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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2009年07月22日

【写真レポート】新国立劇場演劇『ヘンリー六世』制作発表07/21オペラパレス・ホワイエ

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『ヘンリー6世』メインキャスト

 新国立劇場演劇2009/2010シーズンの幕開けを飾る、『ヘンリー六世・三部作一挙上演』の制作発表が行われました。演出は、新国立劇場・演劇部門の芸術監督である鵜山仁さんが自ら手がけます。キャストが30名以上勢ぞろいした豪華な会見でした。
  ⇒会見動画あり!「演劇情報サイト・ステージウェブ」(2009/07/24加筆)

 全三部作・9時間を一挙に上演するのは、翻訳の小田島雄志さんいわく「皆既日食を見るよりも難しい」ほど珍しいことだそうです。私も初めてなので、ラインアップが発表された時からすごく楽しみにしていました!

 毎回好評の<シアター・トーク>(11/3マチネ開催)をはじめ、<シェイクスピアとヘンリー六世展>、<新国立劇場のシェイクスピア作品の公演記録映像の一挙上映>、そして<シェイクスピア大学校・6回連続講座>の開講など、無料で楽しめる企画も盛りだくさんです。

 ●新国立劇場演劇2009/2010シーズン『ヘンリー六世』⇒特設サイト
  2009年10月27日(火)~11月23日(月・祝)
  第一部 「百年戦争」⇒CoRich舞台芸術!
  第二部 「敗北と混乱」⇒CoRich舞台芸術!
  第三部 「薔薇戦争」⇒CoRich舞台芸術!

 【チケット】
  一般発売日:2009年7/26(日)
  S席7,350円 A席5,250円 B席3,150円 Z席1,500円
  三部特別通し券(S席セット)は19,500円(定価22,050円のところ)
  ※劇場会員向けの前売りは始まっており、通し上演の日が人気だそうです。

■鵜山仁さん
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 鵜山「『ヘンリー六世』は取り澄ました王族の話ではなくて、ひとことで言えば「人間はなんて馬鹿だったんだろう」という三部作(笑)。人間の悪戦苦闘を描くことで、これから多少なりとも賢く生きていく知恵を実感できたら。私にとっては30年ほど芝居をやってきた蓄積の総決算、そしてこれからに向けての再出発になる作品にしたい。」

 鵜山「この劇場はひとことでいえば“みんなの劇場”。だから我々は、みんなに利用していただくためのサービスをしていきたい。稽古は8月から始まり、それから11月にかけては“開かれっぱなしの劇場”にします、“シェイクスピア大学校”など、無料でアクセスしていだけける仕掛けも準備しています。一人でも多くのお客様に足をお運びいただきたい。」


■小田島雄志さん
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 「私は『ヘンリー六世』を今までに一度しか観ていません。シェイクスピア・シアターの全作上演以来です。あの時の衝撃は今でも覚えている。翻訳している間は(Henry、Elizabethら同じ名前の登場人物が多い等、訳をすることが困難なので)よくわからなかったが、舞台を観ている内に、ものすごく面白い芝居だと気づきました。ざっと50年にわたる歴史のうねりが綿々と出てきて、登場人物がそれぞれのドラマをはらんで持ってくるのです。私は来年80歳になりますが、『ヘンリー六世』を観るのは2度目。皆既日食を見るより難しいんです(笑)。ぜひ多くの皆さんにご覧頂きたい。」


■浦井健治さん
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 「大先輩方に囲まれて、『ヘンリー六世』のタイトルロールをやらせていただけることを光栄に思い、同時にものすごくプレッシャーを感じています。9時間という壮大な演目であることも含め、初めてのことばかりで、何もかもが未知数です。今日までの数ヶ月は、鵜山さんにマンツーマンで稽古をつけていただきました。やればやるほど自分が不甲斐なくなり、これはヘンリーの気持ちにも通じるのかなと思っています。ぶちあたって、挫折しながら、そして皆さんのお力を借りて精進していきたいです。」


■中嶋朋子さん
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 「私はシェイクスピアもほとんどやったことがなく、しかも大作で、これだけの諸先輩方とご一緒させていただいて。とてつもない大海原に、小さなボートで漕ぎ出していくような気分です。楽しんでやれたらと思っていますが、まずは楽しんでやれる余裕ができるところまでいきたい(笑)。小田島先生がおっしゃるように、なかなか観られる作品ではないので、皆様に面白かった、観て良かったと言っていただけるものにしたい。」

