2009年12月03日
DART'S『In The PLAYROOM』12/01-06ギャラリーLE DECO
DART'SはSmokersの広瀬格さんが脚本・演出を手掛け、feblaboの池田智哉さんがプロデュースするユニット。私は初見です。CoRich舞台芸術!のクチコミと知人の勧めがあり、急きょ予約して伺いました。
「脚本が面白い」という情報を実際に観て確かめて、満足。客席は舞台正面の高くなってる席が見やすい気がします。上演時間は約1時間45分。
⇒CoRich舞台芸術!『In The PLAYROOM』←CoRichでカンタン予約!
≪あらすじ≫
人気作家キリヤのもとに集まった彼のファンたち。人気シリーズの新作執筆を手伝ってほしいと言われ・・・。
≪ここまで≫
キリヤの小説と同様に次々と殺人が起こる密室劇で、最後の最後まで、何度も観客の想像を超える展開を用意してくれています。推理小説らしい謎解きの面白さがあるだけでなく、演劇ならではのフィクション性が高かったのが私にとってはとても魅力的でした。
計算された脚本ですがかなりの冒険をしているので、きっと穴を探せば見つかるのでしょう。けれど、私はそんなことは気になりませんでした。ル・デコの小さな空間が渋谷区全体に広がり、時間もキリヤの過去の作品が書かれた時代へと何度も飛びました。
ただ、役者さんの演技については残念なところが多く、勝手なことを言いますが、違った座組みでさらに脚本をブラッシュアップした再演を希望したいところ。國重直也さんと川田希さんについては「カッコい~♪」と思わせてくれる場面がありました。
ここからネタバレします。これからご覧になる方は絶対に読まないでくださいね!
キリヤの小説は“プレイヤー”という名の殺人鬼と警視庁の女刑事・水越貴理子(川田希)が対決する人気シリーズで、“プレイヤー”をつかまえる、つまり犯人の正体を暴くまでが大きな山場です。
机上で“鬼ごっこ”をしていると、参加者たちが現実世界で次々とプレイヤーに殺されていきます。目の前で役者さんはありありと生きているのに、物語の中では実際に死んでいるという、“ありえない”状況にわくわくしました。
実は作家(服部紘二と思いきや島田雅之)が多重人格障害だったため、彼の脳内でさまざまな人格が生み出され、殺されていたのです。“多重人格ネタ”というのは有名だし、私の好みの方向ではなかったですが、この設定には必要だったと思います。そしてそれだけで終わらなかったのがイイ!とことん面白がらせてくれるサービス精神を嬉しく思いました。
feblabo produce
【出演】編集者:島田雅之(DART'S/ダブルスチール)、元IT会社社長:池田智哉(DART'S/劇団ギリギリエリンギ)、元陸上選手:長谷川太郎(少年社中/森の太郎)、鈴木麻美(北京蝶々)、作家:服部紘二(ハイバネカナタ)、自称私立探偵:國重直也、小説の主人公:川田希(カニクラ)、無職:細井里佳、OL:中村貴子
脚本・演出:広瀬格(DART'S/Smokers) 音響・照明オペ:黒木唯(活劇工房)/一橋純平(活劇工房) 制作協力:伊藤静香(Karte) プロデューサー:池田智哉(feblabo)
【発売日】2009/11/14 前売・当日 2500円 初日・平日昼 2000円 1ドリンクつき!
http://blog.livedoor.jp/dart_s/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【情報】シンポジウム『チェーホフの「鍵」とは?』12/07シアターX
両国の劇場シアターΧが「第9回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2010」のプレ・シンポジウム『チェーホフの「鍵」とは?』を開催します。司会は演出家の山本健翔さん(⇒この朗読劇の演出がとても面白かったんですよね~)。
井上ひさしさん、黒柳徹子さんら、参加予定者の豪華さに驚き!!これで参加費無料だそうです。ただ“予定者”とありますので、どなたかを目当てに行かれる方は、劇場に問い合わせた方がいいかもしれませんね。私は残念ながら観劇予定があり断念(涙)。
日程:2009年12月7日(月)18:30
参加費:無料
会場:シアターΧ
第9回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2010 プレ・シンポジウム
参加予定者:折田克子(舞踊家) ケイタケイ(舞踊家) 谷口秀一(放送作家・劇作家・演出家) 西田敬一(NPO法人 国際サーカス村協会代表) 矢野通子(舞踊家) 八木昭子(NPO法人東京ノーヴイ・レパートリーシアター芸術部長) 若松美黄(舞踊家) レオニード・アニシモフ(演出家) 安達紀子(早稲田大学講師・ロシア演劇翻訳家) 加賀乙彦(作家) 田口ランディ(作家) 井上ひさし(劇作家) 岡崎弘司(NPO法人 東京ノーヴイ・レパートリーシアター理事長) ユーリ・グロムイコ (モスクワ文化教育アカデミー会長) 黒柳徹子(女優) 武田清(明治大学教授) 中本信幸(神奈川大学教授・演劇評論家) 牧原純(チェーホフ研究家・演劇評論家) 村田真一(上智大学教授) 上田美佐子(シアターΧ芸術監督/劇場プロデューサー) 大久保喬(シアターΧ総括)
司会:山本健翔(演出家)
http://www.theaterx.jp/09/091207-091207p.php
