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2010年06月23日

【レポート】芸団協2010「ラウンドテーブル『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』」【7】04/30-05/01芸能花伝舎1-1

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劇場法(仮称)RT【7】

 『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』【7】は、ディスカッションで特に長く話題に上ったことをまとめました。

  ⇒劇場法(仮称)RT【全体のまとめページ

 ■劇場法(仮称)が施行されたら変わる/変わらない
 ■芸術監督に求められること/劇場とつながらないアーティストにも支援を
 ■責任者の評価・任期などについて
 ■理事会の性質も変わりつつある
 ■テクニカル・スタッフ(照明、音響などの技術者)の認定等について
 ■何より大事なのは安全
 ■技術者の技量は仕事の回数が多いほど維持できる

■劇場法(仮称)が施行されたら変わる/変わらない

 参加者「地域の劇場にどこかから専門家(演出家など)を呼んで、自主事業だけじゃなく育成企画も実施し、一般市民の参加を促した発表公演まで持っていくことは、今までにも既に色んな劇場でやっていること。公演参加者や公演を観た人は良かったと言うが、住民100%が賛成なんてことは絶対にない。劇場法(仮称)が施行されても、今やってることと変わらないんじゃないかと思う。」

 福島「たとえば劇場500館について、1館につき3人ずつの責任者を雇用したとする。そうなれば1500人の専門家が年間雇用を保障されて、文化の問題に専念して考えられる。そんな環境が生まれるだけでも、かなり素敵な構図ではないか。少々乱暴かもしれないが、私はそう思う。」


■芸術監督に求められること/劇場とつながらないアーティストにも支援を

 参加者「芸術監督(経営監督、技術監督)がどういう人だったら地域に望まれるのか。今の段階ではよくわからない。」

 米屋「責任者には(前提として)、地域および芸術の多様性を認めることができる人が、求められる。雇用して良かったと思われるような効果を、地域におよぼすこと。税金が給料になっただけだと思われてはだめですよね。」

 参加者「誰かがある劇場の芸術監督になれば、その劇場でやる演目やフランチャイズ関係になる団体は、その人の個人的な嗜好(好き嫌い)で選ばれることになるだろう。そういう状況は歓迎だ。それぞれの劇場が個性を出していけば全体が面白くなるはず。だが同時に、そういった劇場とつながれない芸術団体も出てくるだろう。そこが釈然としない。劇場が個性を出すこと以前に、アーティスト個人あるいは芸術集団が元気でなければいけない。だから劇場だけでなく、実演家や集団(劇団など)もちゃんとサポートしてもらいたい。」

 米屋「芸団協のビジョンでは、それほど芸術監督を前面に出してはいない。地域では多様な演目が求められているので、プロデューサー数人が色んなバランスを考えて、合議制でプログラムを考える。そして芸術監督がそれを承認するというスタイルをとっているところが多いのでは。芸術監督は万能ではないし、それほどカリスマ的なものではなく、すべてを決める者ではない。」

 米屋「芸団協は芸術団体がよりよい活動ができる支援制度を考えたい。先輩たちが蓄積してきたノウハウを受け取り、さらに発展させることができる芸術団体を育てていくことも大切。そういう面で考えると今の助成金制度はどうなのか。支援制度についても討論したいのだが、今回は劇場法(仮称)についてなので、また別の機会を設けたい。」


■責任者の評価・任期

 参加者「芸術監督などの責任者を選ぶ基準も大事だが、成果も大事。実績を評価する必要があるだろう。評価軸が難しい。3年任期にすればいいという意見もあるが、どうやって『良くなかった』と言える状況を作るのかも、同時に考えるべき。」

 参加者「ある地域でプロデューサーになった人が任期を終えると、違う地域のプロデューサーになる。そうやってプロデューサーが各地をぐるぐると移動するだけになるのでは?それだと閉じたものになるので、何らかの規定があった方がいいんじゃないか。」


■理事会の性質も変わりつつある

 参加者「地域の指定管理者の理事会が芸術監督を選ぶ。じゃあ理事はどういう人で、それを誰が選ぶのか。」

 福島「理事については『名誉職では困る』『専門職でなければならない』と主張している。」

 米屋「館長だけではなく理事も名誉職になっているのが現状(本来はそうあるべきではないのだが)。社会的な信用度や功績のある方々が名を連ねていて、実務にたずさわらない人がいっぱいいる。
 でも公益法人改革においては、理事の責任が明確に法律に書き込まれている。誰かに委任して理事会を欠席することもできない。組織の在り方自体が、責任を持つ人が動かす仕組みに変わっている。名誉職が頂点にあるという時代ではなくなり、理事が実質的な経営責任を負うという形に近づけようとしている。それが世の中の方向性で、今は過渡期だろう。」


■テクニカル・スタッフ(照明、音響などの技術者)の認定等について

 参加者「技術者については技能認定が必要になってくるのではないか。」

 米屋「照明、音響についてはすでに技能認定制度がある。芸団協をはじめ関係諸団体が協議会をつくって『劇場等演出空間の運用および安全に関するガイドライン』(⇒PDFあり)を提起している。」

 参加者(技術者派遣関係)「決まったことには従う。技術者が資格を持つことで仕事ができる場所が広がるなら、そうするのみ。」


■何より大事なのは安全

 参加者「劇場を使う人の安全を確保することが、技術者の能力の中でも重要。」
 参加者(音響スタッフ)「技術があるから芝居ができるのではない。芝居をするのに技術が必要なだけ。技術だけでは芝居はできない。」
 米屋「安全確保と質の高い創造を両立させるのが技術者の要。」

 参加者(音響スタッフ)「はっきり言えるのは、今の舞台はより危険になっているということ。(言うまでもないが)舞台のスタッフが大事にしなければならないのは、安全。演出家も役者もいい芝居がしたいから、安全を無視したがる。その方がいいものが出来るのは確か。でも本当は、それは“いいもの”ではない。ただ危険なだけ。
 資格や免許というやり方じゃなくて、舞台の安全技術の講習を受ける形にしてはどうか。部署(技能の種類)に関わらず、舞台に関わるスタッフは全員、安全に関しての数日間の講習を受けるようにするとか。」

 参加者(照明スタッフ)「私は民間の小劇場の管理をしている。照明の技術者なので、安全管理という意味では舞台監督ほどできるわけではない。だからそういった講習があればぜひ受けたい。」
 米屋「各地でそのような研修機会を持てるよう議論を進めたい。」


■技術者の技量は仕事の回数が多いほど維持できる

 参加者(音響スタッフ)「30年以上この仕事をしてきた。地方のスタッフさんとやることも多い。(その上でわかったことだが)仕事の機会が沢山ないと、技術は上がらない。年3回やる人より年10回やる人の方が、技量的なレベルを維持するのが楽。1年に1回だけだと、次に行った時には技量的には能力がリセットされてしまっている。
 日本の場合、特に技術については個人に依存することが多い。世界的に見て少ないパターンだ。他の国では“ある技能さえあれば誰でもできる”という風に一般化していく。だから日本の場合、たった1人のスタッフに、その舞台の主役レベルの技量が必要になってしまう。」


芸団協ラウンドテーブル「劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!」
主催:社団法人日本芸能実演家団体協議会
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/manage/gekijo_rt100430html.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年06月23日 20:55 | TrackBack (0)