2009年09月21日
パルコ『中国の不思議な役人』09/12-10/04パルコ劇場
『中国の不思議な役人』の初演は1977年。寺山修司さんがパルコ劇場(当時は西武劇場)に書き下ろした作品です。今回は演出に白井晃さんを迎え、全く新しい形になって32年ぶりに再びパルコ劇場に復活したんですね。
オリジナル音楽全20曲は三宅純さんの書き下ろし(こちらで試聴できます)。振付は小野寺修二さんです(出演もされています)。アングラが苦手な私が、全く問題なく幻想世界を楽しむことができました。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
舞台は上海。
この街を支配する中国の不思議な役人(平幹二朗)は、不死なる存在と噂されていた。
しかし中国の不思議な役人には唯一「死」を迎えられる方法があった。
それはまことの「愛」を知ること。
何人も愛さない、愛せない役人はすでに死を忘れて数百年が立つ。
少女花姚(かちょう:夏未エレナ)は兄・麦(田島優成)とはぐれたところを人攫いにさらわれて、娼婦館に売られる。
男を知らない花姚は西瓜男(岩松了)に娼婦訓を叩き込まれている。
そこで出会った中国の不思議な役人と花姚。役人は花姚を求めるが、少女の愛を験すために花姚を人形のように弄ぶ。だから花姚を救いにきた兄の麦が首を刎ねても死なない。しかし、次第に花姚が役人を無垢な心で愛しはじめる。
死ぬために愛を求め続けた中国の不思議な役人。しかし、愛を知った瞬間に生きることに目覚めるのだが、それが自分の死の瞬間なのであった・・・。
≪ここまで≫
エロティックでグロテスクな演出も無論ありますし、物語もしっかり理解できたとは言えないですが、過激で美しくて、声を上げて笑っていてもどこか悲しくなるようなイメージの連続を、見つめているだけでも満足でした。
木製(と思われる)複数の山車(だし)のような大道具を、どんどん移動させて場面転換します。袖幕はなく、劇場の機構がだいぶん見えている状態です。物があふれて混沌としたり、がらんと何もない空間に広がる時もあります。黒い空間に、照明はピンクに緑、赤に青など原色系で鮮やか。⇒舞台写真
音楽と踊り、そして歌が大きなウェイトを占めており、もちろんストーリーはあるのですが、場面ごとのイメージのひとつひとつをレビュー(revue:Wikipedia)のように味わっている自分がいました。
タイトルロールの平幹二朗さんは、京劇のような派手で大きな衣装も完ぺきに着こなしていらっしゃいました。絵になるしハマってる。「わーはっはっはっ」と笑うのが面白すぎ(笑)。75歳だなんて・・・尊敬します。
女将校役の秋山菜津子さんはスタイルももちろん抜群だし、演技も歌も踊りもかっこ良くて素敵すぎ。マントみたいな軍服もいいな~。
ヒロイン花姚役の夏未エレナさんは15歳とは思えないスタイルの良さ。長澤まさみさんのような清楚な美人とお見受けしました。ものすごく堂々としてますね。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
オープニングは等身大の花姚の人形が出てきました。人形を支える男優さんたちが、その場で擦ったマッチの炎で人形を照らします。演劇実験室万有引力のお芝居を思い出しました。人形の手足胴がバラバラになるのはアングラっぽい。きれいでした。
女将校が舞踏会(?)のシーンで、中国の役人の登場をやりなおさせるのに爆笑。大真面目に繰り返すのもまた可笑しいんですよね。「世界は修繕できる時計」って凄い。
男たちが仮面を被ったり誰かに被せたりしていく“引力の仮面”の踊りがとっても良かった。小野寺さんならではの振付ですよね。男優さんたちが踊っている時に、秋山菜津子さんが1人で踊っていたのもすごくかっこ良かった!息苦しそうな不思議な踊りだったなー。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演(下手から):毛利美咲(司会)/小野寺修二/三宅純/白井晃
白井「これは寺山さんがバルトーク作曲の『中国の不思議な役人』(Wikipedia)にインスパイアされて書いた戯曲。」
白井「麦が寺山さんだと思っていたが、肝硬変ではじめて入院された時期に書かれたと知り、寺山さんは中国の役人の方だと思った。」
この秋、PARCOで新たなテラヤマの幕が開く!