■渡辺徹さん
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 「ある本に、生き物のサイクルとして、今の人間はそろそろ進化しなきゃいけない段階に来ていると書かれていました。進化とは欠点を補うべく先に進むこと。そして今の人間の欠点はというと、争いがベースになっていることらしいのです。争わないのが人類の進化した形態だというならば、『ヘンリー六世』は争いの話なので、むしろより人間的で、人間のいとおしさも哀れさも詰まっていると言えると思います。旧態然とした人間の魅力の総決算のような話。逆説的に言えば、これをやることによって進化していけたらいいのかなと。
 この作品は欲をむき出しにする芝居です。実は、去年の暮れに役作りのために痩せたんですが、また太ってしまったんです。欲を抑えきれなかったんですね。自分のそんなところを生かして(笑)、役に臨みたいと思います。」


■村井国夫さん
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 「私が俳優を志してから色んな舞台で観てあこがれたり、好きだったり、“こんな俳優になりたい”と思って見ていた諸先輩方が、(共演者の中に)沢山いらっしゃいます。『るつぼ』『美しきものの伝説』『薮原検校』など数多くの名舞台を作った先輩と、一緒にできることを光栄に思っています。自分も年を重ねておりまして、9時間という芝居で体力や精神力が持つかどうか、セリフをおぼえられるかどうか・・・ねえ○○さん(←壇上の共演者に話を振って。場内で笑いが起こる)。がんばっていきます。」


■ソニンさん
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 「ジャンヌ・ダルクを演じさせて頂きます。出演のお話をいただいた時にすごく惹かれたのは、私にとって初のシェイクスピアであること、3部作であること、そして大先輩に囲まれてお芝居ができること。また、ジャンヌにとって対戦国であるイギリスを舞台にした作品で、ジャンヌを演じられることに、すごく魅力を感じました。今の時代に伝わる、ジャンヌのメッセージを込めて演じることができたら。稽古場で足を引っ張らないようにがんばりたい。」


■上杉祥三さん
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 「今は亡きグローブ座カンパニーで、多い時は年間6~7本のシェイクスピア作品をやらせていただきましたが、この10数年はずっと機会がなかった。もう一生お呼びがかからないかもと思っていたら、鵜山さんおよび新国立劇場に呼んでいただき、しかもシェイクスピアの処女作ということで、心から感謝します。シェイクスピアのセリフは長いですし、覚えるのも大変。舞台上で1人でしゃべっている時のあの孤独感、寂しさ、苦しみたるや、俳優にとってこんなに大変な芝居はないんじゃないかと思ってます。でも、達成感も大変なもの。それをもう一度やらせてもらえることに感謝しています。」


■木場勝己さん
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 「芝居が3本分あるので・・・長いです。私の役は途中で死ぬのですが、稽古中に戦死しないように、生き延びようと思っています。ここのところ、(お芝居をやる際の)カンパニーでは自分が最年長のことが多くて、年取っちゃったな~と思ってたんですが、(周囲を見回して)ここではまだ若手でした(笑)。どうぞよろしくお願い致します。」


■岡本健一さん
 「私が演じるリチャードは生まれながら、というか、母親のお腹にいる時から神にも愛にも見放されたような役。残忍で残酷で、戦って上にのしあがっていくことにしか、喜びを感じないんじゃないかというぐらいに。今の世の中のすべての悪人や怪物等の原点のような気がします。リチャードはたくさん人を殺します。チラシの裏面にある全キャストの顔写真を見ながら、今回はこの人だ、次はこの人だ、残酷な殺し方をするのはこの人だ、とか(笑)。今は“草食系男子”とか言いますけど、リチャードは肉食。肉しか食べてないですね、もうひどい(奴)です。
 共演者に、客席で観て刺激を受けた人たちがいっぱいいて、本当に楽しみにしています。先ほど控え室では、膝が痛い、腰が痛い、剣が振れるのか、歯が取れた、とか・・・(笑)。そんな話を耳にして、なんて平和なんだろうと思って。でも、平和であるからこそ残酷なことができるし、復讐にも燃えられるんだと思います。稽古場では仲良く平和でいきたいと思います。」

 【出演者と演出家ら、登壇者の集合写真】
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■演出家への質問

