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しのぶの演劇レビュー
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2010年01月08日

オーストラ・マコンドー『三月の5日間』01/07-17赤坂RED/THEATER

 オーストラ・マコンドーはTPTなどによく出演されている倉本朋幸さんのカンパニー。旗揚げ公演です。倉本さんが岡田利規さんの岸田國士賞受賞作品『三月の5日間』(関連レビュー⇒)を演出されます。

 プレビューを拝見。戯曲をかなり変えてありました。これからご覧になる方はそういう心づもりがされた方がいいと思います。上演時間は約1時間45分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『三月の5日間

 ≪あらすじ≫
 六本木のクラブで出会い、そのまま渋谷のラブホテルへ行く男女。映画館の入口で、余ったチケットをきっかけに話すようになった男女。ひょんなきっかけから一緒にデモに参加することにした男2人。
 ≪ここまで≫

 戯曲『三月の5日間』の主な特徴というと、まずは長い長い独白です。そして観客に向かって話しているかと思ったら、舞台上の友達に話しはじめたり、話している内に役者さんが演じる人物が違う人物へとするりと変わっていたりすること。今回の上演では、そういうことがほぼありませんでした。部分的に原作のセリフが残っているところもありますが、おそらく脚本は稽古場でエチュード(即興)をして作られたのではないでしょうか。原作にはないエピソードがいっぱいで、枠組みだけが残っていると言ってもいいぐらいだと思います。

 役者さんの演技をじっくりと見せることを意図しているように思いました。無言の間(ま)をたっぷりとって、2人もしくは3人の会話に嘘のない密度の濃い瞬間があるのが面白かったですね。ただ、声が聞こえづらくてセリフが理解できないのはもったいないです。

 新しいエピソードいついては、私には必要性が感じられないものもあり。まあ私は『三月の5日間』のフリークと言ってもいいほどの大ファンなのでね。「その方向は違うでしょ!」「そこを削っちゃダメ!」なんて思うこともありました(苦笑)。演出の倉本さんとは、とらえ方が全然違うんだと思います。

 都市・渋谷をイメージしたのであろう、灰色を貴重としたシャープな空間で、動く照明と動画を組み合わせた幻想的な場面もありました。白いベッドにさす明かりがきれい。
 音響についてはトラブルがあったようで、演出とは思えない音(ノイズ)が時々聴こえたのは残念。初日以降は改善されることと思います。

 ここからネタバレします。

 2枚の大きな壁に囲まれた三角形の空間。真ん中に白いベッド。ミッフィー(岡田あがさ)が上手側の壁に手を置くと、手でさわった部分に小さい光がともり、動きます。壁の後ろから照明を当てているのかしら。やがて2枚の壁が重なっていた部分が割れて、壁が左右へとぐんぐん開いていき、四角い空間になります。この転換がダイナミックでかっこ良かったです。

 渋谷の景色や、おそらく渋谷にいた一般の若者のインタビュー映像が、舞台にも客席の壁にも映写されて、劇場全体が“渋谷”に。渋谷にすごくこだわった演出でしたね。私はそれほど“渋谷”であることが大事だとは思わないんだよな~。この戯曲の何が好きで、どこが重要なのかが、倉本さんと私とでは違うんだと思います。

 ラブホにいる2人(河合龍之介&三井彩加)は濃厚なラブシーンがエッチで良かったですが、私が大好きなセリフを全く言わなくて(笑)、がっかり。
 映画館で出会った男(兼多利明)とミッフィー(岡田あがさ)が映画館の中で近くに座って話をしたことになっていて驚き。勉強部屋のシーンでせつなさが伝わってこなくて残念。走りまわってるので難しいんでしょうね。
 デモに行った2人(安井順平&坂口辰平)が行かなかった1人(カトウシンスケ)と3人で戦争の恐怖について話すシーンで(原作にはありません)、「捕虜虐待ゲーム」のようなことをするのですが、長すぎました。虐待される男は一度は怒って叫ぶと思うんだけどなー(目隠し&手錠&全裸にされ叩かれるので)。その後に本当の恐怖がやってくるんじゃないかと思いました。

 顔が大きな白いごみ袋になっている(ごみ袋をかぶっている)男を、池下重大さんが演じてらっしゃいましたが、池下さんのような素晴らしい役者さんが、なぜ、セリフもない、顔も見せない役なのかしら。私の頭の中にもったいないオバケが百万匹出てました。

 ※プレビューの時点では当日パンフレットに「作:岡田利規 演出:倉本朋幸」と記されていました。でもこれほど大きく脚本を変えているならば、「脚色:~~」などと書くべきでしょうね。

出演:河合龍之介 岡田あがさ 三井彩加 坂口辰平(ハイバイ) 兼多利明 カトウシンスケ 池下重大 安井順平
[脚本]岡田利規 [演出]倉本朋幸 [美術]原田愛 [音楽]佐藤こうじ [照明]奥田賢太(colore) [音響]Sugar Sound [衣装]萩野緑 [映像]浦島啓(puredust) [映像制作]増渕芳弘 [舞台監督]小野瀬弥彦 [webデザイン]山中商店 [宣伝美術]原田愛 [宣伝イラスト]岡田あがさ [制作]野村沙月
【発売日】2009/11/07 前売り3,500円 当日3,800円
http://austra.tv/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年01月08日 00:15 | TrackBack (0)