REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2010年04月22日

新国立劇場演劇『西埠頭 Quai Ouest(ケ・ウエスト)』04/22-25新国立劇場中劇場 特設舞台

20100422_nishifuto.jpg
「西埠頭」パンフレット

 作家ベルナール=マリ・コルテスの没後20周年を記念した、フランスと日本の共同企画です。“新国立劇場演劇研修所修了生のサポートステージ”として修了生を対象としたオーディションが実施され、選ばれた3名がメインキャストとして出演しています。

 演出・照明・音響を手掛けるモイーズ・トゥーレさんをはじめ、振付、映像などのスタッフの大半がフランス人。芸術監督の鵜山仁さんが上演版テクスト作成に参加されています。

 かなり難解でした。でも空間が美しかったです。『西埠頭』は一度拝見したことがありますが、その時もちゃんと理解できなかったんですよね~。これからご覧になる方は、開演前にパンフレットで役名と演じる役者さんのお顔を確認をしておくといいかも。セリフで説明されても役名と顔が一致しなかったので、私はお話に追いつけなくなってしまいました。上演時間は約2時間10分(休憩なし)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『西埠頭 Quai Ouest(ケ・ウエスト)
 レビューを加筆しました(2010/04/23)。

 ≪あらすじ≫ 当日配布のパンフレットより。(役者名)を追加。
 ここはニューヨークを思わせる港湾都市。文明生活からは打ち捨てられ、ネズミやゴキブリの大群に占拠された倉庫に住みつく移民の一家がいる。ロドルフ(小林勝也)と妻セシール(津田真澄)、その子供のシャルル(北川響)とクレール(滝香織)の家族だ。その埠頭の一角に、ある夜、場違いなブルジョワの男(世古陽丸)が女(日下由美)とともに車で乗りつけた。この男から何かを巻き上げようとする、埠頭の住人たちの策略がはじまる。
 ≪ここまで≫

 中劇場の奥舞台にステージがあり、主舞台に客席が仮設されています。装置は全然違いますが、 太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)の『堤防の上の鼓手』を思い出しました。
 物語の舞台が「倉庫」なので、劇場を装飾せずにそのまま使うのはぴったり。でも、何もなくて暗くて四角い、だだっ広い空間は、「倉庫」というよりは「特定できないどこか」もしくは「あの世」を思わせました。照明および映像が神秘的で、美への強いこだわりを感じました。
 役者さんは客席の方を向いてト書き(?)を言ったり、全力で走って空間を横切ったり。予想のつかない演出です。不思議すぎてポカンと呆気にとられることもアリ(笑)。

 振付がとても面白かったです。特にソロのダンスには引きつけられました。ファク役の古川龍太さんの手の動きにも集中できましたが、なんといってもクレール役の滝香織さんが、舞台面側の上下(かみしも)を行ったり来たりする場面が素晴らしかったです。振付のフランシス・ヴィエットさんはピナ・バウシュのカンパニーのダンサーだった方なんですね。

 ここからネタバレします。

 資本主義社会のどん詰まり。異文化衝突。家族のディスコミュニケーション。でも現代だけでなく昔から変わらない人間の姿にも見えてきます。

 黒人アバド(サミュエル・フォー)がブルジョワの男コッシュを銃殺(?)した後に、着物をはおった若い男女が数名出てきて、舞台を縦横にすべるように踊りはじめました。不思議だった~・・・なぜ着物なのかしら。

 最後にかもめ(に見えました)の映像。アバドがシャルルを撃った直後だったので、とっさに『かもめ』のトレープレフのことが浮かびました。でも関係ないかも。全員で踊っている時に流れた音楽は映画『プラトーン』のものだったと思います。なぜこの選曲なんだろう・・・。

新国立劇場演劇研修所修了生のためのサポートステージ
出演:世古陽丸 日下由美 北川響〈演劇研修所1期生〉 古川龍太〈演劇研修所1期生〉 滝香織〈演劇研修所2期生〉 サミュエル・フォー 津田真澄 小林勝也
証人俳優・出演:窪田壮史 髙島玲 宇井春雄 西原康彰 小泉真希 二木咲子 角野哲郎 三輪冬子
※モーリス・コッシュ役で出演を予定しておりました立川三貴氏が、健康上の理由により出演できなくなりました。代わって、世古陽丸氏が出演いたします。
作:ベルナール=マリ・コルテス 翻訳:佐伯隆幸 ドラマトゥルク:ジャック・プルネール 演出・照明・音響:モイーズ・トゥーレ 振付:フランシス・ヴィエット 振付助手:ジェシカ・エヌ 照明:レミー・ラモット 映像:フランソワ・ジェスタン 照明コーディネーター:黒柳浩之 音響コーディネーター:上田好生 映像:フランソワ・ジェスタン 映像コーディネーター:井口雄一郎 衣裳コーディネーター:竹原典子 舞台コーディネーター:米倉幸雄 舞台監督:矢野森一 上演版テクスト作成:モイーズ・トゥーレ/鵜山仁 通訳:加藤リツ子 石川裕美 柴田綾子 衣装:矢作多真美 衣装協力:東京衣装(中村洋一) 監修:鵜山仁 【主催】新国立劇場 劇団イナシュベ(Compagnie Les Inachevés-espace de travail Théâtral)【後援】東京日仏学院/フランス大使館/Tokyo, B.-M.Koltès研究会(学習院大学) CulturesFrance/Conseil régional Rhône-Alpes/Drac Rhônes-Alpes Bonlieu-Scène nationale d’Annecy et de la Haute-Savoie 【協力】François Koltès 学習院大学人文科学研究科身体表象文化学専攻
【発売日】2010/03/03 3,150円
http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000378_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2010年04月22日 23:28 | TrackBack (0)