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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年02月13日

フォースド・エンタテインメント『視覚は死にゆく者がはじめに失うであろう感覚』02/10-12原宿Vacant

 小沢康夫さんのつぶやきの影響もあり、知人と一緒に鑑賞。1人の男性が1時間ずっと立ったまま話し続けるパフォーマンスでした。日本語字幕つき英語上演。

 フォースド・エンタテインメントはこちら↓の公演もあります。
 2月13日(土)13:00-19:00『Quizoola!』。なんと6時間上演!

 ⇒CoRich舞台芸術!『視覚は死にゆく者がはじめに失うであろう感覚

 ラフな衣裳で白人男性が語り続けます。具体的には全然思い出せないんですが、名言というか標語というか、面白くて聞き逃したくないと思える短いセンテンスが、大量に繰り出されていきました。
 とはいえ立って静かに語るだけなのは私には少々退屈で、たまに眠くなったりも。でも終盤に入ると、「1人の役者がセリフを話している」だけではない、違う見かたができるようになりました。
 カーテンコールが終わって他の観客が席を立ちはじめても、私はしばらくじっと座って、余韻を味わいました。立っていた彼が人生で、この場が世界だと感じられたから。
 
 ここからネタバレします。

 語られる内容は同意・共感できるものもあれば、疑問に思ったり反対意見を言いたくなるものもありました。おそらく観客1人ひとりがそれぞれに違った受け取り方をしていたのではないでしょうか。それはコミュニケーションそのものだと思いました。

 最後の方になると、役者さん(ジム・フレッチャーさん)は早口で休みなくセリフを言い続けます。そうなると観客は面白いと思ったり疑問を感じたりする余裕もありません。ただ主張をあびせられるがままになります。私は「あぁ、これは人が死ぬ前のようだ」と思いました。人間って実は自分の言いたいことを周囲にまき散らすばかりで、他人の意見なんてほとんど聞きませんよね(笑)。そして死ぬ直前になればなおさら。

 最後のセリフを言ってフレッチャーさんが舞台からテクテクと歩いて去った後、誰もいない舞台がガラーンと広がりました。それは1人の人間がその命を終わらせて、消えた後の世界でした。人が生まれ、多くの人と出会い、そして別れる(死ぬ)。客席に残された私は、目の前の空間を自分が死んだあとの世界だと受け取り、これからも(私がいなくても)ずっと、ずっと続いていく時間を見つめました。

Postmainstream Performing Arts Frestival 2010 
ポストメインストリーム・パフォーミング・アーツ・フェスティバル 2010
("Sight is the Sense that Dying People Tend to Lose First")
出演:ジム・フレッチャー(Jim Fletcher)
テキスト・演出:ティム・エッチェルス(Tim Etchells) アシスタントディレクター:パスケイル・ペトラリア(Pascale Petralia) ライティングデザイン:ナイジェル・エドワーズNigel Edwards) プロデュース:フォースド・エンタテインメントForced Entertainment) 舞台監督:尾崎聡 照明:大庭圭二(RYU) 翻訳・字幕:新井知行 フライヤー・デザイン:松本弦人 制作:天野未来 佐藤道元 プロデューサー:丸岡ひろみ 制作協力:日本パフォーマンス/アート研究所 企画・製作・主催:国際舞台芸術交流センター PPAFプロデューサー:丸岡ひろみ 小沢康夫
前売り3,500円 当日3,800円*ワンドリンク付。日本初演作品・日本語字幕つき
http://ppaf.parc-jc.org/j/2010/index.html#fe

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年02月13日 01:09 | TrackBack (0)