 質問「今の観客にとって受け入れられる(受け入れやすい)点、面白い点とはなにか?」
 鵜山「出演者は合計37人ですが、2~3役やっていただく方も多いので、登場人物はもっともっと多くなります。それらの一人ひとりのものの見方、考え方が群像的に重なってひとつの世界をつくっている。ひとつの物事が、ある角度から見るのと別の角度から見るのとでは、全然違う世界になっているように。そういった多様性やバイタリティは、いつの時代も、より良く生きていくための力になるんじゃないかと思う。」

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 質問「演出において一番苦労してる、もしくはこれから苦労しそうな点は?」
 鵜山「僕は、自分の考え方や見方と全然違う表現に出合うと、カタルシスや快感を感じることがあります。『ヘンリー六世』には、今までの殻をやぶっていくような、ものの見方・考え方が、毎ページ毎ページ、1行1行のセリフにあふれている。一行一行でものの見方がひっくり返されていくのは、楽しいというか、途方も無いというか。それをどういう風に整理していったらいいのかが大変だと思う。一人で机の上で本を読んでいるのはそろそろくたびれてきたので(笑)、一日も早く稽古を始めて、×(かける)37以上の色んなものの見方、考え方を、ぜひ楽しみたい。」

 質問「時代設定や衣裳、装置などについて、演出面で決まってることは?」
 鵜山「中劇場をフルに使います。手前に池があって奥に平原が広がっている、世界そのもののミニチュアのようなセットの中で、今まで我々が蓄えてきた翻訳劇や芝居のイメージみたいなものを、色んな異相で示したい。ある意味ごった煮というか、トータルにイメージできるような世界にしたい。別の言い方をすれば、“ゴミの山の上でやっている『ヘンリー六世』”。歴史の積み重ねというのは視覚的に考えると、ある意味“ゴミの集積”であり“宝の山”であるという、矛盾したところがある。そういうものが積み重なって肥沃な土になったり、我々の精神を形作っている。時代をどう設定するかは、今、すったもんだしている最中です。」

 【写真左より:木場勝己/ソニン/村井国夫/中嶋朋子/浦井健治/渡辺徹/上杉祥三】
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 シェイクスピア、3部作連続、9時間上演・・・という難題に難題が上乗せされた、日本演劇界における世紀の大イベント。
 出演者、スタッフの皆さんと、9時間(休憩を含むと10時間以上?)の旅をぜひ共にしたい気持ちはあるのですが、私は恥ずかしながら体力が無い方ので、各部の初日を3連夜で鑑賞(10月27日、28日、29日)したいと思っています!

 シェイクスピア作品の公演記録映像は、演劇の中で唯一見逃している『リア王』(1998年上演/演出:鵜山仁/主演:山崎努)が観たい!日程は劇場サイトで発表されます。シェイクスピア大学校も無料なんて驚き!開講スケジュールは、上演とあわせて連続で参加できるようになっています(平日開催)。

【出演】浦井健治/中嶋朋子/渡辺徹/村井国夫/ソニン/木場勝己/中嶋しゅう/上杉祥三/立川三貴/木下浩之/久野綾希子/鈴木慎平/今井朋彦/金内喜久夫/菅野菜保之/勝部演之/鈴木瑞穂/岡本健一/吉村直/水野龍司/青木和宣/渕野俊太/那須佐代子/浅野雅博/小長谷勝彦/石橋徹郎/清原達之/城全能成/古河耕史/内田亜希子/前田一世/(記者発表欠席:関戸将志/篠原正志/小田悟/川辺邦弘/松角洋平/津村雅之)
【作】ウィリアム・シェイクスピア【翻訳】小田島雄志【演出】鵜山仁【美術】島次郎【照明】服部基【音響】上田好生【衣裳】前田文子【ヘアメイク】馮啓孝【アクション】渥美博【演出助手】保科耕一【舞台監督】北条孝【芸術監督】鵜山仁【主催】文化庁芸術祭執行委員会/新国立劇場
S席7,350円 A席5,250円 B席3,150円 Z席 1,500円 ●お得な三部作特別割引通し券S席セット:19,500円(正価22,050円)※お申込:新国立劇場ボックスオフィスのみ
※11月9日(月)、17日(火)は学生団体が入ります。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000543.html
http://www.atre.jp/henry/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年07月22日 14:01 | TrackBack (0)