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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年01月15日

冨士山アネット『EKKKYO-!』01/14-17東京芸術劇場小ホール1

 冨士山アネットがプロデュースする計6団体のオムニバス公演です(⇒前回レビュー)。東京芸術劇場の若手紹介企画“芸劇eyes”(過去レビュー⇒)の内の1本。何度眺めてもすごいラインナップだと思います。⇒記者発表

 観客が無防備に楽をしていられない、受身ではいられないタイプの異彩を放つ作品たち。そもそも『EKKKYO-!』は“演劇、ダンス、音楽などのジャンルを越えた舞台作品”を意味していますが、今回は“アーティストの作品を観客が観る”というパフォーマンス鑑賞の枠組みをも超えて(越境して)いました。上演時間は約2時間強。

 ロビーでは開場してから開演数分前まで、毎日日替りで出し物があるそうです。私が観た初日はモモンガ・コンプレックス+αがトークして歌っていました(途中の5分ぐらいだけ観ました)。

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 レビューをアップしました(2010/01/16)。

 数年前の色んなオムニバス公演を思い出しながらの鑑賞になりました。昔だと「完成度(空間の密度)の高さを競い合う」「観客を短い物語にいかに没頭させられるか」「とにかく笑いを取ったもの勝ち」「アイデア1発勝負」とか、なんにせよ、参加カンパニー同士が対決する要素があった気がするんですが、『EKKKYO-!』には全然なかったですね。お互いの世界を個別に見せきって、並列にならんでる感じ。

 ままごとと冨士山アネットが“普通”に見えるんだから凄い(笑)。

 ここからネタバレします。

■ライン京急「ナターシャ・キンスキー」
 作・演出・振付・出演・音楽:山縣太一(チェルフィッチュ)・大谷能生(音楽家/批評家) ゲスト:端田新菜(青年団)

 いつもはクラブに出演している団体が劇場に。DJ(大谷能生)が音楽だけでなくセリフもミックスさせるのが面白いです。音楽に乗せられて私の中でグルーブ感がググっと増したところで、俳優(山縣太一)のセリフにばっさり断ち切られました。おそらく全て意図的だと思いますが、私としては1つの作品としてまとまった(ように感じられる)ものを楽しみたかった。ふらっと登場して語ったり踊ったりする端田新菜さんの存在に助けられました。


■ままごと「あゆみ-EKKKYO-! Remix-」
 作・演出:柴幸男(ままごと/青年団演出部)
 出演:黒川深雪(InnocentSphere/toi) 斎藤淳子(中野成樹+フランケンズ) 中島佳子

 2008年の初演以来、さまざまな形で上演されている「あゆみ」(関連リンク⇒)がまた進化。上手から下手の直線だけでなく、舞台奥から手前への縦、上手前から下手奥への斜めの動線なども増えて、役者さんの負荷がさらに増していました(笑)。
 幼なじみの2人の少女、あゆみとミキの物語。何度観ても心動かされ、涙します。

 「本当にオケに入っちゃった」と言うのは、あゆみが棺桶に入ってしまったから。死んじゃう必要はあまり感じませんでした。故郷を飛び出して月まで行きたいと思っていたあゆみが田舎にとどまって、ずっと田舎にいると思っていたミキが東京で働いているというだけでも、十分に切ない。


■モモンガ・コンプレックス「モモンガ・コンプレックスのこころづくし。(今年の抱負です)」
 振付・演出:白神ももこ
 出演:北川結 翼嶋木綿 臼井梨恵 たにがわまいこ 矢嶋里美 白神ももこ ゲスト:神里雄大

 オープニング(コーヒー豆がりがり)と、ライン京急とままごとの間にも短編(フランス語的な謎の言語でテレビショッピング)を上演。本編は色んな舞台のカーテンコールのパロディー(宝塚、歌舞伎、コンテンポラリー・ダンス、バレエなど)。観客から拍手を引き出して、がんがんに笑わせてくれました。最後は全員によるダンス。きれいなドレスで若い女の子が躍るだけでも可愛い。観客との距離の取り方、呼吸の合わせ方がすごくうまいと思います。


■CASTAYA Project「±0'00"(0'00"No.2)」      
 作・演出:Enric Castaya Orchestra 出演:非公表

 賛否両論、の域も越えてるんじゃないでしょうか(笑)。これはまっさらの気持ちで体験するしかないと思います。
 「役者と観客がいれば、そこは劇場である」わけではないのだなと思ったことが大きな収穫。
 「THIS IS IT」を観てすぐだったので、歌のところではマイケル・ジャクソンのことばかり頭に浮かんでしまった。
 加筆できたらしますが、あまり書きたくない・・・。


■岡崎藝術座「アフターデイズ/HOLD YOUR HANDS」
 作・演出:神里雄大 映像:ワタナベカズキ
 出演:島田桃依 大重わたる 夏目慎也

 音楽ライブと演劇をミックス。劇中劇の構造で、オムニバス公演自体もパロディー化、していたような。
 ロックのライブと演劇が融合したタイプのパフォーマンスをする3人組。その名も「岡崎藝術座」。彼らが演じるのは宇宙船の搭乗員たちの泥沼の恋愛ざた。エアロスミスのライブ映像とスペースシャトル打ち上げ等の宇宙の映像が隣りに並ぶ不思議さ。劇団の次回公演の宣伝も組み込まれており、何をどう観て、感じ取っていいのかぐらぐらしたままの鑑賞になりました。私にはよくわからなかったですね。


■冨士山アネット「証明∴」
 作・演出・振付:長谷川寧
 振付・出演:大間康司 伊藤麻希 奥山隆 玉井勝敏 関野律子

 衣裳が白黒のモノトーンなのでシャープでおしゃれな印象。父、母、兄、姉、弟の5人家族(姉、兄の順番かも)。喪服を着て法事に出かける前の風景。闘う家族の格闘技的ダンス。ネクタイやジャケットなどを振り回したりひっぱったり、バリエーションが多くて面白いです。がっつりとダンス・パフォーマンスを見せてもらえて満足。最後に弟だけを舞台に残して、他の家族が上手にはける理由がわからなかったな~。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演(舞台下手より):長谷川寧 大谷能生 柴幸男 白神ももこ 神里雄大 野村政之(青年団/こまばアゴラ劇場)

 大谷さんが柴さんに質問をして、柴さんがサクっと答えるのが面白かったです。『あゆみ』はセリフのタイミングでさまざまなことが決まっているんですね。大谷さんが「右足から入って右足(だったかな)で出る」というルールに気づかれてるのもすごい。

東京、越境。
企画・構成/長谷川寧 舞台監督/白神久吉 舞台/谷内義弘・秋山佑子 照明/齊藤芳男・佐藤恵太 照明アドバイザー:奥田賢太(colore) 音響/小川義治・中根悠子 映像/浦島啓(PUREDUST) スチール:松本和幸 撮影:山本晃久 宣伝美術/京(kyo.designworks) 協力/東京芸術劇場技術スタッフ 提携/東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団) 助成/アサヒビール芸術文化財団 制作/岩間麻衣子・藤巻みのり+冨士山家 協力:東京芸術劇場技術スタッフ 提携:東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団)
【発売日】2009/11/14[チケット](日時指定・全席自由)一般前売 3000円 一般当日 3200円 学生 2500円(要学生証提示/前売・当日共)
http://fannette.net/next/ekkkyo_index3.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年01月15日 11:54 | TrackBack (0)