出演:平幹二朗/秋山菜津子/岩松了/夏未エレナ/田島優成/小野寺修二/春海四方/吉田メタル/内田淳子/町田マリー/エミ・エレオノーラ/初音映莉子/高山のえみ/佐藤ひでひろ/河内大和/田村一行(大駱駝鑑)/奥山ばらば(大駱駝鑑)/吉村華織(ソプラノ歌手)/岡田あがさ/宮原美文
ミュージシャン:宮本大路(sax)/スティーヴ・エトウ(perc)
脚本:寺山修司 演出:白井晃 音楽:三宅純 振付:小野寺修二 舞台美術:小竹信節 衣裳・ヘアメイク:太田雅公 照明:沢田祐二 音響:矢野二朗 演出助手:豊田めぐみ 舞台監督:藤崎遊 宣伝:る・ひまわり 協力:九條今日子、テラヤマ・ワールド、ポスターハリス・カンパニー 製作:山崎浩一 プロデューサー:毛利美咲 企画製作:株式会社パルコ
【発売日】2009/07/11 8,400円(全席指定・税込)
http://www.parco-play.com/web/page/information/fushigi/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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新国立劇場演劇研修所『朗読劇 少年口伝隊一九四五』09/18-20新国立劇場 小劇場
2008年2月の初演より、新国立劇場演劇研修所のレパートリーとなった『朗読劇 少年口伝隊一九四五』(過去レビュー⇒1、2)。2期生に代わって3期生がヒロシマの人々の心を伝えてくれました。“花江さん”が登場するまではやはり涙が流れっぱなし。
上演時間は約1時間。短いですが緊密かつ重厚です。A席2,000円/B席1,500円というお値段も嬉しい。来年(7月下旬に公演予定)は4期生にバトンタッチです。ご家族とぜひ。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより
昭和20年8月6日、一発の原子爆弾が広島の上空で炸裂した。一瞬にして広島は壊滅、そして多くの孤児が生まれた。かろうじて生き延びた英彦・正夫・勝利の三人の少年は、やはり運よく助かった花江の口利きで中國新聞社に口伝隊として雇われる。新聞社も原爆で何もかも失ったため、ニュースは口頭で伝える外なかったからだ。三人の少年は、人々にニュースを伝えながら、大人たちの身勝手な論理とこの世界の矛盾に気がついていく。やがて敗戦。しばらくすると正夫が原爆症を発症、ひょんなことから手榴弾を手にした勝利はある決意をする。そこへ戦後最大級の台風が広島を襲うことになる。
≪ここまで≫
井上ひさしさんの戯曲が素晴らしいのはもちろん、栗山民也さん演出も見事です。台本を持ってセリフを語るという点では“朗読劇”ですが、俳優の動きや照明、音響などのスタッフワークはストレートプレイと変わらぬ緻密さです。朗読とギターの生演奏(宮下祥子)と朗読とのコンビネーション、照明の色や切り替わるタイミング、おさえた色使いで舞台を染める映像など、何度も観ている演目なのにハっとさせられます。
2期生と比べると3期生は大人しい印象。静かに心を合わせて、全員で1つのものを生み出している感覚がありました。声もどちらかというと小さめですが、聞こえないということはなく、感情を抑えた語り口で正確に言葉を伝えてくれます。群読部分も息が合っていました。
中國新聞社の花江さんを演じた辻村優子さんは、第一声からはつらつと輝いていました。健康的な身体から晴れ晴れとした陽気が感じられます。
3人の少年たちもとても良かったです(下手から勝利:米川貴久/英彦:長元洋/正夫:宇髙海渡)。終盤に近づくに従って感情表現がより豊かに、激しくなり、3人の少年の憤り、悲しみ、悔しさが迫って来て胸が痛みました。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
原爆が落とされてすぐに枕崎台風(Wikipedia)がヒロシマの地を襲います。2000人以上が亡くなったそうです(セリフより)。“悪魔に魅入られ、神様に見捨てられた町が水たまりになった”なんて、悲しすぎる。
今回もっとも心に刺さったのは空のこと。空から恐ろしいものが降ってくる、それが戦争なんですね。狭い東京の空を見上げ、広い青森の空(写真↓三内丸山遺跡)を思い出し、戦時中を生きた人々の気持ちを想像しました。
出演:岸田茜、熊坂理恵、鈴木良苗、辻村優子(花江さん)、野村真理、吉田紗和子、渡邉樹里、宇髙海渡(正夫:原爆症で亡くなる少年)、金成均(哲学じーたん)、香原俊彦(手榴弾を持っていた日本兵)、竹田桂、長元洋(英彦:20代まで生存する少年)、米川貴久(勝利:手榴弾を握りしめたまま台風で亡くなってしまう少年)、若菜大輔
※今回は3月に修了した2期生に変わって3期生が出演し、気持ちも新たに取り組みます。 どうぞこの機会にご覧ください。
作:井上ひさし 演出:栗山民也 ギター:宮下祥子 音楽監督:後藤浩明 模型作製:尼川ゆら 照明:服部基 衣裳:中村洋一 音響:秦大介 映像製作:小林倫和 方言指導:大原穣子 ヘアメイク:林節子 演出補:田中麻衣子 舞台監督:田中伸幸 米倉幸雄 舞台・照明・音響操作:新国立劇場技術部シアターコミュニケーションシステムズレンズ(舞台:小林正人 照明:塩沢しのぶ 音響:黒野尚 映像:鈴木大介 調整:久村泰代 大道具:古矢晃) 宣伝画:徳永明美 宣伝美術:松吉太郎 撮影:落合高仁 制作:新国立劇場 研修所長:栗山民也
【発売日】2009/07/29 A席2,000円 B席1,500円 *料金は税込みです。*各種割引のご利用はできません。*Z席の販売はございません。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000261_play.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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