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2010年06月23日

【レポート】芸団協2010「ラウンドテーブル『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』」【9】04/30-05/01芸能花伝舎1-1

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劇場法(仮称)RT【9】

 『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』【9】では、今後の課題や、望まれる方向性を示していると思われる発言をまとめました。大部分が2日目の最後の方で語られたことです。

  ⇒劇場法(仮称)RT【全体のまとめページ

 ■多様性と専門性/今後の検討事項
 ■上野の美術館では日本語、英語、中国語、韓国語表示がスタンダード
 ■中長期的視点が必要
 ■日本の芸術は「進化の系統樹」
 ■地域の人と向き合い、自分が変わることも覚悟して、そこに居ること
 ■変化は時代の要請

■多様性と専門性/今後の検討事項

 大和「日本の公立文化施設には複合館が多い。例えば池袋の東京芸術劇場にはコンサート用の大ホール、ミュージカル・演劇・ダンス用の中ホール、演劇・ダンス用の小ホールがある。でも野田芸術監督は演劇だけの芸術監督・・・? ドイツには三分野劇場というのがあるが、日本ではどういう専門家を配置するのか、複合施設をどう考えるのかの議論が必要。多様性と専門性が劇場法を考える上で重要になるだろう。」

 高萩「海外の劇場と共同制作をする際、劇場が3年~5年の長期計画を立てることができて、それなりの技術も持っていないと、国際的な仕事はできない。」


■上野の美術館では日本語、英語、中国語、韓国語表示がスタンダード

 米屋「“日本は同一性が高い”などと少し前までは言われていたが、実際のところ、日本国内には大和民族ではないルーツの方々がいっぱいいる。外国人も多い。色んなバックグラウンドの人がいるということを自覚しなければならない。
 今や東京・上野にある美術館などでは日本語、英語、中国語、韓国語表示、音声ガイドはスタンダード。デパートでもそう。劇場がそれを視野に入れているかどうかも、問われるようになるかもしれない。」

 高萩「他国の大都市でこの規模の(50人以上が集まる)会議をするなら、普通は2言語以上(の通訳・字幕など)は必要。日本語1カ国語だけで通じるのが不思議。世界の(都市の)中でも東京だけなんじゃないか。その意味でも東京は特殊。」


■中長期的視点が必要

 米屋「市場原理や経済効率と芸術文化が一線を画すのは、短期的に見ると絶対に経済的な面では負けてしまうから。でも先のことを見越せば、芸術文化が中長期的に(経済的な利益を含む)効果を出していくことは可能。それが非営利や公共のお金を得る理由になる。芸術家や劇場が中長期的ビジョンをいかに持てるかが、公益性を自覚するキーワード。」


■日本の芸術は『進化の系統樹』

 大和「雅楽、能楽からはじまった、日本の歴史的な文化芸術の伝統から考えると、日本のように、昔に誕生した芸能が今も併存している国は、世界でも稀(まれ)。例えば能楽がほろびて歌舞伎になり、歌舞伎が滅びて現代演劇になるのがヨーロッパ型。日本の芸術はまるで『進化の系統樹』のように残っている。だからヨーロッパ型とは違う形態を考えるべき。」

 参加者(楽器演奏家)「素晴らしいもの(芸術)を残していくという観点が最も大事。実演家の一番根ざすところだろうし、制作者の目指すところでもあると思う。それがホールなどの施設の役割になるのだろう。
 文化は波紋状に広がるという原則を解いた小泉文夫先生(民族音楽の大家)によると、日本は波紋のちょうど行き着く所にあって、色んな文化が蓄積されている。私たちは特殊な世界に、非常に大きな財産を持っている。例えば中国から伝わってきた雅楽は、もう中国には跡かたもなくなっている。当時の研究しようとしたら、日本に来るしかないんです。私たちは自信を持って、ここ(日本)から発信していくべき。この法律の基盤がそういったところにあるんだとすれば、実演家の一人として、もろ手を挙げて賛成したい。」


■地域の人と向き合い、自分が変わることも覚悟して、そこに居ること
 ※劇場法(仮称)が施行されると、アーティストや制作者が日本各地の劇場で働くことになります。それについてのお一人の発言です。

 参加者(東京の制作者)「もともと劇場職員だった経験もあり、劇場法(仮称)が出来たら劇場のプロデューサーになりたいと思っている。早く自分の全く知らない地域に行って、新しい観客になってくれる人たちと出会いながら、どうやったらいいのかと悪戦苦闘し続ける・・・ということをやってみたい。そんな気持ちがものすごく強い。

 責任者についての議論では、劇場が芸術監督という一人の人間の、1つの価値観に染まってしまうという前提で話されている気がする。でも、少なくとも地域に出ていくアーティストや制作者に求められるのは、その地域の人と向き合うことだ。自分の価値観自体も変える覚悟を持ったアーティストでなければ、地域の人と関係を作っていくことはできない。

 私はある地域の指定管理者の民間企業で働いていた。市の普通の人たちや一般企業の元気のなさにがっかりした。たとえて言うと、外も上も目指さないで、横にパスを回してるだけの状態。文化に携わる人でさえ、そう見えた。突き放した言い方だが、こんな見方ができる(地域を客観的に見つめられる)人材が、その場所に行くことの価値はある。そしてその人材が、自分が変わることも含めてそこに居ることを選べば、活発な文化活動はその地域に生まれてくるんじゃないかと思う。」


■変化は時代の要請

 参加者(東京の制作者)「私たちは演劇鑑賞会組織をよく知らない。先輩から教えてもらえなかったのもあり、演鑑がない中でどうやって地方公演をするのかと模索してきた世代だ。今、その演鑑が立ち行かなくなった。それは時代の要請だと思う。時代が変わっていく時に私たちも変わらなきゃいけないし、先輩方のお教えも拝聴したい。今日は非常に勉強になった。」


芸団協ラウンドテーブル「劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!」
主催:社団法人日本芸能実演家団体協議会
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/manage/gekijo_rt100430html.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年06月23日 21:09 | TrackBack (0)