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しのぶの演劇レビュー
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2010年07月30日

新国立劇場演劇研修所『朗読劇 少年口伝隊一九四五』07/30-31新国立劇場小劇場

 『少年口伝隊一九四五』は井上ひさしさんが新国立劇場演劇研修所のために書き下ろした、2008年初演の朗読劇です。研修生が最終学年(3年次)で上演します。今年出演するのは4期生(過去レビュー⇒)。上演時間は約1時間10分。

 広島の演劇人により今年初めて広島で上演されました。ドイツの劇場でもレパートリーとしての創作が決定し、9月に初日を迎えるそうです。

 ⇒CoRich舞台芸術!『朗読劇 少年口伝隊一九四五

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 昭和20年8月6日、一発の原子爆弾が広島の上空で炸裂した。一瞬にして広島は壊滅、そして多くの孤児が生まれた。かろうじて生き延びた英彦・正夫・勝利の三人の少年は、やはり運よく助かった花江の口利きで中國新聞社に口伝隊として雇われる。新聞社も原爆で何もかも失ったため、ニュースは口頭で伝える外なかったからだ。三人の少年は、人々にニュースを伝えながら、大人たちの身勝手な論理とこの世界の矛盾に気がついていく。やがて敗戦。しばらくすると正夫が原爆症を発症、ひょんなことから手榴弾を手にした勝利はある決意をする。そこへ戦後最大級の台風が広島を襲うことになる。
 ≪ここまで≫

 何度観ても、わかっていても、衝撃を受けます。原爆が落ちる直前、落ちた瞬間、落ちた直後、そして1日、2日、1週間・・・と具体的に描写されるヒロシマの惨状。

 表情も動きも朗読から演技の方に大きくシフトしていました。口伝隊になった3人の少年(安藤大悟、扇田森也、竹田雄大)をはじめ、哲学じーたん(趙栄昊)と新聞社の花江さん(斉藤麻理絵)もセリフを憶えて言う場面が多かったですね。手榴弾を持っていた日本兵役の白川哲司さんも熱演でした。

 私はどちらかというと朗読メインの方が好きですね。井上さんの言葉を明晰な語り口で聴かせて、感じさせて欲しい。でも毎年上演されていますから、少しは演出面での変化があった方がいいのかもしれません。新鮮さも必要ですよね。
 田島真弓さん、日沼さくらさんの声がスーっと気持ちよく届いて、意味もはっきりと伝わってきました。

≪初台、板橋≫
出演(演劇研修所第4期生):木原梨里子 斉藤麻理絵(新聞社の花江さん) 佐藤真希 仙崎貴子 田島真弓 土井真波 日沼さくら 安藤大悟(英彦:20代まで生存する少年) 今井聡 白川哲司(手榴弾を持っていた日本兵) 扇田森也(正夫:原爆症で亡くなる少年) 竹田雄大(勝利:手榴弾を握りしめたまま台風で亡くなってしまう少年) 趙栄昊(哲学じーたん) 原一登 ギター:宮下祥子
【作】井上ひさし【演出】栗山民也【演出補】田中麻衣子【音楽監督】後藤浩明【模型作製】尼川ゆら【照明】服部基【衣裳】中村洋一 【音響】秦大介【映像】小林倫和【方言指導】大原穣子【ヘアメイク】前田節子【履き物】神田屋(霞弘明)【舞台監督】米倉幸雄 【舞台監督助手】北澤小枝子(5期生) 片桐レイメイ(5期生) 藤本強(5期生)【稽古進行】井上沙耶香(5期生) 林田航平(5期生)【舞台・照明・音響操作】新国立劇場技術部 シアターコミュニケーションシステムズ レンズ【制作助手】粟津佐智 長川原秀美 梶原航(5期生)【制作】新国立劇場【研修所長】栗山民也
A席2,000円 B席1,500円
http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000384_play.html


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:19 | TrackBack

非戦を選ぶ演劇人の会ピースリーディング『Re:カクカクシカジカの話』7/20-21全労済ホール/スペース・ゼロ

 劇団劇作家の相馬杜宇(あいばもりたか)さんの新作を劇団チャリT企画の楢原拓さんが演出するという若手コンビへの興味もあり、非戦を選ぶ演劇人の会ピースリーディングを観に行きました。すっごく・・・面白かったです!

