2009年08月07日
リトルモア地下『飴屋法水「3人いる!」』07/31-08/12リトルモア地下

3人いる!
『3人いる!』は東京デスロックの多田淳之介さんの戯曲です(⇒初演、再演)。演出は飴屋法水さん。
8/7(金)昼にやっと1回目を観にいけました。面白い!凄い!もう1回観たい!・・・と思ったら、全席完売でした(涙)。そりゃそーだわな。
12日間で12バージョン上演は嘘じゃなかった(昼夜は同じバージョンの2回公演)。毎日、出演者も脚本も演出も美術も違うそうです。毎日が初日で千秋楽。信じがたい・・・。上演時間は約1時間。
⇒「誰がために舞台は在る?」(小崎哲哉)★私が観た回の舞台写真あり!(2009/09/07加筆)
⇒CoRich舞台芸術!『3人いる!』
≪あらすじ≫
月が輝く夜。一人暮らしの若い女の子・綾(國武綾)の部屋。暇なので、駅の向こう側に住んでいる大学時代からの友達・友香に電話をして、家飲みに誘います。でも残念ながら断られて、仕方ないので1人でノートパソコンとにらめっこ。すると、見知らぬ若い女(佐野友香)が突然部屋に入ってきました。「あなた誰?私の部屋に勝手に入って何してるの?早く出て行って!」
≪ここまで≫
女の子らしいこぎれいな白い壁の部屋。机には可愛らしいアロマキャンドルがあり、化粧台にはマニキュアが並んでいます。下手が玄関、上手にはカーテンがかかった窓。月明かりが入ります。
デコ携帯を持った若いギャル2人の言い争いがリアル。怖さも可笑しさも、演劇的なマジックも豊富。もう1人が登場して、「3人いる!」「3人いるよね?」という会話に爆笑。ややこしい展開に、頭をぎゅるぎゅるフル回転させて、必死で追いつこうと焦ったりするスリルも快感。
「この出演者だったから、このストーリーでこの演出になった」ということが、はっきりとわかる作品でした。一体どうやって稽古した(している)んだっ!?こんな企画を立ち上げて実行されていることに感激します。演出の飴屋さんは、劇場入り口で深々と頭を下げて観客を迎えてくださっていました。どれだけの熱意と愛情がそそがれているのか、はかり知れません。
ここからネタバレします。
綾は貴輝という元カレに今も未練たらたら。彼は今、友香と付き合っているという、ちょっとばかしかわいそうで切ない設定でした。なぜか柴田貴輝さんは額から下あごにかけて血まみれで、シャツまでその血がしたたっています。あれは死者のイメージなのかな。メガネも片方のグラスが割れていました。
2人(?)が出て行った後、1人だけ残ったのは・・・最初に登場した綾。誰かに見てもらわないと自分が存在しているかどうかを確かめられないのは、この芝居における不可思議な現象だけではありません。誰かに「あなたはそこに居る」と言ってもらわないと、存在を認めてもらわないと、私たち人間は不安で、たぶん生きていけないと思います。
下手奥の壁に映写される大きな月明かりが素晴らしかった。失恋して、1人暮らしで、寂しさをかみしめていた女の子が、月の魔法にかかって夢を見た。『3人いる!』がそんな風にパッケージされたように感じました。
12日間、毎日、何かが違ってる。
【出演】日本在住のさまざまな人たち【私が観たのはチーム7:出演/國武綾(おだんご)・佐野友香(ヘアバンド)・柴田貴輝(血まみれのメガネ男子)】
【全出演者名】椿イ 1986生/瀬口タエコ 1976生/高内絵理 1986生/立川貴一 1986生/小川弥生 1991生/安田裕登 1988生/芳賀唯一 1987生/宮本聡 1979生/畑中研人 1988生/紅林大空 1991生/もちづきさやか 1980生/安ハンセム 1982生/グジェ・クルク 1982生/秋場賢人 1976生/マチナ・シモーネ 1978生/佐倉ゆか 1990生/香本正樹 1987生/國武綾 1986生/石川夕子 1975生
構成・演出:飴屋法水 作:多田淳之介 照明:岡野昌代 舞台美術制作:彦坂玲子 演出助手:伊集院もと子 演出助手補:谷合優/村上愛美 制作助手:渡辺治子 音響サポート:浜里堅太郎 舞台・小道具サポート:西沢理恵子 宣伝美術:宮川隆 WEB:五十嵐哲夫 プロデューサー:増井めぐみ 企画制作:リトルモア地下
【休演日】8月6日料金 2,800円 【発売日】2009/06/30
http://www.littlemore.co.jp/chika/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【つぶやき】前川知大さん(イキウメ)原作の漫画『リヴィングストン』第2回

リヴィングストン
先週に続き、発売日に買ってしまった・・・にわかに週刊モーニング読者になってます。
『リヴィングストン』第2話は、初回に続いて1話完結もの。面白かった~♪
◎週刊モーニング
『リヴィングストン~LIVINGSTONE』
原作:前川知大(劇団イキウメ)
漫画:片岡人生
片岡さんのブログによると5回分まで(つまり今回含めてあと4回)しか載らないそうです。だったら買っちゃうよ。
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Quaras『見知らぬ乗客』07/18-08/11東京グローブ座

