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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2010年12月11日

Conclave『ラスコーリニコフとスヴィドリガイロフ~「罪と罰」より~』12/08-19ワーサルシアター

 ドストエフスキーの小説「罪と罰」を1時間半強で見せる舞台。企画・演出・出演は俳優の中嶋しゅうさん。新国立劇場演劇研修所の修了生が多数出演しているので観に行きました。

 シンプルな空間での俳優の演技対決。表情の奥の奥を覗き込んで集中できました。小さな劇場の客席に有名な俳優さんがいっぱい!中嶋さんの企画ですものね。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ラスコーリニコフとスヴィドリガイロフ~ドストエフスキー「罪と罰」より~』

 基本的に何もないブラックボックス。イスやテーブルになる黒くて四角い箱が数個と、ドアやパーテーションになる枠、木などを動かして場面転換します。衣裳は黒で統一。役によって模様と色の違うマフラー(ショール)がポイントです。特に派手な仕掛けがあるわけではなく、とにかく俳優の演技を丁寧に見せていくお芝居でした。

 2時間半以上はあるだろうと勝手に覚悟していたのですが、すっきりと短くて少々驚きました。以前にも「罪と罰」を2時間未満にした舞台を観たのですが、どこをカットして、どこを重点的に描くのかで全然違うものになりますね。
 タイトルの『ラスコーリニコフとスヴィドリガイロフ』は「罪と罰」に登場する男性の名前です。ラスコーリニコフ(斉藤直樹)は強盗殺人をしてしまう貧乏学生、スヴィドリガイロフ(前田一世)もまた重大な罪を犯してしまうお金持ち。2人を主軸に、特に内面(感情)の変化に焦点を当てていたと思います。

 1対1の会話をする時の、役者さんの目の力が強いです。その場で起こる感情に正直に演技をされていると思います。真剣勝負ですね。
 メインキャストは皆さん好演。中嶋しゅうさんと北川響さんの警察コンビが微笑ましかったです。テレビや映画でよく見るデコボコでほんわかな感じ。

 ただ、これは好みの問題だと思いますが、照明が全体的に暗くて表情が見えづらかったのは残念でした。ろうそくをたくさん使ってらしたので演出意図だと思います。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 貧乏学生のラスコーリニコフは高利貸しの老婆を殺して金を奪い、偶然それを目撃した若い娘リザベータも殺してしまいます。警察に追い込まれてハラハラするエピソードがごっそりカットされていました。斉藤直樹さんは大げさに深刻ぶらない主人公で、彼の行動(罪)を通して色んな事を考えられたのが良かったです。

 ラスコーリニコフの妹ドゥーニャ(根岸絵美)は家庭教師をしていた家の主人であるスヴィドリガイロフに見染められますが、スヴィドリガイロフの妻マルファ(根岸絵美)にそれがばれて、ある弁護士と婚約することになります。ドゥーニャとスヴィドリガイロフの駆け引きがぎらぎらしていて、エッチで良かったな~!スヴィドリガイロフがドゥーニャのことをひどく愛している、そのことがセクシー。前田一世さんは観る度にセクシー度が増していきます。

 娼婦ソフィー(髙島玲)の歌声がとてもきれい。ソフィーがラスコーリニコフを説得する場面で、「遠くにいる、神様が見ている」というセリフの“神様”という言葉に、打たれました。目には見えないけど確かに存在する大きな何かであること、そしてソフィーがそれを本当に信じていることが、しっかり伝わってきました。こういう言葉を聞くために私はお芝居を観ているんだと思います。

 最後にラスコーリニコフが警察に出頭したかどうかは、私には読みとれなかったな~。

 開演前の余興として和太鼓、トランペットの演奏、そしてダンスが披露されました。楽器を演奏したお2人は上演中も音楽を演奏されていたと思うのですが、それも見せて欲しかったですね~。生演奏であることが目に見えた方が贅沢気分になれたと思います。空間の都合かもしれません。

出演:斉藤直樹(ラスコーリニコフ)、 野口俊丞(ラズミーヒン) 、前田一世(スヴィドリガイロフ)、北川響(ザメートフ)、中嶋しゅう(ポルフィーリ)、根岸絵美(マルファ/ドゥーニャ)、大沼美和子(プリヘーリャ)、佐伯花恵(アリョーナ/ハナーエフ)、髙島玲(ソフィー)、木村菜穂子(リザベータ)、保可南(ナスターシャ/タモッツァ) 原田みのる(ミノルスキー)※ダンサー、金刺敬太(楽隊/ケイタスキー)、木坂麻美(楽隊/アサミャ)
「罪と罰」原作/フョードル・ドストエフスキー 企画・演出:中嶋しゅう 振付:原田みのる 音楽(生演奏):金刺敬太(和太鼓)、木坂麻美(トランペット)脚本:北川響 舞台監督:村田明(クロスオーバー)  照明:吉川ひろ子(CAT) 衣裳:木村菜穂子 衣裳協力:キャピタル 票券管理:堀内淳 制作:横内里穂 協力:新国立劇場演劇研修所 企画製作:Conclave(コンクラーベ) 制作協力:田中浩補 宣伝美術:冨田中理(Selfimage Produkts) 宣伝写真:引地信彦
【発売日】2010/10/30 全席指定 前売4000円/当日4200円(税込)
http://www.rideout-inc.com/tsumitobatsu.html
http://members.jcom.home.ne.jp/conclave/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年12月11日 11:14 | TrackBack (0)