 毎年超豪華キャストですが入場料金は全額寄付されますので、出演者もスタッフも全員ボランティアなんですね。微々たる額ですが終演後にカンパさせていただきました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『Re:カクカクシカジカの話

 西山水木さんのアナウンスで開幕。正確ではありませんがこんな感じ↓でした。
 「大勢の演劇人が、仲のいい人も悪い人も、平和への祈りのもとに集まりました。」
 「悪い人も」のところで客席に大きな笑いが起こりましたが(笑)、人間はこうやって、気の合う人も合わない人も、共通する目的のために手を握り合うことができるんだと、見せていただけた気がしました。
 このイベントは世代の異なる演劇人が交流し、ノウハウを共有して受け継いでいく役割も果たしていると思います。

 ここからネタバレします。

■第一部:朗読劇「Re:カクカクシカジカの話」
(作:相馬杜宇 構成・演出:楢原拓 演出補助:丸尾聡)

 内容についてはこちらに詳しいです。細かく書いてくださってありがたいですね。
 核武装派・核廃絶派が上下(かみしも)に分かれてけんか腰で議論するのは、楢原さんらしい“茶番劇”のようでとても良かったです。ザンヨウコさん、西田夏奈子さんの配役はお見事!爆笑させていただきました。
 鈴木瑞穂さんがご本人役で登場し、きのこ雲を目撃した体験をお話(朗読)された時は衝撃と感動で震えました。

 “核の傘”には効果が期待できないという証言の数々。相馬さんは多くの資料を読んで構成されたようです。たとえば防衛目的で日本も核爆弾を持ち、攻撃してきた国に実際に核爆弾を投下したとしたら?自衛とはいえ日本は世界中から非難されて信用を失うことは避けられません。つまり核爆弾は所持しても使うことはできない。資産ではなく負の遺産であるとのこと。

 実在の科学者や弁護士が登場して自身の論文を紹介(朗読)していくスタイルに、坂手洋二さんの作品がパっと思い浮かびました。疑問・反論に次々と答えていく、論理的に説得力のある構成が素晴らしかったです。
 被爆者の証言をクライマックスに持ってきたことに感動しました。核武装するかどうかはただの議論であって、その前に原爆とは何だったのかを、データとしてではなく自分のこととして知る必要があるんですね。相馬さんの磨き上げられた主張を受け取り、井上ひさしさんのあとにつづく若者がここにいた!・・・と思いました。

≪休憩≫

■第二部:インタビュー 鎌仲ひとみ(ドキュメンタリー映像作家)
 聞き手/永井愛・渡辺えり

 鎌仲ひとみさんが凄くって、もう、圧倒されどおしでした。
 映画『六ヶ所村ラプソディー』は拝見しました。必見です。

六ヶ所村ラプソディー [DVD]
紀伊國屋書店 (2008-10-25)
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 『ヒバクシャ』も観なきゃ。DVDに収録されている短編「女性兵士の証言」(タイトルは不確かです)がその場でスクリーンに映写されました。装甲車に付けられた(塗られた?)劣化ウラン弾でヒバクした若い女性兵士が病状を語ります。恐ろしい。でも知らなきゃ。

ヒバクシャ ~世界の終わりに~ [DVD]
紀伊國屋書店 (2006-08-26)
売り上げランキング: 11295

 新作『ミツバチの羽音と地球の回転』で鎌仲さんは「初めて“解決方法”を提示した」とおっしゃっていました。7/25の座・高円寺での上映回には残念ながら行けなかったんですが、ぜひ観たいと思っています。


■第三部:追悼企画 リーディング「井上ひさし 平和への祈り」
 出演:梅沢昌代 神野三鈴 田根楽子 三田和代 渡辺えり すまけい 高橋長英 益岡徹
 構成台本:石原美か子、長田育恵 演出:渡辺えり 演奏:朴勝哲

 『井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法』を中心に。

非戦を選ぶ演劇人の会ピースリーディング vol.13
第一部出演:小山貴司 洪明花 山本悠生 青井陽治 大沢健 野々村のん 松岡洋子 山口馬木也 鴨川てんし 戸田恵子(21日) 板倉光隆 西田夏奈子 三田和代 高橋長英 鈴木瑞穂 渡辺えり ザンヨウコ 小杉美香 伊藤伸太朗 熊野善啓 佐藤滋 松本大卒 横澤有紀 長岡初奈 大谷亮介 深沢敦 成本千枝 舞山裕子 吉本菜穂子(20日) 田根楽子 重田千穂子 有森也実 枝元萌 志賀廣太郎 高畑こと美 小飯塚貴世江 小山萌子 友寄有司 占部房子 三浦孝太 藤井由紀 丸尾聡 中山マリ 円城寺あや 根岸季衣 酒向芳 西山水木
脚本:相馬杜宇(あいばもりたか) 構成・演出:楢原拓 総合プロデュース:渡辺えり 美術:加藤ちか 照明:伊藤孝(ART CORE design) 音響:佐藤春平 舞台監督:金安凌平 演出補:丸尾聡 宣伝デザイン:石原燃 制作:篠原久美子、松岡正勝 協力:ポスターハリス・カンパニー 主催:非戦を選ぶ演劇人の会 特別協賛:全労済ホール/スペース・ゼロ
【発売日】2010/06/19 入場料金(全席指定):一般1500円、中高生1000円、小学生以下500円
http://hisen-engeki.com/information.htm

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:45 | TrackBack