「見知らぬ乗客」ポスター
ジャニーズ事務所のスターが出演する東京グローブ座の演劇。脚本・演出などのスタッフと舞台関係の出演者が豪華なので、よく伺います。
今回の主演は嵐の二宮和也さん。演出はロバート・アラン・アッカーマンさんです。『見知らぬ乗客』は1950年に発表されたパトリシア・ハイスミスさん(映画「太陽がいっぱい」の原作で有名)の処女長編小説。1995年にクレイグ・ワーナーさんによって戯曲化されて、2004年にはイギリスでラジオドラマ化されたそうです(パンフレットより)。
⇒CoRich舞台芸術!『見知らぬ乗客』
≪あらすじ≫
偶然に同じ電車に乗り合わせて、隣の席に座った2人の若い男。初対面同士の2人は酒の力を借りつつ、互いに誰にも言ったことのなかった本音をぶちまける。大金持ちの放蕩息子ブルーノ(二宮和也)は母を溺愛し、父を憎んでいた。仕事が順調に進みかけている建築士のガイ(内田滋)は、浮気性の妻と離婚したがっていた。ブルーノが提案した。「僕が君の奥さんを殺してあげる。その代わり、君は僕の親父を殺してよ。」
≪ここまで≫
白、黒、グレーのモノトーンにこだわった美術。衣裳も同じくモノトーンでそろえており、おしゃれで豪華。回り舞台で次々にめまぐるしくシーンが変わっていきます。シーン数が膨大で、場面転換は全てがスムーズとは言い難いですが、家具や小道具がどんどん入れ替わっていくのは見ごたえあり。
主要登場人物5人以外に大勢の役があるのですが、着替えて数役演じているアンサンブルは6人。たった6人しかいないなんて、ちょっとびっくり。
前半はサスペンス・タッチのストーリーを追っていく面白みはあったももの、空気のうねりなどには物足りなさもあり。でも後半に入ってからは、悲劇が加速するスピードに乗って、ぐっと盛り上がりました。
二宮和也さん演じるアル中の若者ブルーノと、内田滋さん演じる建築士ガイは、数奇な出会いののち、愛憎が深く混じり合う因縁の間柄となります。いわゆる犯罪ものでありながら、複雑な感情が入り組んだ恋愛物語になっていくのが面白かったです。
主演男優のお2人は難しい関係(感情)を力を尽くして演じられていたと思います。ただ、アメリカ人っぽく演じている(ように見える)ところは、少々無理を感じました。
ここからネタバレします。
ブルーノが邪魔な妻を絞殺してくれたおかげで、ガイはフロリダでの大きな建築の仕事を成功させ、晴れて新しい恋人アン(宮光真理子)と再婚します。しかし幸せはつかの間。ブルーノからの執拗な脅しといやがらせに遭い、とうとうブルーノの言うとおり彼の父親を銃で殺してしまいます。
ブルーノの父親が殺害され、まっさきにブルーノを疑ったのは筋肉質なジェラート警部(パクソヒ)。ブルーノの不用意な行動・発言から、ガイにつながる手掛かりをすぐに見つけ出します。
警察に追い詰められ、母親に見放され、とうとう帰る場所がなくなったブルーノは、ふらふら・よれよれ・ぐちゃぐちゃになって、泣きながら情けなく「ママぁ!」と叫びます。二宮さんはやっぱりただのアイドルじゃないですね。あまりの情けなさに魅せられました。
2人にしかわからない秘密と苦悩を共有したブルーノとガイの、憎しみと愛情の混ぜ合わさった関係は、明らかに矛盾した感情なのに(だからこそ?)、人間らしいし愛らしいとも思えました。
"Strangers on a train" by Patricia Highsmith
出演:二宮和也 内田滋 秋吉久美子 パクソヒ 宮光真理子 巌大介 岡田あがさ 岡田さやか 川辺邦弘 倉本朋幸 深貝大輔
原作:パトリシア・ハイスミス 脚本:クレイグ・ワーナー 演出:ロバート・アラン・アッカーマン 衣裳:ドナ・グラナータ 翻訳:広田敦郎 美術:今村力 美術補:斎藤浩樹 照明:沢田祐二 音響:高橋巌 映像:荒川ヒロキ ヘアメイク:謙田直樹 野村博史 舞台監督:小林清隆 舛田勝敏 通訳:山根ミッシェル 山岸彩 演出助手:三砂博 堀内立誉 アクション協力:清水順二 振付協力:岸田有子 音楽協力:宮﨑誠 協力:薛珠麗 衣裳部:坂巻絢子 懸樋抄織 ヘアメイク:赤坂街子 大道具製作:東宝舞台/延鳥泰彦 盆製作:美鈴工業/鎌倉正 小道具:高津装飾/中村エリト ラッキーワイド 電飾:イルミカ東京/小田桐秀一 特効:糸田正志 衣裳製作:柿木愛千(MORI'S inc) 前田千佳子(MORI'S inc) 制作:杉田靜生(Planning Office GS) 梅木直美(Planning Office GS) 宣伝:吉田絵里(る・ひまわり) 柴沼有希(る・ひまわり) 井上悦子(る・ひまわり) 票券:荻野こず恵(Quaras) デスク:和田佳子(Quaras)キャスティング・プロデューサー:大川泰(D:COMPLEX) アソシエイト・プロデューサー:川名康浩(Kawana Entertainment lnc.) プロデューサー:堂本奈緒美(東京グローブ座) 麻田幹犬(Quaras)外見習宏(Quaras) 企画・製作:Quaras 主催:東京グローブ座
【発売日】2009/06/21 S席:8,500円 A席:7,500円 B席:5,500円 (全席指定・税込)※営利目的の転売禁止 ※未就学児童の入場不可
http://www.tglobe.net/lineup/new_mishiranu.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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