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2009年10月02日

ナイロン100℃『世田谷カフカ~フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする~』09/28-10/12本多劇場

 ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが脚本・演出を手掛ける劇団ナイロン100℃の第34回公演。カフカおよびカフカの小説を題材に、脚本がないところから稽古場で作り上げた作品だそうです(チラシ等より)。

 作り方からしてそうですが、劇団だから出来ること(劇団じゃなきゃできないんじゃないかと思われること)を見せていただけたように思います。劇団の価値はここにあるって信じてもいいんじゃないでしょうか。こちらで野田秀樹さんが劇団について語ってらっしゃいます。上演時間は約3時間5分(途中15分の休憩を含む)

 ⇒CoRich舞台芸術!『世田谷カフカ

 カフカの小説が舞台で上演されるのはもちろんですが、カフカ自身も出てくるし、劇団員も劇団員本人として登場します。つまり作品が入れ子構造になっているんですよね。凄いのは、観客ごと、劇場ごと、街ごと、入れ子になっていると感じられたこと。

 色んな演出があったな~・・・思い出せないぐらい色んな種類の。笑ったり怖くなったり、1つのシーンの中で伝わってくる感覚も七変化。でも常に冷静に眺める状態ではありました。夢を見られそうだなと思ったところで、スパっと裏切られるからかも(笑)。
 白い壁の部屋(ハコ)がくるくる回って転換していくのはいかにも演劇らしい仕掛けで、走馬灯のようでもあり、ハコの中身は誰にもわからない(いつでも中身は変化する)という意味のようでもあり。小さなハコが出てくるのも可愛いです。

 なぜ“世田谷”なのかしら。会場が東京都世田谷区にあるからかしら?真相はわからないですが、劇団も観客も、紛れもない世田谷に居ることでこの芝居が存在しているから、「今の世田谷でカフカをやる(観る)」っていう意味のタイトルなのかなと思いました。

 実は、上演時間が長いせいではなく、個人的に腰痛のピークが来てた日に拝見したため、後半は集中しづらくなったりも(涙)。年齢(トシ)っすね・・・。

 私は恥ずかしながら、カフカは小説「変身」しか読んだことがありません(とても面白かった)。短編アニメ「田舎医者」は観ました(絵が幻想的。怖いけど面白かった)。読んでなくても全く心配はありませんが、この舞台は小説を読んでいる方がずっと楽しめるようです(読んでいる方の感想より)。


 わ。こんな装丁なんだ↓

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 ここからネタバレします。

 冒頭から村岡希美さんが村岡さんご自身として登場し、ざっくばらん(な風)に観客に話しかけてこられました。正直、驚きました。どこまでが実話なのかはわかりませんが、実体験にもとづいた話を本人がしてくれてるという感覚は信じられるもので、その体験談から物語が派生していき、カフカの人生・小説とも重なっていくのが面白いです。

 別々の小説の主人公が3人一緒に現実世界に出てきて、ある劇場(?)に面接を受けに行くのですが、その面接場面はカフカの小説の中の出来事なのです(そうだと思うんですが)。ギュルンと虚構と現実が裏返って、再び迷宮に入り込んでいく感覚。測量師はやっぱりどこにも辿りつけないという結末も素敵。

 白い衣裳に映像が当たって、服を着たように見えるなんて。映像と演技を一体化させる技術の極地なんじゃないでしょうか。大事なのはその技術じゃないってこともわかります。
 客席通路に役者さんがずらりと並んで「雨ニモマケズ(まがい)」(⇒Wikipedia)を群読したのが面白かった。

ナイロン100℃34th SESSION~フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする~
出演:三宅弘城、村岡希美、植木夏十、長田奈麻、廣川三憲、新谷真弓、安澤千草、藤田秀世、皆戸麻衣、喜安浩平、吉増裕士、杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗/猪岐英人、水野顕子、菊地明香、白石遥、野部友視、田村健太郎、斉木茉奈、田仲祐希、伊与顕二、森田完、中村靖日、横町慶子
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 美術:BOKETA 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一〔モックサウンド〕 映像:上田大樹 大鹿奈穂 衣裳:畑久美子 ヘアメイク:武井優子 振付:横町慶子 ステージング:長田奈麻 演出助手:坂本聖子 相田剛志 舞台監督:宇佐美雅人(バックステージ) 演出部:山中由佳 鈴木輝 照明操作:瀬戸あずさ 大道具:櫻井敏郎(C-COM舞台装置) 唐崎修(smile stage) 映像助手・操作:芹田有希子 映像助手:横山翼 冨田中理 ドイツ語訳・指導:山下結穂 記録スチール:引地信彦 大道具製作:C-COM舞台装置 美術工房拓人 小道具:池上三喜(高津映画装飾) 運搬:マイド 宣伝美術・写真:坂村健次(C2design) コラージュ:マグマジャイアンツ 画:玉野大介 宣伝美術強力:unseal contemporary プロデューサー:高橋典子 制作:仲谷正資 北里美織子 太齋志保 佐々木悠 杉上紀子 広報宣伝:米田律子 製作:北牧裕幸 企画・製作:シリーウォーク キューブ
8月1日発売開始 6,800円(全席指定・税込)
http://www.sillywalk.com/nylon/info.html
http://www.cubeinc.co.jp/stage/info/setagaya.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:15 | TrackBack

