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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年07月20日

新国立劇場演劇『現代能楽集 鵺(ぬえ)』07/02-20新国立劇場小劇場

 鵜山仁芸術監督が坂手洋二さんの新作を演出する、新国立劇場・演劇2008/2009シーズンの締めくくりの1本です。世阿弥の謡曲をもとに妖怪“鵺(ぬえ)”を描く、三部構成の戯曲でした。

 出演者は歌舞伎俳優の坂東三津五郎さんをはじめ、田中裕子さん、たかお鷹さん、村上淳さんという、経歴も個性もさまざまな4人の役者さん。

 第一部で違和感に戸惑い、第二部でなるほどと納得し、第三部で再び奇妙キテレツな世界に連れて行かれました。そしてラストが・・・もの凄かった。強烈なお芝居でした。

 ⇒演劇「現代能楽集 鵺」お客様の声
 ⇒CoRich舞台芸術!『現代能楽集 鵺

 あまりに、何が何だかわからなくて、観ている時も、観た後も、頭の中で何もまとまらなくて、言葉が出ないことがあります。久しぶりにそんなお芝居に出くわしてしまったな、と(笑)。でも決して「面白くない」「つまらない」とは思いません。実際、舞台からずっと目が離せなかったですし。

 鵜山さんの感性というのか、世界観というのか・・・私には到底ついていけないところにあるのだろうなと思いました。来シーズンの『ヘンリー6世』三部作連続上演で再チャレンジします!(笑)

 ここからネタバレします。

 転換の時に流れるロマンティックなピアノ曲も、ものすごく不思議でした。日本およびアジアのお話なので、ぴったり合っているとは思えず(合う必要はないですが)。なぜあんなにムーディーな音楽だったのかしら。今となってはそのミスマッチが狙いだったのかもと思いますが。

【1.頼政と鵺】
 -源平合戦中の宇田川の縁。奇妙な鳴き声が聞こえる。すると、面をつけた女(田中裕子)が船にのってやってきた。

 源平時代の日本語がわかりづらく、村上淳さんのセリフが聞き取れなくて、ほとんどセリフが耳に入ってこない状態で鑑賞。でも誰が敵で、誰が困っているのかぐらいはわかりました。老武者・頼政(たかお鷹)が殺したトラツグミが、鵺(坂東三津五郎)となって現れたんですよね?第1部は死んだ動物が鵺になって、人間を襲うお話・・・かしら。

 大きな透明ビニールに動画が映写され、その奥で鵺になった坂東三津五郎さんが暴れ(?)ます。頭が猿なので、目の周りに赤いメイクをしているのが、私には可笑しくて・・・。歌舞伎っぽいのを狙ったのかしら。とにかく、笑っていいのか怖がっていいのか(笑)、どうしていいのかわからないまま、凝視していました。面白いとか面白くないとかじゃないんですよね、こういう場合。

【2.川向こうの女】
 -舞台は現代日本。男(村上淳)がいなくなった飼い犬を探していると、昔つき合っていた女(田中裕子)と偶然に出会う。
 第2部は捨てられた女が鵺になって、男に復讐するお話だったのかな。

 「火の用心」と書かれたちょうちんを持って、夜回りのおじさん(たかお鷹)がやってきます。この川は三途の川で、夜回りは鬼なんだなと思いました。第1部でもそうだったように、水と死がつながってるんですね。ガイコツの絵が描かれた丸い石が転がってましたしね。

 たしか天皇についてのセリフが沢山あった気がするのですが、第三部があまりに強烈だったので(苦笑)、忘れてしまいました。
 男と女のエロティックなからみが良かった。でも船がぐるぐる回るのはどうなんでしょうか、あれは笑っていいのでしょうか。ぬー、わからない!

【3.水の都】
 -アジアのある国で行方不明になった夫(たかお鷹)を探す女(田中裕子)。夫の部下(坂東三津五郎)とガイドの若者(村上淳)とともに、異国の地下の水脈へ。夫は日本企業の海外支社で働く裏で、臓器売買、人身売買などに手を染めていた。

 冒頭で、たかおさんが何種類ものパスポートを持ってげらげら笑いながら1人でしゃべっていました。全然意味わかんない!でもすっごく面白い!(笑)
 水上パペットショーとか、激しく動きまくる黒子とか、客席やロフト部分が演技スペースになったりとか。「一体どうしろっていうの!?」と戸惑いまくり。話に入っていけないんです。笑えないんです。でも、面白くないわけではないんです。こんな体験、なかなかできないです(笑)。

 最後の最後に、ものすごいシーンが用意されていました。なんと4人が物理的に合体するんです!体をくっつけて!肩車して!劇場全体がぐにゃりと曲がって、俳優と観客も合体し、すべてがべっとりとくっついて、“鵺”になったように感じました。

 第1部では動物が鵺になり、第2部では人間が鵺になり、第3部ではすべてが鵺になった、ってことかしら。他人の臓器を自分の中に入れたり、人間を売ったりしているんですものね。

2008/2009シーズン
出演:坂東三津五郎 田中裕子 たかお鷹 村上淳
脚本:坂手洋二 演出:鵜山仁 美術:堀尾幸男 照明:小川幾雄 音響:秦大介 衣裳:前田文子 演出助手:上村聡史 舞台監督:増田裕幸 芸術監督:鵜山仁 主催:新国立劇場
【発売日】2009/05/09 A席:5,250円 B席:3,150円 Z席:1,500円 ※料金は税込みです。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000067_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年07月20日 15:04 | TrackBack (0)