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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イキウメ『見えざるモノの生き残り』12/02-07紀伊國屋ホール
前川知大さんが作・演出される劇団イキウメの新作です。前川さんはなんと今年3作目の新作(⇒1、2)。漫画原作も手掛けられるなど、今もっとも注目される若手劇作家・演出家の1人です。
今回登場するのは座敷童子(ざしきわらし)。いい意味で予想を裏切られ、温かい気持ちに。初日はカーテンコールがダブルになりました。上演時間は約1時間50分。
東京公演の前売り券予約は終了していますが、空席はあるので当日券がたくさん出るとのこと。「フラっとお越しください!」と制作さんがおっしゃっていました。
⇒CoRich舞台芸術!『見えざるモノの生き残り』
⇒TICKETS@TOKYOで当日券予約(前日18時より開演3時間前まで)
※レビューに舞台写真あり!初日に画像データをいただけて嬉しいです。
≪あらすじ≫
都会のどこか。人知れず座敷童子たちが集合している。今日は七節と名付けられた若者(窪田道聡)の新人研修だ。ベテランら(板垣雄亮、有川マコト、森下創)は、それぞれに自分たちが棲んでいた家の話を始める。座敷童子がいる家には幸福が訪れるというが・・・。
≪ここまで≫
私はイキウメのお芝居の、キリっとしていて、それできて柔らかい透明感のようなものが独特だと思います。それを肌で味わうのが好きです。
キャッチコピーに“座敷童子の事例報告”とあるので、ちょっと怖い目のSFかしらと想像していたんですが、その期待はきれいに裏切られ、少人数の対話でみせる直球の人間ドラマに。笑いもほどよくあって難しく考えずに観られる、いわゆる「わかりやすさ」を備えたファンタジーでありながら、現代日本人(および座敷童子)がそれぞれに“幸福”を求めて、もがきながら生きる様を描いてます。
誰もが幸福になりたいはずですが、何を幸福と感じるかは人それぞれ。そんなにバラバラな私たちだけど、誰かの幸福に介入したい(あの人に幸福になってほしい)と本気で思った時、人と人とが本当の意味で出会い、つながるのかもしれません。それが幸福なのだろうと思いました。
【舞台写真】左から:森下創、板垣雄亮、窪田道聡、有川マコト(撮影:田中亜紀)
イキウメにとって2度目の紀伊國屋ホールですね(⇒1度目)。比較的すっきりした装置に出演者は8人と少なめですが、空間が余っているようには感じせんでした。前川さんの演出も役者さんも大きなサイズへと成長されているのだと思います。
対話が説明ゼリフの応酬のように感じる瞬間もチラホラありましたが、初日でまだ固かったせいかも。東京公演の後には大阪、福岡ツアーがあります。全国を旅する劇団へと成長してくれたらと願います。
ここからネタバレします。
死んだことを自覚できていないなど、“ちゃんと死ねなかった”死者が、座敷童子になるという設定。基本的に座敷童子が語り部となって経験談を紹介していく構成ですが、座敷童子がいなくなった後(梅沢夫婦のその後など)が描かれているのがとても面白いと思います。
はじめは太鼓打(タイコウチ:森下創)が滞在の“満期”を迎えることができた、梅沢夫妻(盛隆二、岩本幸子)のエピソードから。5才の子供を海の事故で喪った若い夫婦が、太鼓打のおかげもあってか、立ち直っていきます。
次は新人・七節が若くして死んだ理由が明かされます。両親に借金を押し付けられた若い女(伊勢佳世)と、その借金を取り立てる七節の上司(浜田信也)のエピソードには、大ベテランの座敷童子・日暮(ヒグラシ:有川マコト)が起こした事件も含まれていました。
太鼓打の話が始まった時はオムニバス形式かと思い、たぶん3話ぐらいはあるのだろうと予想したのですが、エピソードは2つで終わり。日暮が七節を一撃で殺してしまう最後のシーンが、いわば3話目だと思ってもいいかもしれません。“グリーンジャイアント”と“ハルク”の話はただのギャグではなく、日暮の怪力とつながり、最初と最後がくるりと丸くまとまりました。
無言劇でじっくり見せた七節と日暮との“接触”場面に、有川マコトさんの魅力が凝縮していたように思います。あのシーンは別になくても成立はしていたと思うんです。でも敢えて見せるという選択が、前川作品らしいと思いました。
≪東京、大阪、福岡≫
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、窪田道聡、板垣雄亮、有川マコト
脚本・演出:前川知大 美術:土岐研一 照明:松本大介(enjin-light) 音楽:安東克人 音響:鏑木知宏 衣裳:今村あずさ 演出助手:石内エイコ 舞台監督:谷澤拓已 制作:中島隆裕 吉田直美 演出部:宇野圭一 棚瀬巧 渡邉亜沙子 ヘアメイク:前原大祐 照明操作:鳥海咲 宮田正芳 小道具:高津装飾美術 映像制作:原口貴光 大道具製作:C-COM舞台装置 宣伝美術:末吉亮 宣伝写真:渡辺辺マコト 舞台写真:田中亜紀 助成:平成21年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業) 稽古場助成:財団法人セソン文化財団 主催:イキウメ/エッチビイ株式会社
【発売日】2009/10/17 料金:前売 3,800 円当日 4,000 円(全席指定・税込)
http://www.ikiume.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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