avex live creative『赤と黒』10/01-11赤坂RED/THEATER

 稽古場レポートを書かせていただいた『赤と黒』初日に伺いました。予想していたよりも若々しい、カジュアルなドラマに仕上がっていて、楽しく拝見しました。

 レッドシアターは小さな劇場なので、舞台上の役者さんに手が届きそうな距離で鑑賞。んーやっぱり木村了さんはきれい~。こんな贅沢は今後味わえるかどうかわかりませんよね。上演時間は約2時間10分休憩なし。

 ⇒TOKYO HEADLINE web 木村了インタビュー
 ⇒おけぴ管理人の観劇レポ(10/1ゲネプロ)
 ⇒CoRich舞台芸術!『赤と黒

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 19世紀フランス。ナポレオン(上山竜司)の時代が過ぎ去り、貴族社会が戻ってきた頃の物語。
 貧しくとも野心に満ちた“ジュリアン・ソレル”(木村了)は、司祭として出世を目指していたが、
 美貌と才知を買われ、住み込みの家庭教師として町長レナール氏(坂東亀三郎)に雇われる。
 貴族への憎しみから貞淑なレナール夫人(上野なつひ)を誘惑するも、二人の関係は明るみに出て、ジュリアンは町を追われてしまう。
 更なる野望を胸にパリへ渡ったジュリアンは、再び貴族(池下重大)の庇護を得て、社交界の華と謳われるラ・モール侯爵令嬢マチルド(富田麻帆)の愛をも勝ち取るが……
 ≪ここまで≫

 白いキャットウォークが舞台を斜めに横切り、その周囲には所狭しと衣裳が陳列されています。ファッションショー仕立てになっているんですね。照明はカラフルなムービングライトに細い蛍光灯も多数。派手に盛り上げます。
 型にはまったままの演技が続くわけではなく、ライブ感やアドリブ感が生まれる余裕(遊び/隙間)も用意されていました。選曲や転換については疑問を感じる時もありましたが、好みの違いだと思います。

 恥ずかしながら私はスタンダール作「赤と黒」を読んでいませんので、原作と比較する視点は全く持たずに拝見。示唆に富んだ恋愛物語で、今に通じるメッセージもあり、自分の生活と照らし合わせて色々考えることができました。
 ジュリアンが崇拝するナポレオンを、彼の影の存在として登場させるアイデアが面白かったです。

 木村了さんが素敵でした。イケメンなのは前提として、やはり演技がとても自然。本当に思ったことが口から出てきているように見えます。だから今を生きている若者が悩み、行動し、挫折する様を信じられたんだと思います。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 ナポレオンに憧れるジュリアンと、王妃マルゴーに憧れるマチルダが惹かれ合うのが必然に感じられました。最後の最後になって、ジュリアンがレナール夫人の慈愛の心に気づくことにも納得。「ラテン語で聖書を暗唱できるまで勉強しても、神様って一体何なのかピンと来ない」という、ジュリアンの純粋な疑問に共感できたからだと思います。

 衣裳を何度もたくさん着替えてくださって、それだけで目が嬉しいところですが、生地が安っぽいのが気になりました。

出演:木村了 上野なつひ 富田麻帆 本間ひとし 池下重大 眞藤ヒロシ 佐藤晴彦 上山竜司(RUN&GUN) 坂東亀三郎
原作:スタンダール 脚色・演出:赤澤ムック 脚本協力:清末浩平 美術:吉野章弘 照明:奥田賢太(オフィスダミアン)音響:中村嘉宏 衣裳:木村猛志(衣匠也) ヘアメイク:臼井寛子 演出助手:城野健 舞台監督:村岡晋 宣伝写真:引地信彦 宣伝美術:冨田中理(SelfimageProdukts) 制作:久家彩 プロデューサー:竹岸実夏 提携:赤坂RED/THEATER 撮影協力:渋谷キリストンカフェ 主催:avex live creative/サンライズプロモーション東京 後援:フジテレビジョン 企画製作:エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
前売・当日¥6,000(全席指定)*未就学児のご入場はご遠慮頂いております
http://www.avexlive.jp/akatokuro/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:46 | TrackBack