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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年08月15日

青年団リンク・RoMT『ここからは山がみえる』08/12-23アトリエ春風舎

 青年団リンク・RoMT(ロムト)は青年団演出部の田野邦彦さんの演劇ユニットです。今回は同じく青年団所属の太田宏さんの1人芝居。英国戯曲の日本初上演です。上演時間2時間20分とチラシにありましたが、実際は3時間になったとのこと(途中休憩5分を含む)。ワンドリンク付きです。

 8月22日(日)12時の回は高校生リーディング版を上演するそうです。高校生が読むのは面白そうだな~。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ここからは山がみえる

 ≪作品紹介≫ 劇場サイトより。改行を変更。
 1980年代。
 イギリス北西部、ペナイン山脈の麓のちいさな町に生きるひとりの少年がいた。 彼の名前は、アダム。
 家族への深い愛情と反抗、仲間たちとの友情、暴力、ドラッグ、死と喪失、セックス、そして永遠に続くと思っていたあの夏の午後 ―
 痛々しく、瑞々しく、しなやかに、多感な10代を駆け抜けながら、少年がひとりの“大人”へと少しずつ成長していく過程を、イギリスの新進劇作家マシュー・ダンスターが繊細かつシャープな描写で 赤裸々に、そしてリアルに描いた壮大な一人芝居。日本初上演。
 ≪ここまで≫

 フロアより少し高い目にステージが設置された、パブのような場内。観客は丸いテーブルのある席につきます。ソフトドリンク(オレンジジュースかウーロン茶)をいただきながら気軽に鑑賞するというスタイル。とはいえ3時間ですのでハードです。

 役者さん(太田宏)は1人でしゃべりっぱなし。一人芝居なのだから当然ではありますが、勇気があるな~と思いますし、実際に観客の前で3時間やりきったことも立派だと思います。「やること自体が凄い」です。

 脚本は面白いと思いました。でも太田さんの姿からは10代の少年らしい無邪気さ、幼稚さが感じられず。特に目の表情が乏しいのが残念でした。ティーンネイジャーらしさを表だって出さないような演技を、意図的に選ばれたのかもしれませんね。登場人物の心情を俳優自ら解説しているというか、外側から眺める視点を持ち続けているように見えて、私には物足りなかったです。
 ※絶賛されている方もいらっしゃいますので、確かめたい方はどうぞ劇場へ♪

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 アダムは最初14歳ですが、高校を卒業して数ヶ月の頃までを描くので、最後は18歳かしら。
 イイナと思う女の子にコクられて有頂天になってすぐベッドインしたり、ゲイの友達を公衆の面前で侮辱して楽しんだり、妊娠させた彼女が中絶手術をした日に電話してきても、「別れたんだからほっといてくれよ!」と怒鳴って切ったり。アダムはさまざまな失敗を重ねても、全く学ばないバカ男子です。それをもっとバカそのもののようにやって欲しかった。そしてできれば滑稽に、可愛らしく。

 自分の暮らす街と身近な人々のことしか考えたことがなかったアダムですが、エジンバラ・フェスティバルでHIVポジティブのゲイであることをカムアウトする男性に出会ったり、小さな映画館でイラン映画を観たりしたことで、初めて海を越えた世界へと視野が広がります。「これまでは遠くにそびえていた山々が、自分の腕の中にあるように見えはじめる」という表現が素晴らしいです(セリフは正確ではないです)。

 でも、そうやってやっと自分と世界とがつながって、知的な好奇心や疑問が芽生えた時に、水道会社(おそらく地元の)への就職が決まりかけてしまいます。「会社の面接には必ず行きなさいよ」と言う母親に、迷いの表情を浮かべながらも「わかってるよ」と答えるアダム。彼は初めて本気で人生に悩み始めたようでした。「もっと知りたい、学びたい、大学に行ってみたい」と思ったのかもしれません。そこでじんわり暗転して終幕。

第3回公演
原題:You Can See The Hills
出演:太田宏
脚本:マシュー・ダンスター 翻訳:近藤強 演出:田野邦彦 照明:西本彩 音響:泉田雄太 写真:山本尚明 Webデザイン:馬場壮稚 チラシデザイン:桐山岳寛 制作:RoMT 芸術監督:平田オリザ 【主催】 (有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 【企画制作】 青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
【休演日】8月13日、17日 【発売日】2010/07/20 前売・当日共/いずれも1ドリンク付 一般=2,500円 / 学生・シニア(60歳以上)=1,500円 / 高校生以下=1,000円 プレビュー公演(8月12日 19時)前売・当日ともに 全席=1,500円 高校生 リーディング版(8月22日 12時) 前売・当日ともに 全席=500円
http://romt.org

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年08月15日 22:02 | TrackBack (0)