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2010年06月13日

【レポート】芸団協2010「ラウンドテーブル『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』」【2】04/30-05/01芸能花伝舎1-1

 『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』【2】では、秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場の代表取締役で日本劇団協議会の専務理事、そして芸団協の理事でもある福島明夫さんのお話をまとめました。
 ⇒劇場法(仮称)RT【全体のまとめページ

 ■今、現実に、文化活動そのものがつぶされかかっている
 ■劇場に芸術文化の蓄積および専門の人材を集積する
 ■組織細分化による芸術団体の疲弊
 ■芸術活動の意義について語り、その蓄積を周囲の人に返していくこと

■今、現実に、文化活動そのものがつぶされかかっている

 私が芸団協の一役員としてかかわり、劇場法成立を望んでいるのは、第一に現状の厳しさから。公立文化施設(※公立文化施設とは何か⇒大和さんのお話を参照してください)が今、全体としてどうなっているのか。多くが70~80年代に建てられたため、改修時期を迎えている。施設側からの「照明設備が老朽化したので閉館します/自主事業はしませんし、貸し館もしません/集会場のみになり、常駐スタッフはいなくなりました」などのアナウンスを受けて(それに反対する)署名活動が起きたりしている状況だ。
 「劇場法ができた挙句に既存の劇団がつぶされるのではないか」という不安を述べる人がいるが、今、現実に、文化活動そのものがつぶされかかっている。

 指定管理者制度になって、専門家が劇場に常駐することを期待したのだが、そうはならなかった。指定管理者制度の職員はたいてい3年任期。民間企業が指定管理者になった場合、その施設にいる人全員が派遣社員だったりする。職が安定していないので乱暴になり、ぞんざいなことも起きている。技術の面でも危険な状態になっている。

 芸術鑑賞自体についても、政治家が必要だと主張しても、学校などの現場では行事からはずされる状況が生まれている。今のままでは老朽化に対処する根拠もない。改修時期を向かえ、本当にその施設が必要かどうかを議論されると、単純に切り捨てられる。
 そんなことが多数起こっている事情もあり、何らかの形で劇場を法律で規定してもらう必要があるのではないかと考えた。


■劇場に芸術文化の蓄積および専門の人材を集積する

 地域に求められる文化拠点、といっても建物(ハード)ではなく、芸術文化機関(ソフト)が必要だろう。地域の文化的な人材の蓄積の場所としての「劇場(機関)」というものが、どうしても必要ではないか。実際のところ、各地域の演劇鑑賞会やこども劇場、学校の先生方、地元の劇団・文化団体などには非常に大きな蓄積がある。その蓄積を劇場に集積できないか。

 法律的にある程度整備されて、博物館、美術館と同様に、劇場が何らかの形で認知されていけば、この現状が変わっていくのではないかという期待を込めて、私は芸団協のプロジェクトに参加している。


■組織細分化による芸術団体の疲弊

 (助成金の)赤字補てんは困る。収支差額について助成するという、自己負担金を前提とする考え方によって何が生まれたか。収入を増やすと、支援が減ることはあっても、増えることにはならない。つまり収入は少なければ少ないほどいいという仕組みになっている。「自分たちの内部の財産を使うよりは、外部にアウトソーシングして雇った方が助成対象経費が増える」等という考え方が、次第に生まれてきたのではなかろうか。

 現実的に、この20~30年で芸術組織・芸術団体がひどく疲弊してきている。組織が細分化してきている。劇団も昔は大所帯だった。小劇場系でも20~30人いる団体はあった。今は2~3人という集団が非常に多い。それだけの大人数をかかえきれないし、芸術組織の中で人が育てられる環境がない。この状況は変えていく必要がある。だから「芸術団体への支援を減らしてはならない」という声を上げ、運動をしていかなければならない。


■芸術活動の意義について語り、その蓄積を周囲の人に返していくこと

 劇場法に賛成か反対かという論議でスタートすることが多いが、芸術文化問題がこれほど俎上にのぼったことは今までなかったのではないか。文化芸術振興基本法の時には、あらゆる文芸・文化が含まれていた。でも劇場法となると実演芸術が主題。実演芸術が政治の場で議論されていることを、追い風ととらえていいんじゃないか。数十年前までは、演劇は票に結びつかないから政治家は全然興味を持たず、語らなかった。やっとここまで来たのだ。
 
 去年の事業仕分けの時、文部科学省宛てに、文化芸術の予算の大幅削減に反対する11万件のメールが届いた。国民の中にそれだけの関心があることが示された。それが11万という膨大な数字につながったことは確かだ。自分たちのやってきたこと(芸術活動)にどんな意味があるのかを語り、そして自分たちのやってきた蓄積を、周囲の人たちに返していく活動をしていくべき時期なのではないかと痛感した。
 これからも個別にでもご意見は頂きたい。色んな形でいろんな場所で、こういった討論が巻き起こっていけばいい。


芸団協ラウンドテーブル「劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!」
主催:社団法人日本芸能実演家団体協議会
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/manage/gekijo_rt100430html.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年06月13日 23:39 | TrackBack (0)