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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年08月28日

東京芸術劇場『ザ・ダイバー 日本バージョン』08/20-09/20東京芸術劇場小ホール1

 野田秀樹さんの東京芸術劇場・芸術監督就任記念プログラムの第1弾(⇒記者発表)。昨年上演された英国版『THE DIVER』が日本バージョンとなって登場。上演時間は約1時間25分。

 すっごく面白かった!これぞ大人が満足できる上質の演劇!とにかく充実!そして幸せ♪ 英国版とは全く違った味わいでした。全席完売でなければメルマガ号外を出したいところです。

 当日券販売は全ステージ開演の1時間前より販売されています。現時点では早めに並ぶと入れる状況ではあるようです(日時によると思いますが)。
 劇場のすぐ近くで「野田、来たる。野田秀樹芸術監督就任記念展~」(写真↓は入り口)が開催されています。入場無料。ソワレ終演後でも大丈夫。9/6(火)まで。
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 昔のポスターがすっごく素敵!私は1992年の『贋作・桜の森の満開の下』が初・遊眠社体験でした。着物を着た女の子の可愛いイラストが、下北沢駅にいっぱい貼られていたのを思い出しました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ザ・ダイバー

 ≪あらすじ≫
 殺人容疑で捕まった女(大竹しのぶ)。自分が誰なのか定まらない状態になっており、拘留されたまま精神科医(野田秀樹)によるカウンセリングを受けている。彼女は人格がくるくる変わるのだ。どうやら『源氏物語』の登場人物になっているらしい。
 ≪ここまで≫

 銀色の壁など金属質な装置に、木製のイスが置かれたシャープな美術。日本の伝統芸能のように扇子などを色んなものに見立てていく演出です。でも形式ばることは全くなく、きわどいタイミングを狙った演技のライブ感と、何が起こるかわからないスリルにゾクゾク。
 音楽および音響は和物の生演奏で、映像はありません。舞台上の家具やかばん、本といった小物と、見立ての道具となる扇子や布を用いて、俳優の演技で芝居を形作っていきます。どんなシーンにもわくわくさせられました。でも見立ての演出のせいもあってか、没頭するようなことにはなりませんでした。頭の中は冷静なまま、心は熱くなりました。

 『源氏物語』と“女”の現実が混ざり合っていくのがとても面白いです。『源氏物語』の時代から変わらない人の恋心。でも現代は、どうしても抑えることのできない気持ちの高まりなどを、一瞥もせず切り捨ててしまうことが当たり前になっている気がします。1000年以上前と現在とが併存する瞬間に、微妙な温度差のようなものを感じました。
 大人のドライな恋愛ドラマもあり、女の正体を探っていくサスペンスの味わいもあり、笑いのシーンも肉厚。エンターテインメントとしても満足です。あーもーホンッとに贅沢。こういう演劇を同世代の友達と会社帰りに観に行きたい(←いっつも言ってる)。

 役者さんは4人とも素晴らしかったです。動作の組み合わせには、呼吸を合わせないと出来ないコンビネーションがいっぱい。プロの本気を堪能しました。
 大人の恋愛の話ですからラブシーンも体当たりで見せてくださって。大竹さん、北村さん、サイコーっす。

 当日パンフレット(500円)に野田秀樹さんと大江健三郎さんとの対談が載っています。目からウロコの詳細な作品解説でした。戯曲が掲載された「新潮9月号」もロビーで販売されています。

 ここからネタバレします。

 女は不倫相手の男の家に放火して、家にいた彼の子供2人を焼死させました。でも「4人殺した」と言います。それは男に頼まれて2度堕胎した自分の子供も数えていたからでした。女は最終的に「責任能力があった」と精神科医に診断され、絞首刑になります。人殺しを実行したのは彼女だけれど、彼女を追いこんだのは不倫相手とその妻なのに・・・という考えがよぎったり。

 海に潜るシーンは舞台が青く染まり、自分も海底に連れて行ってもらえました。心地よくて夢のよう。
 海の底で女が見つけた宝は子供。赤いひもをへその緒に見立て、女と一緒に海に潜った精神科医がそのひもを持って、彼女の子供になりました。精神科医は1人で海面に出て赤ん坊のように泣きます。殺された子供が生き返ったんですよね。女は死んだ後にその夢を見て、救われたのかもしれません。精神科医が1人たたずむ幕切れもかっこ良かった。

野田秀樹 東京芸術劇場 芸術監督就任記念プログラム
出演:大竹しのぶ 渡辺いっけい 北村有起哉 野田秀樹 演奏:田中傳左衛門(囃子) 増田桂一(笛)
脚本・演出/野田秀樹 美術/堀尾幸男 照明/小川幾雄 作調/田中傳左衛門 音響/高都幸男 企画・製作/NODA・MAP 制作協力/世田谷パブリックシアター 主催/東京芸術劇場(財団法人 東京都歴史文化財団) 東京都/財団法人 東京都歴史文化財団
【休演日】8/24(月)、8/31(月)、9/7(月)、9/8(火)、9/14(月)【発売日】2009/07/11 6,500円 全席指定 サイドシート3,000円(25歳以下の方は1,000円でご購入いただけます。劇場チケットサービス窓口で身分証をご提示ください。)※チケットに関するお問合せは、 東京芸術劇場チケットサービス 03-5985-1707
http://www.nodamap.com/productions/thediver/
http://www.geigeki.jp/saiji_054.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年08月28日 23:29 | TrackBack (0)