい。でも彼女のことを愛情のないひどい先生だと思いますか?むしろ厳しい方が愛情深い人物に見えるはず。だから、あなたの『こう見られたい』という欲望から、シーンを決め付けないで欲しい。」

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■自分の芝居にほだされるな

 ボブ「芝居をすることに恋をするな("Don't fall in love with your acting.")。自分の芝居にほだされるな。場面の中に居て下さい("Stay in the scene.")。コメディーでもシリアスでも、作品へのアプローチは同じ。演じる自分に酔うことなく、そのシーンの中に居続けた結果、可笑しい(悲しい)だけだ。」

 参加者「アネット・ベニングの言葉があります。『最も可笑しな瞬間は、最もシリアスなシーンでできている』と。」
 ボブ「その通りだね。俳優が一度『このシーンは笑えるんだ』と知ったとたんに、危険になる。笑いが来るはずのシーンで、全く笑いが起こらないことはよく起こる。それは俳優が『ここで観客が笑うぞ!』と準備をしてしまうから。」

■力ではなく、言葉を使って相手と関わる

 ボブ「今、(手をひっぱって)相手をイスに座らせる演技をしていましたね。自分の力を使って相手をねじふせる演技はしない方がいい。まず、現実でやっている人を見たことがないから。人は小道具じゃない。それに、相手役のイマジネーションを奪うことにもなる。言葉を使って相手と関わることができるように(なりましょう)。」

 講義終了後、閉館までの空き時間にそれぞれに稽古をする参加者たち↓
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★ボブさんへのインタビュー

 しのぶ「今回は今までのワークショップの中で、一番(指導が)厳しいですね。発表を途中で止められて、翌日に再度発表になったチームもいくつかありました。」
 ボブ「ああ、そうだよ。同じシーンについて何度も同じことを言う必要はないからね。参加者の人数も多いから、繰り返しは避けたい。the companyでのワークショップは今回で3度目。今までに何度も私のワークショップに来てくれていたり、いっしょに仕事をしたメンバーも増えたから、よりスムーズになったんだ。」

 しのぶ「参加者全体のカラーも前回までとは違いますよね。大人の、経験豊かな役者さんが多い気がします。」
 ボブ「参加者の約85%が『バーム・イン・ギリヤド』を観た人たちだったんだよ。『BENT』『Angels in America』を観たという人もいたね。the companyがどんな団体なのか(どういう作風なのか)を知っていて、それをやりたいと思ってる人が増えたからじゃないかな。今回は洗練された演技をする人が多いと思う。」

 しのぶ「今回のワークショップから次回作『1945』に出演される方はいらっしゃるんでしょうか?」
 ボブ「まだわからないけど、なるべく多く出てもらいたいと思ってるよ。」

 ボブ「今回も充実したワークショップになっていると思う。ワークショップが終わる度にとても残念な気持ちになるんだ。時間が足りない。定期的に、もっと長い時間が取れたらと、心から願っているよ。」

 10月に開幕する『1945』のメディア掲載情報が貼られたパネル↓ ワークショップが実際の公演と強くつながっていることが伝わってきます。⇒イープラス特集 関連記事⇒
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2008年8月4日(月)~15日(金)※9日(土)、10日(日)の両日は休み
Class.1: 13:00~16:00 (8/4~8/15)/Class.2: 17:00~20:00 (8/4~8/15) ※これら二つのクラスは同一内容。参加費:100,000円 テキスト:『橋からの眺め』 著:アーサー・ミラー
講師:ロバート・アラン・アッカーマン 通訳:薛珠麗 スタッフ:斎藤努 ほか 主催:ゴーチ・ブラザーズ
http://www.thecompany-t.com/workshop.php

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 12:14 | TrackBack