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2010年05月24日

谷山浩子 Presents うさぎと猫の芝居小屋『第1話「不思議なアリス」/第2話「真夜中の太陽」』05/19-22全労済ホール/スペース・ゼロ

 シンガー・ソング・ライターの谷山浩子さんの楽曲をもとに、うさぎ庵の工藤千夏さんが作・演出される短編2本立て公演です。『不思議なアリス』(約50分)と『真夜中の太陽』(約45分)の間に休憩20分。

 『真夜中の太陽』は始まって数分で傑作だと確信しました。衣装と配役だけで演劇ならではの多重構造を示し、ほぼ何もない舞台に時間軸と空間軸が一瞬で広がったからです。

 これからもずっとずっと上演し続けていってもらいたい戯曲です。特に高校演劇にはぴったりだと思います。登場人物がほぼ全員女性なので、女子校演劇部に向いてるかも。

 ⇒『真夜中の太陽』昨年初演時の詳しい感想(ブログ電波塔の少年)
 ⇒CoRich舞台芸術!『「不思議なアリス」「真夜中の太陽」

 ここからネタバレします。

■第1話『不思議なアリス』
 出演:谷山浩子、畑中友仁(青年団)、うさぎと猫合唱団

 ディズニーアニメの『不思議の国のアリス』風の衣裳の可愛い女の子がいっぱい登場。谷山さんのライブ・パフォーマンス付きで、谷山さんご自身も登場人物(アリス)の一人として出演されていました。ファン向けですね。
 でも最後は、数学教師(畑中友仁)の悲しい一人言で、奥行きのある演劇空間を作り上げました。力技というか・・・。


■第2話『真夜中の太陽』 ※あらすじなどはこちらに詳しいです。
 出演:多田慶子、ジェイソン・ハンコック、山藤貴子(PM/飛ぶ教室)、江幡朋子・恩田愛・加藤充華・加藤道子・神岡磨奈・澤山佳小里・白川美波・中村まい・中村真沙海・小川ひかる

 セーラー服にもんぺの女学生たちの中に、たった一人白いワンピースの老婆。よく見ると、金髪のハンサムな白人男性もいます。最初の数分で、井上ひさし作『朗読劇 少年口伝隊一九四五』(2010年夏も上演決定!)と飴屋法水演出・平田オリザ作『転校生』が一緒に表れたんです。衝撃でした。最後まで観て、最近観た映画『パンズ・ラビリンス』を思い出しました。

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 15歳の時、学校の防空壕が爆撃されて、一人生き残ったケイコ(多田慶子)。彼女はもしかすると認知症かもしれない80歳の老人です。この劇の全てはケイコがうたたねの間に、死ぬ間際に見た夢(空想)だったかもしれない・・・。でも私の目の前でのびのびと走りまわる女学生と、彼女たちの清らかな合唱は幻ではありません。まぎれもない実体です。みずみずしい死者たちと出逢い、震えて、涙が流れ続けました。ほとんど嗚咽状態の45分間。

 楽曲「真夜中の太陽」(作詞・作曲:谷山浩子)は、女学生たちがマーヴィン先生(ジェイソン・ハンコック)から教えてもらった詩を日本語に訳し(戦時中は英語禁止だったので)、曲をつけて歌にしたという設定になっていました。なんて素敵な! 不正確ですが↓セリフはこんな感じでした。
 女学生1「シェリーの詩だったかしら。」
 女学生2「キーツよ」
 マーヴィン先生「いえ、詠み人知らずです。」

 死者との邂逅というと、お能もですよね。私たちは死者のおかげで生きている、そしていずれ死者になる。だからこの世界は死者と生者でできているんですよね。今はもちろんですが、過去も未来も大事に抱きしめたい。そのすべてがある舞台でした。

≪国境なき楽団協力企画≫ 交感ひろば@SPACE ZERO ~ミュージック&ドラマ ウィーク~
第一話「不思議なアリス」【出演】被告人(教師):畑中友仁(青年団) 白うさぎ:小川ひかる 裁判長:恩田愛 検事:加藤道子 弁護人:中村真沙海 陪審1:松本奈緒 陪審2:加藤充華 陪審3:江幡朋子 証人1:山藤貴子(PM飛ぶ教室) 証人2:中村まい 証人3:白川美波 証人4(歌手):谷山浩子 証人5:神岡磨奈
第二話「真夜中の太陽」【出演】ケイコ:多田慶子 ジェームス・マービン:ジェイソン・ハンコック タカコ先生:山藤貴子(PM飛ぶ教室) トモコ:江幡朋子 ヒカル:小川ひかる アイコ:恩田愛 アツコ:加藤充華 ミチコ:加藤道子 マナ:神岡磨奈 ハッチャン:澤山佳小里(テアトル・エコー) ミナミ:白川美波 マイコ:中村まい マサミ:中村真沙海 ナオコ:松本奈緒
原案・音楽:谷山浩子 脚本・演出:工藤千夏 音楽制作:石井AQ 舞台監督:空閑秀樹(スペース・ゼロ) 舞台監督助手:坪根孝(スペース・ゼロ) 舞台美術:束原繁(スペース・ゼロ) 音響:藤平美保子(T.S.E) 照明:古倉栄一(スペース・ラボ) 衣裳:渡辺まり ワードローブ:明神杏奈 宣伝美術:工藤規雄+橋本麻由実(Griff Inc)、宣伝美術オブジェ・写真:山下昇平 谷山浩子マネージャー:伊藤司律子(ヤマハミュージックアーティスト) 谷山浩子ヘアメイク:井筒道夫 制作:黒川明子(エピキュラス) 西原遼子(エピキュラス) 藤井敦子(スペース・ゼロ) 制作協力:島田祐一(東京音協) プロデューサー:吉田幸三(スペース・ゼロ) 岡田信一(エピキュラス) エグゼクティブプロデューサー:西山秀樹(スペース・ゼロ) 企画・製作:株式会社スベース・ゼロ 株式会社エピキュラス 主催:全労済ホール/スベース・ゼロ ニッボン放送
【発売日】2010/02/26 前売一般 ¥4,000(税込・全席指定)当日一般¥4,500(税込・全席指定)
http://www.spacezero.co.jp/kokuchi/koukan_hiroba/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年05月24日 00:50 | TrackBack (0)