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しのぶの演劇レビュー
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2010年11月12日

エクス・マキナ『The Blue Dragon - ブルードラゴン』11/11-14東京芸術劇場 中ホール

 シルク・ド・ソレイユやメトロポリタン・オペラの演出も手がける、世界的に有名な演出家ロベール・ルパージュさんの4年ぶりの来日公演(過去レビュー⇒)。野田秀樹さんが芸術監督をつとめる東京芸術劇場による招聘です(⇒関連記事)。
 
 俳優の演技と映像、照明、音響、装置などの高度なスタッフワークを融合させ、現代の中国を舞台にした大人の恋愛ドラマを、しっとり、スタイリッシュに見せてくださいました。

 三人芝居ですが、カーテンコールでは舞台裏のスタッフが11人も出てこられたんです。大勢の技術者がカナダのケベックから来日されたんですね。贅沢です。上演時間はカーテンコールを含め約2時間弱。3カ国語上演・日本語字幕付き。

 【舞台写真 (c)田中亜紀】
bluedragon2.jpg

 ⇒公式サイトでダイジェスト映像が見られます。
 ⇒CoRich舞台芸術!『The Blue Dragon - ブルードラゴン

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 ヨーロッパで絶賛された上演時間9時間にも及ぶ超大作「ドラゴンズトリロジー」の登場人物ピエールが、今、新たな物語を紡ぎ出す。
 ピエールは、かつての工業地帯がアートセンターに変わり、中国のアートシーンの中心になっている上海でギャラリーを開いている。ギャラリーにはピエールの恋人である中国人のアーティスト、シャオ・リンも出品している。 ここで彼は、かつての恋人でモントリオールの広告会社幹部クレアーと再会。この再会をきっかけに、ピエール、クレアー、シャオ・リン3人にとって予想もしなかった変化がーー。
 過去と現在の狭間で揺れ動きながらも希望を失わないピエールの心の軌跡が、グローバリゼーションに移ろいゆく中国の風景と重ね合わせられ、現代人の愛と孤独を静かにあぶり出す。
 ≪ここまで≫
 ※役名について。あらすじではクレアーになってますが、字幕ではクレールでした。

 【舞台写真 (c)田中亜紀】
bluedragon1.jpg

 2階立ての装置がアパート、ギャラリー、バー、船上などに七変化。装置をロールカーテンが覆い、そこに映像が映されます。
 今回は大掛かりなイリュージョンが目玉というわけではないようです。高度な技術と原始的ともいえる演劇的手法とを、さりげなく、上品に駆使しているのがさすがだなと思います。シャープな仕掛けに見入いっていたら、アナログな演出がポコっと顔を出して。にやりとしちゃいますね。

 映像は客席側から映写してると思うのですが(舞台奥からも映写してるでしょうが)、前からだと俳優の体にも映像が映ってしまうはずなんですよね。壁に影はしっかり出てるのに、俳優の体には映像は映らないんです。不思議だ・・・。俳優の動きに映像を合わせるのは『アンデルセン・プロジェクト』でもありましたが、一体どうやって実現してるのか気になって仕方ないです(笑)。

 ラストは演劇ならではの方法で楽しく見せてくれました。私はちょっとジーンと来ちゃいましたね。人が容易に移動できるようになったので世界は狭くなったけれど、やはり距離は存在するし母国というものの根っこは深くて。それでも人は国境を越えて、人種の違いにかかわらず出会ってしまうし、交わってしまう。異文化との出会いが新しい芸術を生み、やっかいな問題も次々と持ち込んでくる。それでも人間が命をつないで生きのびていくことは変わらないんですよね。

 【舞台写真 (c)田中亜紀】
bluedragon4.jpg

 ここからネタバレします。

 列車や船のミニチュアと、自転車に乗る俳優が一緒に動いているのが可愛いです。
 ピエールが抱く漢字への憧憬。タトゥーの激痛と快感。

 シャオ・リンは北京の大物キュレーターのもとへ旅立ちますが、ピエールの子供を生んでシングルマザーに。アーティストは廃業して、名画のコピーを増産する仕事と子育てに追われる日々。クレールは中国人の幼児を養子に迎えたかったけれど叶わず、仕事と平行してアルコール中毒を克服するためのプログラムを受けています。ピエールは上海の土地を失い、ケベックに帰る決心をします。

 最後は3通りのラストシーンを見せてくれます。上海の空港で別れる3人。ベビーバギーには赤ん坊。誰が飛行機に乗り、誰が子供を育てるのか。子供を生んだ母親がその子供を育てるという選択肢がなかったのが、現代的だなと思いました。

 【舞台写真 (c)田中亜紀】
bluedragon3.jpg

※舞台写真は東京芸術劇場よりご提供いただきました。※3カ国語上演・日本語字幕付き
出演:マリー・ミショー Marie Michaud アンリ・シャッセ Henri Chasse タイ・ウェイ・フォー Tai Wei Foo
作:マリー・ミショー/ロベール・ルパージュ Marie Michaud/Robert Lepage 演出:ロベール・ルパージュ Robert Lepage 美術;ミシェル・ゴティエ 小道具:ジャンヌ・ラピエール 音響:ジャン=セバスチャン・コーテ 照明:ルイ=グザヴィエ・ガノン=レブラン フランソワ・サントゥバン ジェシカ・ポワリエ=チャン デビット・ルクレール 振付:タイ・ウェイ・フォー 製作:エクス・マキナ(Ex Machina)
【発売日】2010/07/17 S席 6,500円 A席 4,500円(全席指定・税込) ※65歳以上の方はS席半額、25歳以下の方はA席半額割引あり(枚数限定・前売のみ・劇場チケットサービス窓口のみにて取扱い。チケット受取の際に、身分証をご提示ください) ※高校生割引[席種問わず1,000円] ※障がいをお持ちの方:割引料金にてご観劇いただけます。詳しくは劇場チケットサービスまたは劇場HPまで。
http://www.geigeki.jp/saiji/013/index.html
http://www.geigeki.jp/bd/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年11月12日 12:08 | TrackBack (0)