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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年09月10日

ゴジゲン『ハッピーエンドクラッシャー』09/09-15シアターブラッツ

 ゴジゲンは松居大悟さんが作・演出(出演も)される劇団です(⇒過去レビュー)。劇団といっても松居さん以外の俳優1人、専属制作1人の合計3人なので、公演ごとに出演者を集めるプロデュース形式の活動をされているんですね。
 松居さんは弱冠23歳にしてNHKのドラマ脚本を書いたり映像の監督をしたり、商業ベースのお仕事も始められています。

 痛い笑いでつらぬき通す、渋い青春ドラマでした。どちらかというと私はドタバタコメディよりもこちらの作風の方が好みですね。上演時間は約1時間50分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ハッピーエンドクラッシャー

 ≪あらすじ≫
 高校時代の仲間と半年ぶりに集まった。夏にみんなと会うのは毎年恒例だったんだけど、今年は1人だけ絶対に会えない奴がいる。
 ≪ここまで≫

 舞台は北九州市のとある民家の縁側。細部まで作りこまれた具象美術です。シアターブラッツを奥行いっぱいまでは使っていないようですが、間口の狭さが気にならない上手な空間作りをされていたように思います。
 高校卒業から半年経って再会する18~9歳の若者たち。たった半年とはいえ東京の大学に行っていたり浪人していたり、学生服を着てつるんでいた頃とは変わっています。

 幸せな人が妬ましくて、その人の足を引っ張ったり、みんなでふざけながら罠にはめたり。気心知れた親友同士のはずなのに、トラブルの本質に迫る質問を笑ってはぐらかしたり、自分の気持ちをごまかすために、むやみにはしゃいだり暴れたり。若者らしいパワーと人間のみっともなさが炸裂します。

 逃げたくても逃げられない。だったらむしろその問題と堂々とぶつかって玉砕し、今のもやもやした気持ちに整理をつけたい。でもそんな考えはただのエゴだともわかっている・・・。未熟で馬鹿だけど心優しい若者の葛藤を、直球で描いているように思い、好感を持ちました。

 終演後のトークの様子から想像するに、おそらく作家さんは実体験をもとに書かれたのでしょう。素直で嘘がなくて、それゆえに納得できるドラマが生まれているように思いました。思い入れが強すぎたり、自意識過剰になることはなく、わいわいとバカ騒ぎをして盛り上がるシーンでも、ちゃんと人間を冷静に見つめる視線が感じられました。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 成績優秀だった阿部君が、センター試験でのカンニングがばれて自殺してしまいます。阿部君にカンニングさせてくれと頼んだ5人の男の子たちは、ずっと消えない罪悪感にさいなまれてきました。ゲームにしか手がつかない浪人生になっていたり、大学生にはなったものの記憶障害をわずらっていたり。
 紗幕に字幕を映して学生時代の自殺場面を再現した、ストレート・プレイらしいクオリティの高さに安心。

 お笑いコンテストに出場するのが毎年の恒例行事だったので、縁側でお笑いの特訓をする元気な場面もあります。でもわざと笑えないようにして、「お笑い」自体の性質を浮き彫りにする演出にもなっていました。例えば面白くないネタでも無理やり大笑いするなど。

 人間、一生もやもやした気持ちで生きていけるわけじゃないし(病気になるし)、理路整然とした正しい道をすっきりした気持ちで生き続けられるわけもありません。自分の気持ちをなんとか納得させて、ままならない人生を這いつくばって進んでいくしかない。対立する人間同士は、お互いの気持ちの落とし所が必要です。若者たちがそれを見つけるまでの七転八倒が、最後まできちんと描かれていて立派だなと思いました(えらそうな言い方ですみません)。

 「セックスさせて。だって断れないんでしょ。」って、ひど過ぎて笑っちゃう(笑)。迫られた女の子がトンチンカンな返事ばかりするのも面白い。
 「去年に戻りてー!」と叫ぶのが良かった。ほんとに去年は幸せだったんだよね。 
 やっと傷ついた心を開いて、憤りをぶつけてくれた阿部君のお兄さん。女の子が暴れるお兄さんの頭にスイカをぶつけて、「落ち着け!」と叫ぶのも良かった。 

 細かいことですが、洗濯物を朝まで干しっぱなしでいいのかな。ちょっと気になりました。

第7回公演
出演:出演 大村学  奥村徹也 加賀田浩二(飛ぶ劇場)  田中美希恵 西岡知美(カミナリフラッシュバックス) 貫井りらん(湘南アクターズ) 東迎昴史郎 平岩久資 目次立樹 松居大悟(“阿部正”の写真のみ)
脚本・演出 / 松居大悟  演出補 / 久保大輔 演出助手 / 青木直也 山腰宜正 舞台監督 / 川除学(至福団) 舞台美術 / 袴田長武+鴉屋  照明 / 伊藤孝(ART CORE) 照明操作 / 佐野由希子 音響 / 森優太 音響操作 / 角田里枝 音楽 / GosenfuStudio 映像 / 橋爪知博 衣裳 / 本間圭一 友達 / 北川隆来 宣伝美術 / 今城加奈子 WEB / 飯塚美江 制作協力 / 上野紗代子 北川未来 黒崎勇貴 星賀はるか 横田真理 和田吉孝 制作 / 半田桃子 武藤香織 青木栄介 安部未知子 熊野由香里 企画製作 / ゴジゲン
【発売日】2009/07/25 前売=2500円 当日=2800円 学割=2000円 平日昼割引=2200円 未就学児童の入場はご遠慮いただいております。
http://www.5-jigen.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年09月10日 21:47 | TrackBack (0)